イタリア・エンポリの皮革衣料メーカー、ペレモーダ(Pellemoda)は、在庫の見方を変えました。以前は表計算と担当者の判断で、カタログの一部だけを週次で見ていました。いまは、5,000を超える商品レコードを対象に、毎日の需要予測と在庫の健康状態の判定、仕入先向け発注の下書きまでをエージェント(指示に沿ってツールを使い分けるプログラム)が行い、人が承認してから発注します。
仕組みの説明と数字は、開発者のアビシェク・チャウハン(Abhishek Chauhan)氏の事例ページおよび関連ブログによります。ペレモーダ側の独立した測定レポートは、本稿では確認していません。会社の実在は、公式サイトのAboutで確認できます。
毎日の流れは、次のとおりです。まず会社のシステムから、いまの在庫量と販売履歴を取り込みます。つぎにSKU(在庫管理の最小単位)ごとに、過去の売れ方と季節性から需要の見通しを出します。1商品あたりおおよそ入力1,500トークン・出力400トークンで、モデルはGPT-4o-mini(OpenAIの言語モデル)です。
見通しのあとに、欠品や過剰在庫へ向かいそうな品を理由つきで印を付けます。発注が必要なら、仕入先向けの発注文を下書きします。送る前の承認待ちに置き、担当者が理由を読んでから承認します。商品データは、スパベース(Supabase)のpgvector(データベース内のベクトル検索)に約5,000件埋め込んでおり、専用のベクトルDBは置いていません。判断の痕跡は、ラングスミス(LangSmith)で追える、と事例は書いています。
単発の長い指示文ではなく、ラングチェーン(LangChain)のツール利用エージェントとして、いまの状態を見ながら次に何を確認するかを決める、という説明です。
SKUが多く、週次の表計算では端まで見切れない現場に近い話です。歯科技工所なら、合金・レジン・人工歯など季節と症例で偏る材料を、毎日の見通しと発注下書きに載せ、技工士長が承認する形が考えられます。病院の滅菌・消耗品でも、発注権限は看護部が持ち、下書きだけ夜間バッチで揃える使い方ができます。眼鏡のフレーム特注や、版元・取次をまたぐ専門書店の季節SKUでも、毎日の需要見通しから発注下書きを出し、人が送る前に承認する使い方ができます。
皮革工場そのものを、そのまま別の皮革工場へ写す必要はありません。写す中身は、多SKUの需要見通しと、人が送る前に止める発注です。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 5,000超の商品を毎日監視・需要予測。以前はカタログの一部を週次の表計算で確認 | 対象期間、SKUの定義、導入前後の比較方法 |
| 1商品あたり約0.0005ドル(約0.08円。1ドル=150円で概算)。1日の実行はコーヒー1杯未満/1ドル未満(約150円未満) | 実請求額、トークン単価の時点、対象SKU数の揺れ |
| 仕入先向け発注はエージェントが下書きし、人が承認。判断は追跡可能 | 承認率、差し戻し率、誤発注の件数 |
| 人手より数日早く、在庫のずれを表面化 | 測定方法と「数日」の定義 |
| 欠品を約30%減らし、月あたり約1.5万ユーロ超(約250万円。1ユーロ=165円で概算)の売上回収に相当(開発者ブログ) | 第三者の再測定、比較期間、売上換算の式 |
| LangChain、GPT-4o-mini、Supabase pgvector、LangSmith | 本番のバージョンと社内権限設計の詳細 |
| マーケティングのバージニア・カポーニ(Virginia Caponi)氏のコメント(事例ページ) | コメントの日付と、社内での役割の公式確認 |
多SKUの在庫を、週次の一部点検から毎日のSKU予測と発注下書きへ移し、人が送る前に一度止めます。効果の数字は開発者側の説明として記録し、第三者の再測定は未確認のまま分けておきます。