カモネです!
皆さんはSakana AIという企業を知っていますか?
なにそれ?という方も、名前は聞いたことはあるけど何をしているかは知らない、という方もいることでしょう。
Sakana AIは、元Googleの研究者であるライオン・ジョーンズらが日本で創業したAI研究開発企業です。
これまでにも、AIチャットボットのSakana Chat(サカナチャット)や長時間の自律調査とレポート出力を行うSakana Marine(サカナマリン)などをリリースしていましたが、あまり目立った存在ではありませんでした。
そのSakana AIが今、満を持してリリースしたAIモデルの「Fugu」(フグ)が注目を集めています。
何をそんなに大騒ぎしているのかというと、リリースから僅か三日で輸出規制で使用禁止になった「Claude Fable 5」に匹敵するという触れ込みだからです。
Sakana AI公式が提示しているベンチマークの結果では、Fableと同等以上の成績を残していることが示されています。
Sakana Fugu: One Model to Command Them All
しかし、ベンチマークテスト上の成績の優劣が実際のユースケースにおける体感的な性能にそのまま反映されるとは限りません。
特に、Sakana Fuguは従来のモデルと設計思想から異なるものなので、単純比較は難しいと言えます。
従来のLLMは、大規模な計算資源を用いて自ら作業を行うものです。
これらのモデルを開発・提供している生成AIラボは、GoogleやSpaceXなどが持つ巨大なデータセンターの計算資源を借り受けて、その上でモデルを動かしています。
当然、それだけの計算資源を調達するには莫大な資金が必要です。ましてや、自前で用意するのは夢のまた夢。資金力のない新興スタートアップがどれだけ頑張っても、Googleには敵いません。
しかし、Sakana AIは「計算資源を調達せずに同じ成果を得る」という逆転の発想でFuguを作っています。
これがどういうことかというと、Fugu自体は指示役・まとめ役として振る舞い、大部分の作業は外部のモデルに割り振ることで、Fugu自体は計算資源が少なくても成り立つという構造です。
たとえば、何かアプリケーションを作りたいとなったら、最新情報のリサーチはGeminiに、コーディングはClaude Opusに、出来上がったコードのレビューと修正指示はGPTに、といったように、それぞれの得意分野に応じたタスクの割り振りを行い、それらをまとめてアプリケーションを作り上げます。
ClaudeのFable 5は自身が強力なプレイヤーでもあり、すべての仕事を単独でこなすことができましたが、Fuguは要件を整理し、作業計画を立て、適切なモデルに仕事を割り振り、その成果を受け取って、最終成果物をユーザーに渡す。エンジニアの世界でいえば、まさにプロジェクトマネージャーの立ち回りです。

似たような仕組みを取っているモデルとしては、OpenRouter Fusionが挙げられます。
OpenRouter Fusionは、あらかじめ選出した複数のモデルに同時にタスクを投げ、その結果を審判モデルが比較して検討します。
それぞれのモデルが出してきた回答の共通点、相違点、特定のモデルだけが出してきた独自の観点、いずれのモデルも触れず、見落とされている観点などを整理して分析し、最終的な回答を生成する仕組みです。
複数のモデルに同じプロンプトに対する回答を出力させるので、その分計算コストもかかってしまいますが、単一のモデルだけでは出てこない観点やハルシネーションなどのノイズを取り除いて安定した品質の回答を出力でき、ファクトチェックの手間や複数モデルに投げるコストを削れるのだと考えると見合っているケースもあるでしょう。
また、Claudeでもエージェントチームという機能で、複数のノードを立ち上げてチーム体制で並列で仕事をこなすことができますが、複数のモデルを動的に使い分けるということは難しいので、その点ではFuguに独自性があります。
Sakana AI Fuguは内部でモデルへの仕事の割り振りをして、最終回答を作り上げる。
OpenRouter Fusionは複数のモデルに同時に同じプロンプトを投げて、得られた回答を分析して最終回答を組み立てる。
Claude Agent Teamは複数のノードを立ち上げて、役割分担して最終回答を作り上げる。
それぞれやり方は違いますが、どれも最終的に単独のモデルに任せるより優れた成果物を作ろうとしている点では共通しています。
どんなに優れた仕組みでも、どんなに高い性能でも、コストが高ければ高嶺の花です。
あのClaude Fable 5は、従来モデルのOpus 4.8の2倍のコストがかかっていましたが、それに見合うだけの性能があるとされていました。
OpenRouter Fusionは、使うモデルを増やすほどコストがかかる仕組みです。節約したければモデルの数を減らせばいいのですが、そうすると多数のモデルの回答を比較してより良い回答に仕上げるという強みが活かしにくくなってしまうジレンマがあります。
これに対してFuguは、どのモデルをどれだけ使うか、という選択はFuguに任せる仕様なので、コストが測りにくいところがあります。
しかし、Fable 5に匹敵するという最上位モデルのFugu Ultraを使った場合、Proプランではすぐに上限に達してしまったので、トークン消費量は高いものと想像できます。
ClaudeやChatGPTのように、サブスクで普段使いするには向かないので、必要に応じて重量課金で使うのが無難かなと思いました。
Sakana AIのFuguには、性能以外のメリットがあります。
それは、単独のモデルに依存しない可用性の高さです。
Claudeのフロンティアモデル(MythosおよびFable)が輸出規制により使用禁止にされたのは記憶に新しいです。
私たち一般ユーザーはたった三日しか使えなかったのでそれほど大きな影響はありませんでしたが、MythosはすでにAnthropicが主導するProject Grasswingによって金融機関やITインフラ企業などで先行して導入されていたはずなので、それらの企業が受けたショックは大きかったことでしょう。
この事件は、特定のモデルだけに依存してシステムに組み込むことのリスクを顕在化させたように思います。
Sakana AIのFuguは、内部で最適なモデルを選んで仕事を割り振るシステムなので、1つのモデルが使用禁止になったとしても他のモデルに置き換えてくれるので、出力に変化はあるかもしれませんが、継続して運用できます。

もちろん、「OpenAIもAnthropicもGoogleも全モデル使用禁止!」となったらその限りではありませんが、それでも使えるモデルが全くないわけではないでしょう。
特に、日本発のAIモデルなので日本で使う分には安心感があるかなと思います。
Fuguを試したい場合は、Codex CLIから呼び出すのが最も簡単です。
すでにCodexのデスクトップアプリやCLIを利用している場合は、GPTに
ただし、Proプラン以上のサブスクリプションに加入している必要があります。
AIモデルといえば、GPT、Claude、Geminiの三大AIが最も注目されているし、使われています。
しかし、ちょっとした調べものなら文章にせずGoogle検索のようにワードだけ打ち込めば調べてくれるPerprexityが手軽だし、コーディングならCursorに備わっているComposer AIも優秀だし…といったように、汎用性では敵わないとしても特定の用途では優れたパフォーマンスを発揮するモデルがいくつもあります。
そして、今回紹介したSakana AIのFuguは、複数のモデルを使い分けて最高の結果を出そうとするというアプローチで、普段使いにはオーバースペックだけれども、ここぞという時に使う、とか、特定のモデルが禁止されて止まったら困るようなクリティカルなシステムやアプリケーションに組み込むという用途で輝くものだと思います。
このように、汎用的なAIモデルのどれを選ぶか、ということだけでなく、用途に応じて様々なモデルやサービスを使い分けることができれば、より柔軟な対処ができるようになっていくでしょう。