クラウド経由で使うChatGPTやGeminiといった大規模言語モデル(LLM)に加えて、最近注目されているのが「オンプレ型LLM」です。オンプレ型とは、自社サーバーやローカルPC上で動かす生成AIのこと。
クラウド利用と比べてどのような特徴があるのか、また実際の事例について紹介します。
クラウドとオンプレの違い
クラウド型LLM
- 仕組み:ユーザーが入力したプロンプトは外部のサーバーに送られ、処理結果が返ってくる。
- 特徴:最新かつ高性能なモデルを利用できる。使用量に応じた従量課金制。
- 注意点:入力データ自体は外部に送信されるため、機密情報の扱いには制約がある。
オンプレ型LLM
- 仕組み:モデルを自社内に設置し、入力から処理までを自前環境で完結。
- メリット:
- データが社外に出ないためセキュリティが高い
- 利用量が多い場合、ランニングコストを抑えやすい
- 自社ネットワーク内で完結するため応答速度が安定
- デメリット:
- 初期導入コスト(サーバーやGPU)が高い
- 利用できるモデルのサイズが比較的小規模で、処理できる範囲が限定的
実際の事例
1. 金融業でのレポート作成
- 課題:機密情報を外部に出せない。レポート作成に時間がかかる。
- 解決:オンプレでLLMを導入。100点の精度は求めず、「叩き台を自動生成してくれるだけで十分」という要件を満たす。
- ポイント:セキュリティ重視+中程度の精度でOKならオンプレが適する。
2. IT企業の問い合わせ対応
- 課題:自社サービスの問い合わせに使いたいが、データを社外に出せない。
- 解決:検索拡張(RAG)の仕組みを活用。ただし回答文の自動生成(G部分)は省略し、関連情報をリストで提示する方式に。
- ポイント:ハードウェア負荷を軽くしつつ、必要な情報を安全に検索可能にする。
3. 施設内でのチャットシステム
- 課題:施設ごとにネットワークが分かれており、外部クラウド利用不可。
- 解決:オンプレに特化した翻訳モデルや検索モデルを組み合わせ、顧客対応チャットを構築。
- ポイント:用途に合ったモデル選定が精度を大きく左右する。
オンプレLLMを成功させるポイント
- ユースケースを明確にする
- どんな入力を受け、どんな出力が得られれば成功なのかを最初に定義する。
- 期待値を整理することで、モデルの軽量化や精度の調整が可能になる。
- ハードウェア要件の把握
- GPU・メモリなどの環境に合わせてモデルを最適化(量子化など)する必要がある。
- 業務特化カスタマイズ
- 汎用モデルをそのまま使うより、特定業務向けに調整することで精度が向上する。
まとめ
オンプレ型LLMは「高精度の汎用モデルが必要な場面」には不向きですが、
- データを外に出せない
- 利用コストを抑えたい
- 処理スピードを安定させたい
といったケースでは非常に有効です。
生成AIを自社に導入する際は、クラウドとオンプレのメリット・デメリットを見極め、自分たちのユースケースに合う選択肢を検討することが重要です。