2018.06.20 Wed |
Amazonでの数字・データサイエンスの文化
この記事は鈴木瑞人が執筆します。
最近は、データサイエンスを積極的にビジネスで活用する動きが国内外でよく見られますが、今回は、データ活用をいち早く実行し、ビジネスモデルの改良などに生かしてきたAmazonの数字の扱い方やデータサイエンスの文化について書きたいと思います。
AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスは、プリンストン大学でコンピュータサイエンスと電気工学を学んだため、もともと数字やコンピュータには強かったようです。
今回は、Amazon Japanの立ち上げに初期から2016年まで深くかかわった、佐藤将之氏の著作、
「アマゾンのすごいルール」 佐藤 将之 (著)
からいくつか例をご紹介したいと思います。
「Amazonでの数字・データサイエンスの文化」に関して、具体的には以下3点を取り上げたいと思います。
順番にご紹介していきます。
1, アマゾンには、社員ならだれでも使用可能なデータベースが存在する
2, 商品ページのアクセス解析によるビジネスモデルの大きな転換
3, アマゾンの目標管理
1, アマゾンには、社員ならだれでも使用可能なデータベースが存在する
「どの商品がいつどれくらい売れているか」という情報に全社員がアクセスできるような仕組みになっており、
商品を仕入れるリテール部門の人などは、特定の商品の売り上げが突発的に上昇している場合、それがいつ起きたのか、どの地域のどの年代、性別の人たちが買っているのか、商品ページの閲覧数はどのように増えているかなどを、ドラック&ドロップで簡単に引っ張り出せるようになっています。
もちろん、特定の商品の売り上げ上昇の原因がテレビCMだった場合などは、その情報はデータベース上にはないので、ネットで検索するなどして自分で特定する必要はありますが、大抵のことはデータベースを使用することで知ることができるようになっています。
これが、アマゾン社員がものすごい速さでPDCA(Plan-Do-Check-Action)を実行できる源泉の一つになっているようです。
2, 商品ページのアクセス解析によるビジネスモデルの大きな転換
アマゾンでは、在庫なしとなっている商品のページにどれくらいアクセスがあったかを計測できるようになっていました。
これ自体は特段驚くことではないのですが、この計測結果をしっかりとビジネスモデルの転換に生かしたところがアマゾンのすごいところです。
死筋商品と思われているような商品のページにもアクセスがそれなりにあることを突き止め、死筋商品も扱うようにしたのです。
リアル店舗の世界では、「2割の商品が売り上げの8割を占める」(20/80ルール)と言われてきました。
なので在庫もできるだけ、売れる2割の商品に集中させることがリアル店舗では行われ、ネット店舗でもそれを模倣してきました。
しかし、ネット販売では、売り場面積を気にする必要がないこともあり、またwebsiteへのアクセス解析の結果から20/80ルールが当てはまらないことが示唆されました。
アマゾンでは、創業から2005年までの在庫戦略では、20/80ルール通り、20%の売れ筋商品の在庫を集中させてきましたが、2006年からは、死筋商品も扱う戦略(LongTail戦略)に移行しました。アマゾンでは品ぞろえを増やすことはあっても減らすことはないそうです。そのため、アマゾンは次々と倉庫を建設しているそうです。品ぞろえは顧客の満足度にも直結することもあり、顧客第一主義(Customers Rule!)ともぴったり合い、この方針はずっと続くようです。
3, アマゾンの目標管理
例えば、以下のようにして、すべての物事を数値で管理できるようにします。
まずは、目標をBreak downする。
1, 1年間の売り上げ目標を数値で決める。
2, 各部署ごとに1年間の売り上げ目標を数値で決める。
3, 年間目標を月次目標に、月次目標を週次目標にする。
4, 達成のためのアクションを考える。
5, 未達の場合の代替アクションを考える。
6, 目標を集約する。
次に目標を見える化し、チェックするタイミングを決める。
7, 年間目標、月次目標、週次目標を見える化し、部署のメンバー全員で共有する。
8, 達成度を、誰と誰が、どんな頻度で、どのようにチェックするのか決めておく。
9, 達成度を見える化する。
これにより得られた数字により、社員を客観的かつ公平に評価するのだそうです。
ということで、「Amazonでの数字・データサイエンスの文化」を以下3点に絞ってご紹介しました。
1, アマゾンには、社員ならだれでも使用可能なデータベースが存在する
2, 商品ページのアクセス解析によるビジネスモデルの大きな転換
3, アマゾンの目標管理
今回はここまで。
鈴木瑞人
東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻 博士課程
株式会社パッパーレ 代表取締役
NPO法人Bizjapan テクノロジー部門BizXチームリーダー
実践的機械学習勉強会 代表