ケニア・ナイロビの町の薬局「ライチ・ファーマシー(Ryche Pharmacy)」は、在庫と期限切れの薬を、AI付きのアプリ「ゼンダワ(Zendawa)」で見ています。マイクロソフト(Microsoft)の取材記事(2026年1月15日)が、薬剤師のブラムウェル・オティエノ(Bramwel Othieno)氏の話を載せています。
期限と残数を同じ画面で見ます。紙や手作業の棚卸しから抜け出し、期限が近い薬を先に動かす仕組みを入れました。小さな店では、棚の広さも人も足りません。ロスはすぐに利益を食います。
ケニアの薬局の多くは、富裕層向けのチェーンではなく、個人が営む小さな店です。ゼンダワの共同創業者でCEO(最高経営責任者)のウィルフレッド・チェゲ(Wilfred Chege)氏の説明では、近所の人が歩いて来る店が中心で、利益の幅は細いです。
記事では、約18〜20㎡(約200平方フィート)の店を回すのに薬剤師が3〜4人必要、と書かれています。WHOの数字として、ケニアは薬剤師が人口1000人あたり2人、米国は111人、という比較も出ています(出所はGlobal Health Observatory、とマイクロソフト記事)。
ゼンダワという名前は、zen とスワヒリ語の dawa(薬)を足したものです。始まりはコロナ禍の配送でした。のちに在庫や事務のデジタル化へ広がっています。文章作成のAI「マイクロソフト365コパイロット(Microsoft 365 Copilot)」と、数字を見る表の仕組み「パワーBI(Power BI)」を組み込んだアプリ、とマイクロソフト側は説明しています。
オティエノ氏は次のように話します。導入前は、期限切れの薬で月に約6700円(約6000ケニアシリング。記事は約45米ドル/おおよそ1ドル=150円)を失っていました。ゼンダワ導入後は、期限が近いものを先に出せるようになり、少なくとも約4500円分は節約できました。店は、期限切れロスをさらにゼロに近づけたい、としています。
棚卸しも変わりました。以前は丸1日かけて在庫を数えていましたが、いまは半日で済みます。チェゲ氏の説明では、デジタル化前は、定期的に店を丸1日閉めて棚卸しする店もありました。
オンライン経由で客が増えた、という文脈もあります。オティエノ氏は、最低の日商が約1万3500円から約2万2500円へ上がった、と話します。ただし「ゼンダワの在庫機能だけ」が原因か、配送や販路全体かまでは、公開記事だけでは切り分けられません。
配送・融資・信用スコアは別論点です。本稿は期限切れと棚卸しに限定します。
ディスラプト・アフリカ(Disrupt Africa、2026年1月22日)も、ゼンダワが導入した薬局は約820店で、在庫管理や信用スコアのAIツールを出した、と報じています。創業は2022年、本格運用は2023年以降、という説明がマイクロソフト記事と概ね揃います。
歯科の滅菌パック・印象材の期限、美容室のカラー剤ロット、動物病院のワクチン、介護施設の消耗品でも、期限が近い在庫の見方と、棚卸しで止まる時間が課題になります。
期限と残数を同じ画面/表で見て、期限が近いものを先に使うルールを決め、棚卸しで現場を止める時間の上限を半日以内にします。棚が狭く、仕入れの現金が少ない現場でも、この手順が使えます。
数字の主な出所は、マイクロソフトの取材記事における薬剤師本人の発言と、ゼンダワ創業者の説明です。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 期限切れロスは月約6700円から、少なくとも約4500円分の節約 | 第三者の会計監査・独立した効果測定 |
| 棚卸しは丸1日から半日へ | 測定日・方法の詳細 |
| 最低日商は約1万3500円から約2万2500円へ | 在庫機能単体の寄与の切り分け |
| 導入した薬局は約820店 | 各店の導入深度 |
| 融資・信用スコアの説明あり | デフォルト率などの実績 |
いずれも当事者・紹介記事の説明として記録します。
マイクロソフト記事はパートナー企業の紹介でもあります。ディスラプト・アフリカはCEOインタビューでネットワーク規模を補強しますが、ライチ・ファーマシー単店のロス数字は再測定していません。
WHOの薬剤師密度の比較は、マイクロソフト記事が引用した背景です。本稿の成果主張には使いません。
小さな店へ写すなら、期限と残数を同じ場所で見て、人が止まる時間を短くします。