はじめに
2025年9月に OpenAI から最新の動画生成AI「Sora 2 」がリリースされ、話題になっています。現在は招待制になっており、既存のユーザーから招待コードを受け取らないと利用できませんが、従来の「Sora 1」と比較して大幅な性能の向上が確認されており、期待が高まっています。
一方で、著作権や肖像権に配慮が必要なキャラクターや人物を生成できてしまうなどの問題があり、問題点も指摘されています。
今回は、Sora2の機能や性能といった特徴について、Google の Veo 3 と比較しながら解説していきます。
Sora 2の特徴
動画生成能力の向上
高い物理シミュレーションとリアリズム – OpenAIのシステムカードによると、Sora 2は「より物理的に正確で、現実的で、従来より制御しやすい 」動画を生成できるとしています。
複雑なシーンも生成可能 – 「オリンピック体操選手のルーティン」、「浮力や剛性のダイナミクスを正確にモデル化したパドルボードのバク転」、「猫を頭に乗せたトリプルアクセル」など、従来モデルでは不可能だった複雑な動きを再現できるようになっています。
同期された音声生成 – Sora 2は映像だけでなく「同期した音声や効果音」も生成できるため、短編映画のワンシーンのような作品を単一のプロンプトから作成できます。セリフはプロンプトに直接日本語入力で、発言する人物とセリフの文章を入力するだけで挿入可能です。(ただし、現時点では生成可能な動画長は最大10秒~15秒であり、長尺の動画を一括では生成不可となっていますので、長尺の動画作りたい場合は複数の動画を生成して編集でうまく繋ぎ合わせる必要があります。)
SNS一体型の設計
Sora 2の特徴の1つは、動画投稿SNS「Sora」と密接に結びついたSNS一体型の生成AIとして設計されていることです。単純に動画を生成するだけではなく、その動画を投稿して共有することに焦点をあてています。
フィード機能 – 作成した動画はアプリ内で共有され、TikTokやInstagram Reelsに似たフィードで閲覧できます。
健康への配慮 – OpenAIは「doomscrolling (延々と動画を見続ける習慣)」などの懸念に対応するため、利用者のウェルビーイングをチェックする機能やコンテンツ制御を実装すると述べています。
Sora2独自の「カメオ」機能 – 自分の顔と声をAI動画に出演させる
Sora 2は独自の機能として「カメオ 」機能を備えています。これはユーザーが自分の顔や声を記録し、AIが生成する動画内にリアルなアバターとして登場させる機能です。
カメオ登録方法 – 初回はiPhoneアプリからのみ設定可能です。(Androidは不可)一度設定した後はWebブラウザ版でも管理可能になる。簡単な指示に従って、カメラ・マイクを用いてユーザーの顔と音声を登録します。(所要時間は3分程度)
公開範囲 – カメオには公開範囲を「自分のみ」「指定した相手」「相互フォロー」「誰でも使える」の4つから選択できる。他人に使われたくない場合は自分のみに設定しておきましょう。
動画にカメオを登場させるには – プロンプトに「@」を入力して、続けてカメオの名前を入力すると動画に登場させることができます。ただし、カメオを指定して作成した動画は、非公開にしている場合でもカメオの所有者からは閲覧できるようになっているので注意が必要です。
ビジネス利用の現状
OpenAIのブログやニュースでは商用利用に関する具体的なガイドラインがまだ示されていません。生成された動画にはウォーターマークが挿入され、有料プランでも削除できないと言われています。このため、商用利用を想定する場合はガイドラインが整備されるまで様子見するのが無難です。現在のSora 2はエンターテインメントやコミュニティ形成に主眼を置いた設計と言えます。
Veo 3の特徴
生成能力と画質
高精細な短編動画 – Gemini APIの公式ドキュメントによると、Veo 3は「8秒間の720pまたは1080p動画」を生成でき、高精度なリアリズムとネイティブな音声生成 を特徴とします。
音声・効果音・対話の追加 – Google DeepMindの紹介ページでは「Veo 3は効果音や環境音、さらには対話までもネイティブに生成する」ことができ、物理シミュレーション・リアリズム・プロンプト忠実度で最高レベルの品質を誇るとしています。
縦横比や解像度の選択 – Google AI Studio の案内では、Veo 3は従来の 16:9(横長)に加えて 9:16(縦長)の出力 に対応し、APIのレート制限や価格も最適化されていると説明しています。開発者ブログは、2025年9月のアップデートで9:16出力や1080p HD出力、価格の値下げを実施したと報じています
