2017.07.12 Wed |

アイトラッキングとマーケティング

Eye_trackingいつも記事書いている鈴木瑞人です。今回は、早稲田でマーケティングを勉強している後輩が、Eye trackingの記事を書いてくれました!
今まで、Nature系やScience系含め、Eye trackingに関する論文をあまり見たことがないのと、脳科学系の論文や本でもあまり見た覚えがないことから、個人的には貴重な切り口で書いてくれたと感謝しています。
Eye trackingの論文は見たことがある気がするのですが、どれも著しい成果を挙げているとは言えないものだったと思います。
ビジネス的には、
1、店舗にある棚と商品を配置して、顧客の視線を把握して、商品配置に反映させる、
2、webpageのユーザーテストにおいて、顧客の視線がどこを指しているか見ながら、顧客が使いやすいユーザーインターフェースにする、
3、商品のパッケージを開発する際、顧客がパッケージのどこを、どのような順番で見る傾向があるかを把握し、魅力的で、メッセージを伝えやすい商品パッケージを開発する、
などに使われています。
ただ、あまり、その結果が、外に公表されることはない気がしています。

今回は、数少ない、Eye Trackingの公開事例を紹介してくれるようです。
それではお楽しみください。

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多くの企業がマーケティングに多大な労力と時間をかけています。
マーケティングについて勉強する人も多く、本屋ではたくさんの本が売っていたり、大学では人気の選択科目だったりしますね。
そのマーケティングにも、その定義は広く、様々な方法や分野があります。
その中の一つが、マーケティングの心理学です。今回はアイトラッキングを使用した実験から得られる人間の心理傾向についていくつかご説明します。

アイトラッキング
アイトラッキングとは、被験者の眼球や角膜反射を赤外線でとらえ、目の動きをとらえる科学的な手法です。心理学や認知科学の分野で用いられる分析方法です。
Eye_tracking2

では、アイトラッキングによって得られたマーケティングに関する発見は以下のようなものがあります。

1.中心を一番長く見る
人は空間を最初に見る時、中心を見る傾向があります。
center_attention
上の画像はアイトラッキングの結果で、赤、黄色、緑色の順番で被験者の視線が注がれている時間の長さを示していて、赤色である方が時間が長くなっています。
この画像でも、赤い部分が中心部分に多く見られ、画像の端の部分についてはほとんど見ていないことがわかります。
この原因としては、視線を動かすために必要な筋肉を動かす労力であると考えられています。人間は筋肉に力を入れていない状態では視線は前方にまっすぐ向けられます。その視線を中心から上下左右に動かすには筋肉を使ってわざわざ動かさなければいけないため、少なからず疲れが生まれるのです。

さらに、Atalay氏などによる実験(論文”Shining in the Center: Central Gaze Cascade Effect on Product Choice.”, 2012より)からは、人は中心を長く見ることにより、商品の嗜好もそれに合わせ中心のものほど高くなるという発見がされています。このことは目線の高さに陳列されている商品が高い層・低い層に並べられている商品よりも売り上げが大きいということにも関連しているのではないでしょうか。

2.顔に一番視線が注がれる
今日、私たちのまわりは様々な広告であふれています。この広告の見方にも傾向があります。
face_attention

上のアイトラッキングの結果画像を見ると、赤い部分が特に顔部分に多く集中していることが分かります。さらに、広告の中の人物が視線をどこかに向けている場合、視聴者もその視線をたどるということも分かっています。
その事例の一つにヘアケア用品を取扱うSunsilk社の事例があります。
これはモデルの視線による注目度の変化を検証したものです。モデルの視線が正面を見ている広告と商品を見ている広告で比較し、以下のような結果が得られました。
モデルが正面を見ている広告では視聴者のうち6%、モデルが商品を見ている広告では視聴者の84%が商品を見ていました。

これを実際の広告で応用すると、視線の先に商品画像、ブランドのスローガンやブランド名、会社名があると高い広告効果が期待されます。

このように、アイトラッキングから視聴者の様々な傾向を理解することができます。
しかし、この手法ではなぜ被験者がそこを見たのかなどの原因や被験者の心理を正確にくみ取るごとはできません。アイトラッキングとほかの手法をうまく組み合わせて活用することでさらに画期的で新しい発見が期待されます。また、アイトラッキング自体の精度もさらにこれから上がっていくと思われます。そういった進歩を踏まえ、マーケティングの質も上がりより効果的なマーケティング手法も生まれていくのではないでしょうか。

早稲田大学3年 Y.T

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