これまで、ChatGPTのような生成AIチャットは、ユーザーがプロンプトを入力して初めて動く“受動的なAI”だった。
夜の間にAIが自らリサーチを行い、翌朝、あなたに合わせた情報をカード形式で届けてくる――そんな「AIから話しかけてくる」体験が始まっている。
それがOpenAIが発表した「ChatGPT Pulse」だ。
基本的な仕組みはシンプルだ。夜間、ChatGPTがメモリ(過去の会話の履歴やユーザーが「おぼえておいて」と記憶させた事柄)をもとにリサーチを行い、翌朝、「Pulseカード」と呼ばれるビジュアル形式のニュースや学習トピックを提示する。
話題は技術トレンドから生活改善Tipsまで幅広く、カードをタップすれば深掘りや保存も可能。
気になるテーマを「Curate」で指定したり、👍/👎のフィードバックで内容を調整することもできる。
つまりこれは、「AIを使って何をするべきかをAI自身が先に考えておく」仕組みだ。
検索エンジンでもニュースアプリでもない、「AIがあなたの代わりに“問い”を準備する」体験は、まさに受動から能動への転換を象徴している。
情報があふれる時代、私たちは“探す”こと自体に疲れている。
Pulseのような能動的なAIは、そうした「検索疲れ」や「情報選別コスト」を減らし、“次に必要な一歩”を提案する存在になりつつある。
すでにPerplexity AIなどでも似た仕組みが登場しており、「AIが先に動く」という流れは確実に広がっている。
ただし、Pulseは「勝手に動くAI」ではない。
学習データへのアクセスやカレンダー・メールの参照はユーザーの明示的な同意が必要であり、既定ではすべてオフ。
また、提示される情報は当日限りで消える設計になっており、プライバシーと能動性のバランスを意識した慎重な実装だ。
現在はProプラン限定だが、多くの新機能がそうだったように、段階的にPlusプランユーザーや一般展開されると考えられる。
将来的にPlusプランや企業向けChatGPT Enterpriseにも導入されれば、AIが“毎朝のブリーフィング”を行う時代が現実になるだろう。
この「AIが先に動く」という設計思想は、ユーザー体験そのものの転換点だ。
これまでAIは、私たちの質問に応える“ツール”だった。
しかしPulseでは、AIが自ら「あなたに必要そうな情報」を考え、提示してくる。
もはや“回答者”ではなく、“同僚”や“参謀”としてAIが振る舞い始めている。
能動的AIを上手に使うには、受け身で眺めるのではなく、適切なフィードバックを返して関係性を構築することが重要だ。
Pulseが提示するカードに対して「これは役に立つ」「これは違う」とリアクションすることで、AIは次第に自分に合った出力を覚えていく。
また、「Curate」機能で「明日はの最新動向を調べて」などと指示すれば、翌朝にはそのテーマを中心にまとめてくれる。
Pulseはコミュニケーションを重ねる度に、自分専用のコンシェルジュとして育ってくれるだろう。
ChatGPT Pulseは、単なる新機能ではなく、AIとの関係性の変化そのものを示すシグナルと言えるだろう。
これまで「質問→回答」だった関係は、「提案→対話」へと進化していく。
この変化をどう受け止め、どう使いこなすか、今から考えておいた方がよいだろう。
参考
ChatGPT Pulse が登場