2016.11.23 Wed |

人工知能の歴史Part3~立ちはだかるフレーム問題~

Part1、Part2に引き続いて人工知能の歴史について説明します。今回は、現在起きている第三次AIブームの説明に入る前に、第一次、第二次のブームが終結するに至った原因を整理してみましょう。

フレーム問題の壁

Part1,Part2で説明しました「推論と探索」による60年代の第一次AIブーム、「エキスパートシステム」による80年代の第二次AIブームはともに同じ問題にぶつかり冬の時代を迎えるに至ってしまったことが分かります。その問題というのがフレーム問題です。

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フレーム問題とは、人工知能が限られた枠組み(フレーム)の中でしか有用でない、という問題です。人工知能を現実世界で使用していくことを考えると、人工知能にありとあらゆるケースについてあらかじめ教えておかなければならなくそれは非常に困難です。

第一次AIブームの「推論と探索」ではパズルや迷路などのトイプロブレム(おもちゃの問題)と呼ばれるゲームのような問題しか解けませんでした。第二次AIブームの「エキスパートシステム」では第一次のときより現実的な問題を扱えるようになりましたが、ルールベースのAIだったため専門家の知識・ノウハウを網羅的に教え込む必要があり困難を極めました。また、複雑な現実における互いに矛盾するルールや例外に耐えうるものではありませんでした。結局、どちらの場合も狭い枠組みの中でしかうまく問題を解決することができなかったのです。

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強いAIと弱いAI

フレーム問題と似た考え方に強いAIと弱いAIというものがあります。弱いAIとは画像処理には画像処理用のAI、音声認識には音声認識用のAI、証券取引には証券取引用のAIといったように用途ごとに特化したAIの事を言います。これとは反対に、強いAIとは人間の知能のように汎用的なAIでいずれは意識や心も宿すようになるAIの事を言います。強いAIは解決する問題を1つに絞る必要がないので、強いAIが実現できればフレーム問題解決の糸口をつかめるはずです。

第三次AIブームの将来性

現在、AIブームが再び到来しています。第一次が「推論と探索」、第二次が「エキスパートシステム」に象徴されるのであれば、現在の第三次ブームは「機械学習、そしてディープラーニング」に象徴されるでしょう。そしてこの三回目のブームが過去二回のようにブームのままで終わるか、「人工知能」完成につながっていくかはまさにフレーム問題を解決できるかどうか、強いAIを実現できるかどうかにかかっています。

そして、機械学習やディープラーニングによってその糸口は見え始めたのです。

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次回はついに人工知能の歴史についての記事のラストになります。今現在巻き起こってる第三次AIブーム「機械学習、そしてディープラーニング」の実態を説明し、なぜ過去二回に挫折を味わったAIが今回また注目されているのか、次こそはうまくいくのか、といった事について説明したいと思います。

東京大学工学部航空宇宙工学科4年

T.Y.

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