2017.10.19 Thu |

オープンサイエンスとは何か?

Science and Technology, Open Science

・オープンサイエンスとは?

そもそもオープンサイエンスとはなんでしょうか?まず、Wikipediaで調べてみるところから始めましょう。

オープンサイエンス(: open science)とは、研究者のような専門家だけでなく非専門家であっても、あらゆる人々が学術的研究や調査の成果やその他の発信される情報にアクセスしたり、研究活動に多様な方法で参加したりできるようにするさまざまな運動のことである。オープンサイエンスは、オープンアクセスの推進など科学的な知をもっとオープンにし、社会に伝えるというさまざまな活動を含む。

つまり、「あらゆる人々がアクセスを持つ科学」と言うことです。日本語では、オープンサイエンスはしばしば「市民科学」と訳されます。このことからも分かる通り、特定の研究者だけではなく、その他の分野の研究者、一般市民が参入できる形の科学をオープンサイエンスと呼びます。

現在世界的にオープンサイエンスの考え方は注目されています。日本でも内閣府や文部科学省、各研究機関主導でオープンサイエンスの考え方が導入され始めています。

この記事ではオープンサイエンスとは何かの理解を深めることを目的に2つの有名な例を挙げ、また展望としてそもそも科学とは何かということを考えていこうと思います。

 

・オープンサイエンスの例1:Galaxy Zoo

出典:Galaxy Zoo, https://www.galaxyzoo.org/

Galaxy Zooはオンライン上のプラットフォームです。ユーザーはプラットフォームで銀河の写真を複数の基準にそって分類していきます。

ユーザー登録などなく分類はすぐにでも体験できるので是非やってみてください。

Galaxy Zooは2007年にオックスフォード大学の二人の科学者によって設立されました。当時論文執筆と仮説立証のため、大量のデータの仕分けする必要があった彼らは、自分たちだけでなくより多くの人がそのデータの仕分けに参加できるプラットフォームを作ろうと思いつきます。

実際にGalaxy Zooを開設すると、24時間もしないうちに1時間で約7万件の分類が行われ、最初の一年で15万人以上の協力により5000万件の分類が行われました。

そして、そこから生み出された価値も膨大でこれまで発見されてこなかった新しい形体の銀河や、今日の天文学における様々な謎が発見されました。

現在では、Galaxy Zooはオープンサイエンスの例として非常に有名です。

いかにして非専門家が科学に貢献できるかということがGalaxy Zooの例は示しています。従来、天文学研究者でない一般の市民であればこういった研究データや学問それ自体へのアクセスは限られていたと思います。ただ、Galaxy Zooはオンラインの力を利用することで人々へ天文学を開きました。また、そこで発見されたことが学問へ様々な形で貢献しました。

Galaxy Zooはオープンサイエンスの可能性を証明したといっても可能ではありません。

また、この例の面白い点として、「コミュニティの設計」があります。

ちょうどオープンソースのプログラミング言語やWikipediaのように、Galaxy Zooではプラットフォームの参加者がそこで議論を行ったりすることが可能になっています。実際にGalaxy Zooで銀河の分類を始めてみてほしいのですが、銀河の分類が終わると、その度議論にかけることが可能になっています。そこから参加者は議論をすることが可能で、議論同士が合流したりしながら多くの知識が行き来します。

このコミュニティの設計によりGalaxy Zooはただ分類して終わるのではなく、コミュニティや議論への参加が促進されています。

 

・オープンサイエンスの成功例2:Genbank

GenbankはInternational Nucleotide Sequence Database Collaboration (INSDC)の組織でthe DNA DataBank of Japan (DDBJ)、the European Nucleotide Archive (ENA)、GenBank at NCBIといった研究機関が参加しています。INSDCはゲノムの塩基配列に関するデータを集め、それらをGenbank上で公開しています。

Genbankにより遺伝子配列の解読が世界的に躍進、解決にいたりました。Genbankはオープンサイエンスの数ある取り組みの中でも研究者コミュニティの中におけるオープン化ということが挙げられます。

遺伝子

研究者にとって研究内容やデータは宝です。研究者は自分たちの手で実験を行なって膨大なデータを集めます。それを公開することは非常に勇気がいる行動です。

実際、Genbankが設立された時代においては、科学者達がそれぞれのゲノムデータを集積・解析すれば、ゲノム解読が躍進することは明らかでした。また、配列を解読することで病気の余地をはじめ、既存の技術では不可能であったことが可能となる可能性、人類に貢献する可能性を大いに秘めていました。

ただ、自分たちのデータを公開することに対して研究者達は消極的でした。しかし、現在ではGenbankは大きく成長し、大量のゲノムデータを見ることができます。

Genbankの例が特徴的な点はここにあります。

つまり、科学者達がそれぞれのデータを公開することを踏み切るようになった「動機付け」です。

マイケル・ニールセン著の『オープンサイエンス革命』によると、データを公開することで国家が研究費を出しやすい仕組みが作られたことが書かれています。

また、東京大学名誉教授の榊佳之氏は『DNAからゲノムへ, そしてゲノム人間学へ』の中で、バミューダ会議(ゲノム解読に関する国際プロジェクトで各国の研究機関や研究者が参加した)における国家間の強調と競争、データの取り扱い方針、特許や生命倫理における問題においてワトソンの貢献について触れているます。

つまり、制度設計、科学者達の情熱やリーダーシップからもGenbankが実現されたと言うことがうかがえます。

 

・科学とは何か?

突然ですが、科学とはなんでしょうか?

この問いに正確に答えることのできる人は誰もいないでしょう。また、答えもないと思います。ただ、人間は自分達の生活を改善し、自己や環境を理解するために科学をやるのだと私は考えています。

オープンサイエンスにより科学が開かれることで生まれる本質的な意義とは、科学が様々な人に開かれてこういった理解の発展に貢献することにあるのではないでしょうか?

もちろん、科学は国家や企業、個人が所有し、用いることができます。ただ、究極の目的は人類への貢献であり、一部の人に知識が集中し、成果主義や競争が行き過ぎることは、科学それ自体が持つ目的からはそれてしまいます。

良いニュースですが、近年のインターネットの発達とともに、こういった態度は科学だけでなく加速しています。

例えば東日本大震災の際にはGoogleやTwitterが開かれたプラットフォームとして機能し、被災者や関係者にとって大きな助けとなりました。ケニアやアメリカの大統領選挙においてUshahidiが選挙監視に大きな役割を果たしました。オープンデータと言われる一連の取り組みもそうです。

つまり、「オープン」で開かれた取り組みは近年急速に拡大しつつあり、それ自体がデータや情報を生み、サイエンスとなっていきます。

こういった取り組みに注目していくことで社会に異なるアプローチができるのではないでしょうか??

 

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