API利用向けに安定化 – Veo 3はGemini APIやGoogle Cloudに統合され、企業向けワークフローに組み込みやすいよう設計されている。Googleはこのモデルを「映像と音声が出会う、フィルムメーカーやストーリーテラーを支援するための最新モデル」と紹介しています。
ビジネスユースと制限
Veo 3はGoogleの商用プラットフォームとして提供されており、開発者や企業が大量の動画生成を行えるように設計されています。API経由で生成した動画にはウォーターマークが入らず、自由に商用利用できます。
ただし、ユーザーフォーラムでは「プロンプトは英語のみ」というエラーメッセージが出る事例が報告されており、長い非英語フレーズを含むと英語と認識されず生成できない問題があるようです。生成コンテンツのクオリティを高めるには英語で詳細にプロンプトを書く必要 があると考えられ、抽象的な日本語プロンプトに対する理解は限定的と言えます。
Sora 2とVeo 3の比較表
比較項目 OpenAI Sora 2 Google Veo 3 動画長 最大10秒(Proプランでは最大15秒) 8秒 音声生成 映像に合わせて対話や効果音を同期生成。 効果音・環境音・対話をネイティブに生成。 物理シミュレーション ブレやテレポートが少なく、より現実的な動きを再現。 ただし、若干の破綻は発生する。 リアリズムと物理表現で高評価とされる。 破綻を減らすにはプロンプトの作りこみが必要。 独自機能 ユーザー本人の顔と音声を登録してカメオとして動画に登場させることが可能。 アバター機能は提供されていない。 利用形態 SNS一体型の動画投稿サービスのような設計。ユーザー同士の共有を重視。商用利用は未定で、ウォーターマークは外せない。 Gemini APIやGoogle Cloudで利用する開発者向け。ウォーターマークを外せるため、商用利用もしやすい。 プロンプト言語 多言語に関する公式情報はないが、OpenAIはプロンプト忠実度の向上を強調。日本語の抽象的なプロンプトでも意図を汲み取ってくれる傾向。 サポートコミュニティでは英語以外の言語では長いフレーズになるほどエラーが出る傾向があり、英語で詳細なプロンプトが必要とされる。 価格・アクセス 現在は招待制で無料枠あり。正式な価格やAPI提供は未定。 Google AI Pro(月額2,900円) Google AI Ultra(月額36,400円)
まとめ:どちらを選ぶべき?
Sora 2の用途
作成した動画をSNSで 動画を共有して楽しむ為に使う – カメオ機能により一貫性の高い人物描写が可能なため、自分自身や身近な人、有名人などを出演させて面白い動画を作成し、共有する楽しみ方ができます。
頭の中のイメージを映像化するツール として使う – Sora 2は比較的日本語や抽象的なプロンプトでも意図を汲み取って動画に反映する性能が高いです。従来の動画制作には専門的な知識や技術を習得し、労力とコストをかける必要がありました。しかし、Sora2であればプロンプトを入力するだけで手軽に映像化できます。
Veo 3の用途
ビジネス・クリエイティブ用途 – API経由で生成した動画にはウォーターマークが付かないため、ビジネスやクリエイティブに活用がしやすいです。
より詳細な動画の作りこみ – Sora2と比較すると、抽象的なプロンプトに対する出力は見劣りすると言われていますが、プロンプトを具体的に、詳細に作りこむことで細部まで意図を反映しやすいとも言えます。
まとめ
同じ動画生成AIでも、Sora2はエンターテイメント性を重視したSNS一体型の設計になっており、Veo3のような汎用的な動画生成AIとは異なる方向性を打ち出しています。
驚異的なスピードで進化している分野ではありますが、生成できる動画の長さは10秒程度と短く、破綻も頻繁に発生するため、本格的な動画制作に活用するには課題が多いのが現状です。 一方で、モデルの性能や機能が強化され、生成されるコンテンツのクオリティが高まるにつれて、著作権やプライバシーへの配慮の問題や、コンテンツの安全性や健全性に対する懸念など様々な課題が浮かび上がってきています。
AIサービスで生成したコンテンツの扱いについては、生成AI・コンテンツ双方のガイドラインをよく確認した上で、特にSNSへの投稿やアップロードは慎重に行った方がよいでしょう。
参考
OpenAI Sora2https://openai.com/index/sora-2
Gemini API の Veo 3 で動画を生成するhttps://ai.google.dev/gemini-api/docs/video?example=dialogue&hl=ja