2018.10.10 Wed |

企業のパフォーマンスを最大化するためのGoogle社の人事研究

この記事は、鈴木瑞人が執筆します。

今回は、Google社が行った企業のパフォーマンスを最大化する方法を見つける研究・調査の事例をご紹介したいと思います。

Googleは今では、人工知能・深層学習における、世界のトップ層の研究者の約半数を獲得しており、AI技術に関しては世界トップを走っています。また、研究者たちが作った組織であるため、何か物事をいうにしても必ず根拠を求める習慣があります。

Googleは、どうしたら従業員のパフォーマンスを最大化し、そして、企業の利益につなげるかに関して、従業員から様々なデータを集め研究してきました。

Googleの人事研究プロジェクトとして有名なものに、
・2009年からスタートした、マネジャーの役割や仕事に関する1万人規模の社内調査である「プロジェクト・オキシジェン(Oxygen、酸素)」と、
・2012年にスタートした、エンジニアリングの115チームとセールスの8チームを対象にした「生産性の高いチームの特性」を明らかにする「プロジェクト・アリストテレス」
があります。

今回はこの二つのプロジェクトの内容をご紹介します。
この次の記事では、この二つの研究の結果を受けてGoogleで実施されている施策についてご紹介します。

この記事と次回記事で根拠として、要約、抜粋しているのは、過去4年間Google社にて人事戦略に従事した、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏の著書、「世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法」です。

それでは以下、
1, プロジェクト・オキシジェン
2, プロジェクト・アリストテレス
の順でご紹介していきます。

1, プロジェクト・オキシジェン

2009年にマネジャーの役割や仕事に関する1万人規模の社内調査を行う「プロジェクト・オキシジェン(Oxygen、酸素)」が行われました。その結果、「マネジャーの言動がチームのパフォーマンスにもっとも関係している」ということが分かりました。

Googleには成果を上げているチームもあれば、上げていないチームもあります。

メンバーは同じように優秀なのに、なぜそういう差が出るのか、わかっていませんでした。

また、ある人があるチームでは成果を上げていたのに、別のチームに入ったとたん成果を上げなくなったということも、よく観察されていることでした。

調査の初期段階で、人事の仮説どおり、「マネジャーの言動」が最もメンバーのパフォーマンスに影響していることがわかりました。 その後、成果を上げているチームのマネジャーが実際に何をしているのか、を調査しました。

・プロジェクト・オキシジェンの調査・分析によって明らかになった
「チームのパフォー マンスを高めるマネジャーの特性」
は、次の8つだそうです。

①よいコーチである
②チームを勢いづけて、マイクロマネジメント(チームのメンバーに対する過度な監督・干渉)はしない
➂チームのメンバーが健康に過ごすこと、成果を上げることに強い関心を持っている
④生産的で成果主義である
⑤チーム内のよき聞き手であり、メンバーと活発にコミュニケーションしている
⑥チームのメンバーのキャリア形成を手助けしている
⑦チームのためのはっきりとしたビジョンや戦略を持っている
⑧チームのメンバーにアドバイスできる専門的技術・知識を持っている

この中で一番大事なのは、①よいコーチである、であり、
①ができないと、たとえ②~⑧ができているとしても、チームのパフォーマンスを上げることができないらしいです。

コーチングというのは、「おまえ、これやれ」などと指示・命令することではなく、
・GROW(G:Goal、目標、R:Reality、現実、O:Option、選択肢、W:Will、意欲)のような質問を通じて、本人に自分がやっている仕事について自己認識させること、だそうです。

以下でGROWについての説明を上記書籍から引用します。

【質問の仕方の「GROW」とは】
・G (Goal、目標)………
「あなたが望んでいること/目指していることはなんですか?」
・R (Reality、現実)………
「いまどれくらいまで進んでいますか?」
「どんな壁に直面していますか?」
「今、どんなリソースがあったら目標に届きそうですか?」
・O (Option、選択肢)………
「あなたがもっとも信頼・尊敬している人が同じ状況に直面したら、 どう行動すると思いますか?」
「目標達成に必要なスキルをこれから鍛えるとしたら、まず何をしますか?」
・W (Will、意欲)………
「(今日から)どうしますか?」
「1から10でいうと、どのくらいのレベルであなたはコミットしていますか?」
「乗り越えるべき壁をどうやって乗り越えますか?」

2, プロジェクト・アリストテレス

2012年、「生産性の高いチームの特性」を明らかにする「プロジェクト・アリストテレス」が開始されました。

調査対象は、エンジニアリングの115チームとセールスの8チームで、生産性の高いチームと生産性の低いチームが比較されました。実際に調べられたことは、
・性格テストでのチームメンバーの性格
・チームのダイバーシティ(男女比など)
・メンバーの行動特性を規定している諸法則や諸要因
・メンバーの知識や技術
・エモーショナル・インテリジェンス(Emotional Intelligence, EI, 心の知能)
などだそうです。

プロジェクト・ アリストテレスの調査結果で判明した
「生産性の高いチームの特性」は次の5つだそうです。

①チームの「心理的安全性」(Psychological Safety)が高いこと
②チームに対する「信頼性」(Dependability)が高いこと
③チームの「構造」(Structure)が「明瞭」(Clarity)であること
④チームの仕事に「意味」(Meaning)を見出していること
⑤チームの仕事が社会に対して「影響」(Impact)をもたらすと考えていること

①④⑤は、読んで字のごとくですが、②と③がわかりにくいかと思います。

②の信頼性は、たとえば「このチームは決めた時間内に高い成果を上げられる」と 信じていること。
③の構造の明瞭さは、役割分担がちゃんと決まっていて、向かうべき目標やそれを達成するための計画が明確であること。
とのことです。

この5つの中で一番大事なのは、①の「心理的安全性」。
心理的安全性とは、「メンバー一人ひとりが安心して、自分が”自分らしく”そのチームで働ける」ということらしいです。

Googleでは、この心理的安定性を高めるための施策が多々あり、メルカリやリクルート、サイバーエージェントでも心理的安定性を高める施策が多々実行されているらしいです。

二つのプロジェクトの成果を受けた具体的な施策については、次の記事でご紹介します。
今回はここまで。

鈴木瑞人
株式会社パッパーレ
東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程
NPO法人Bizjapan テクノロジー部門 BizXチームリーダー

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