2016.09.02 Fri |

データサイエンスの応用(派遣業編)Part2

前回、データサイエンスの応用(派遣業編)Part1を書きましたが、今回はその続編です!

派遣業の企業においてデータサイエンスを応用することを考え、以下5つの目標を立てて、どのように施策を実行していけばよいかについてお話しします。

前回は目的1まで話し終わったので今回は残り4つについて扱います。

(目的1: 売り上げを上げる)

目的2: 利益(営業利益と経常利益)を上げる、

目的3: 社員の幸福度を上げる、

目的4: 顧客の幸福度を上げる、

目的5: 取引企業の売り上げを上げる、

それでは、

目的2:利益(営業利益と経常利益)を上げる
に移りたいと思います。

利益
まず営業利益と経常利益について、軽くご説明します。
営業利益
「会社の本業での儲け」を表す数値です。基本的に、売上から原価と営業に関する諸経費(販管費)を差し引いたものがこれに当たります。
経常利益
営業利益に『本業以外での収支(営業外損益)を加味』した数値です。具体的には、営業利益に金融機関からの借入金の利息(マイナス)や預金の利息を加味した数値です。

では、データサイエンスは、ここではどのように役立つのでしょうか?

悩み
まず営業利益ですが、諸経費の削減に使用出来ます。

経費
諸経費とは正確には、販売費および一般管理費(販管費)の事を指し

具体的には、
給料(社員に対する給与)、賞与(ボーナス)、法定福利費(健康保険料や厚生年金などの会社負担分)、福利厚生費(社員旅行・社員の冠婚葬祭の慶弔費)、広告宣伝費接待交際費旅費交通費支払手数料賃借料通信費水道光熱費保険料減価償却費(資産の価値減少分)、租税公課(固定資産税や自動車税)、消耗品費(コピー用紙・ボールペンの事務用品費)の事を指します。

これらに関して、しっかり記録をとり、データサイエンスのデータ可視化技術により、各支出が適正であったかを後から検討します。

次に経常利益ですが、これは、営業利益と営業外収益を足し合わせたものから営業外費用を引いたものです。
式にすると以下になります。
経常利益=営業利益+営業外利益-営業外費用
営業利益とは、上記に書いた通りです。
営業外利益とは、例えば、為替変動などにより、持っているドルの価値が上がった場合の利益を言います。正確には、受取利息受取配当金をはじめとする有価証券利息有価証券売却益不動産賃貸料雑収入のことを指します。

退屈

営業外費用とは、例えば銀行から融資を受けている場合の利息の支払いの事を言います。正確には、支払利息割引料社債利息貸倒償却有価証券売却損雑支出などの事を指します。

データサイエンスの役割としては、これら、たくさんの要素をわかりやすく可視化し、現状把握を容易にして、未来を予測できるようにし、社内の適切かつ持続的なキャッシュフローを実現することです。事実がより早く正確につかめれば、より迅速な対応をすることが出来ます。

可視化

以上で
目的1: 売り上げを上げる、
目的2: 利益(営業利益と経常利益)を上げる、
目的3: 社員の幸福度を上げる、
目的4: 顧客の幸福度を上げる、
目的5: 取引企業の売り上げを上げる、
のうち、
目的2まで終わりました。

次に、
目的3: 社員の幸福度を上げる
に移ります。

社員の幸福
まず社員の幸福度を定義することから始めます。
幸福度というのは、時間によって変化するので、できるだけリアルタイムで頻繁に計測できるようにしましょう。
日立製作所の矢野和男氏により、腕の加速度(活動量)が、人の幸福に最も相関があることが示されていますので、社員に加速度を測定できるウェアラブルディバイスを装着させて、活動量を計測してみるのが第一選択と思います。

wearable-device
ただし、腕の加速度計測は、プライバシーの問題もあるのと、人によっては、腕の加速度ではあまり幸福度を測定できない可能性があるので、(ここは試行錯誤ですが)もっと情報をとってみて、幸福度に影響があるかを測定してみるとよいと思います。

プライバシー
仕事中の顔の表情を撮影したり、他社員とのコミュニケーション時間や、誰とコミュニケーションをしているかを測定したりしてみて、各社員がどの要因が一番幸せに影響しているかを測ることで、各社員を幸せにするための適切な提案をすることができます
このような個人情報の取得は、すでに会社が大きくなっている場合には導入しづらいですが、まだ会社が小さい場合には、入社のときの雇用契約に、福利厚生のためのデータ取得を盛り込むことで、可能になります。その際もちろん社員が選択する権利も用意しなければなりません。

選択

では、目的3: 社員の幸福度を上げる、が終わったので、次に、

目的4: 顧客の幸福度を上げる
について、お話したいと思います。
派遣業者の場合の顧客とは、派遣先の企業(の担当の方)になるので、ここでは、顧客の幸福度ではなく、顧客の満足度と考えてください。

顧客の成功
取引先の企業の方の情報は基本的にとりづらいです。
たとえば、取引先の方の職場での話し声の取得や、表情の撮影など。
なので、直接お会いして、派遣社員の評判を聞く際に、あらかじめ、質問項目を洗練させておき、必要な情報をできるだけ、聞き出せるようにしておきましょう。

聞き取り
派遣先企業さんの満足度が低ければ、契約打ち切り、または、別の社員への変更となりますが、ます契約の打ち切りであれば、それが、派遣社員の問題なのか、業務内容が変わったなどの社内の問題なのかは、はっきり区別できるようにしておかなければいけません。区別できるように情報を蓄積しましょう。

データの蓄積

それでは最後に、
目的5: 取引企業の売り上げを上げる
事について考えましょう。

写真4
取引先が、人材だけ提供してくれればよいというスタンスであればそれ以上は何もしなくてよい場合もありますが、
取引先企業側としても、自分の事をできるだけ考えてくれていた方がうれしいものです。
出来るだけ、取引先の企業のビジネスモデルを理解し、
売り上げ=登録人数×稼働率×給与額×マージン率×継続率
のように売り上げを増やす要素を列挙して整理したりしておきましょう。

typying
取引先の社長さんからしてみたら、そこまで考えてくれている派遣会社の方が信頼がおけます。

ビジネス信頼
契約窓口が、社長レベルでなかったとしても、会社の事全体を考えたうえで、その企業の社長さんと仲良くしておけば、例えばなんらかの理由で契約打ち切りになったとき、別窓口(別部署)で再度契約しなおすといったことも可能です。

相手のビジネスモデルの全体が見えていれば、一部の部署で契約打ち切りになっても、他の部署でこういう人材が必要といったことが予想でき、社長への営業も仕掛けやすいはずです。

ビジネス理解
データサイエンスでは、他の部署でこういう人材が必要といったことを、データの可視化により、わかりやすく、データに基づいた説明を可能にします

以上で、5つの目的を達成するために、どのようにデータを取り、実際のビジネスとデータサイエンスと融合させることが出来るかに関して、一つの具体例を示しました
筆者が派遣業に関して詳しくないため、浅い考察となった部分もあるのと、データサイエンスの詳細を知らない方からすると、技術的な用語でよくわからないことも多かったかもしれませんが、何か新しく知ったことがあれば幸甚です。

ご質問ご指摘があれば、
machine.learning.r@gmail.com
までご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
※この文章は筆者の独断と偏見で書かれたものであり、実際の派遣会社とは関係ありません。

鈴木瑞人
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程1年

東京大学機械学習勉強会

一般社団法人Bizjapan

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