自己紹介とPolaris AIについて
まず、私の自己紹介です。
約9年前、将棋のプロ棋士がAIに負けた出来事をきっかけにAIに興味を持ち、以来10年ほどAIプロジェクトや研究に携わってきました。当時は松尾研のリサーチャーも務めていました。
AIは社会に価値をもたらす技術であることは間違いありませんが、社会実装には多くのハードルがあることを痛感しました。
精度を上げるだけでなく、課題選定、データ収集、モデルのデプロイ、アプリケーション化、インフラ構築、オペレーションへの落とし込みなど、多岐にわたる専門知識が必要だと感じ、起業に至りました。

簡単に会社紹介をさせていただきます。
Polaris AIは東京大学松尾研究室からスピンアウトした会社で、約40名で事業を行っています。
当社のビジョンは、AIの社会実装における課題(価値が出る技術であるにも関わらず、なかなか実装が難しい点)を解決することです。
課題の選定から技術選定まで、一貫して行っています。

AIの研究者、コンサルティング会社の出身者、SIerなど、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まり、AIの社会実装に取り組んでいます。
昨今、「松尾研発スタートアップ」という言葉を耳にする機会が増えたかと思いますが、松尾研が基礎研究を行う中で、事業・技術が認められた企業が社会実装を担っています。

当社の強みは、コンサルタントとエンジニアが密接に連携し、開発から本番運用まで一貫してサポートできる点です。
お客様の課題をヒアリングし、SaaSでは解決できないような課題に対して、AIを開発・納品し、解決しています。
最近では、AIで何をすべきか分からないお客様もいれば、すでにプロジェクトがあるお客様もいらっしゃいます。ワークショップを通じて「AIでこんなことができます」「競合他社ではこれくらいの成果が出ています」といった情報を提供し、お客様に「これは取り組むべきだ」と感じていただき、プロジェクトにつながるケースも増えています。
また、SaaSでは解決が難しいニッチな課題をいただき、プロジェクト化し、それをパッケージ化する取り組みも行っています。最近では、研究開発に関するご相談も増えており、ロボットの知能化(半年ほど前からロボット革命の時代が始まっています)、ロボットへのAI組み込み、ローカルでのLLM開発など、様々な研究開発を行っています。
本講座の目的とカリキュラム
今回の講座の目的についてお話しします。対象は、エンジニア経験がある方や、AI・LLMに未経験または独学で触れたことがある方です。
全4回で目指すゴールは以下の通りです。

- AIやLLMの全体像と歴史を理解し、その感覚を掴む。プロンプトを書けるようになる。
- AI駆動開発など、開発におけるAIの応用方法を理解する。(開発以外でも応用できるため、ここを特に伝えたいです)
- ベクトルDBを用いたRAGチャットボット(社内マニュアルや設計図からの検索応答)の作成と精度向上方法を理解する。
- 第1回(今回):「AIエンジニアのロードマップ」として、AIの全体像、歴史、生成AIの凄さ、LLMの学習方法、効果的な指示出し方法などを深く掘り下げて解説します。
- 第2回:AI駆動開発について詳しく解説します。
- 第3回・第4回:RAGチャットボットの作成と精度向上について、弊社の実例も踏まえながら解説します。
AIの社会実装における課題とAI駆動開発の可能性

AIの社会実装は「総合格闘技」のようなもので、多岐にわたる知識が必要です。モデル学習やモデルの使い方に注目が集まりがちですが、実際には、課題選定を間違えるとビジネスインパクトがなく使われない、問題設定の段階でSaaSで安価にできるものをAIで解こうとしてプロジェクトが終わる、改善の仕組みがなければモデルの精度が下がって使われなくなる、といった課題があります。これらの全体像を理解していないと、なかなか価値につなげることが難しい領域です。
今回は特に、モデル学習やデータ収集に焦点を当てつつ、プロジェクトの例も踏まえて全体像に触れていきます。
なぜAI駆動開発を第2回に入れているかというと、AIツールやエージェントを用いた開発は、生産性を格段に向上させるからです。私自身もエンジニア歴はそこそこ長いですが、ここ3年ほどでDevin、Cursor、ChatGPTなどのLLMが登場し、開発の生産性(特に小規模アプリケーションのレベル感では)が5倍以上になっていると感じています。これはモデル学習やデプロイのWeb開発に限らず、課題選定からデータ収集まであらゆる場面で活用できる技術です。非常に重要な技術として、第2回で時間を取って深く掘り下げていきます。
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