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スペインの果樹園兼アグリツーリズム。土壌センサを会話エージェントで灌水判断に使う

2026.09.12
スペインの果樹園兼アグリツーリズム。土壌センサを会話エージェントで灌水判断に使う

スペイン・エクストレマドゥーラ州ラ・ベラ(La Vera)の果樹園兼アグリツーリズム(農業体験の観光)、アイレス・デ・ラ・ベラ(Aires de la Vera)で、会話型の地理AI(GeoAI)エージェント「ジャックドー(JackDaw)」の6ヶ月検証が終わりました。主導はスペインの中小企業エスパシオSOA(Espacio SOA)のアグロジャック(AGROJACK)です。ホライズン・ヨーロッパ(Horizon Europe)のポリルーラルプラス(PoliRuralPlus)の追加採択枠(Enhance Call)に採択された7件の1つで、2026年7月31日付のニュースと8月1日付のブログが内容をまとめています。

センサの数値を画面だけで読ませず、会話で「今夜灌水するか」などを平易なスペイン語で返します。来客向けの案内と、農場の判断を、同じエージェントが扱います。

何が起きたか

アイレス・デ・ラ・ベラは、桜・いちじく・プラム・栗・オリーブなど1500本を超える果樹園であり、来客向けの体験農園でもあります。アプリでは桜の木の「養子」登録、活動の予約、農場のマルチメディア(写真や動画など)閲覧ができます。

検証の問いは、会話AIが来客と農場運営の両方に同時に使えるか、です。来客側では、アプリ内のジャックドーが位置・周囲・時間帯・天候に応じて近くの活動を勧めます。木の横のQRを読むと、その木の樹種・樹齢・再生農法などの追加説明が出ます。ジャックドー本体が持つ地形・土地被覆・地域気候の地理知識も答えに混ぜます。

農場側では、エスパシオSOAの環境センシング基盤アグロセンス(AgroSens)が動いています。この農園ではLoRaWAN(遠距離の省電力無線)の土壌プローブ6本を2つの深さに置き、pH、電気伝導度(EC)、NPK(窒素・リン・カリウム)、水分、温度、塩分を測ります。表面だけでなく根圏(根のまわりの土)を見るためです。これまでデータはチャート読みが中心でした。ジャックドー接続後は、農場管理者が「今夜灌水するか」と聞くと、近いプローブの水分・天候・季節を踏まえた答えが、理由つきの平易なスペイン語で返ります。

裏側では、自分たちのサーバで動かすPython(プログラム言語)のMCP(Model Context Protocol。AIが外部ツールを呼ぶための接続方式)サーバがあります。ここがQR地点・活動・来客プロフィール・アグロセンスのその場の測定値をツールとして公開します。アプリはジャックドーのチャットAPI(会話用の接続口)と話し、ジャックドーは必要なとき農場データを呼びます。ダッシュボードは専門家用に残り、会話はそれ以外の人向けの窓口です。

何が変わったか

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
来客の構造化セッション3回・24人。分析約50相互作用。期間中の登録は200超(ブログは「ほぼ200」) 相互作用の成功/失敗定義、第三者の再集計
農業側の相互作用15超。プロジェクト目標を上回った 目標値の公開定義、助言の採用率
近隣農家への非公式セッション後、3件が自地でのセンサ実証を希望 実証の開始時期・継続率
プローブ6本・2深度。pH/EC/NPK/水分/温度/塩分 灌水判断の正答率や収量への効果
セルフホストMCPでQR・活動・来客・ライブセンサをツール化 ジャックドー本体のモデル名・精度指標
アグリツーリズムの中小企業向けとセンサ農場向けの再現経路を公開検証報告に記載 他農場での再現結果
ポリルーラルプラスの資金(契約番号 101136910) EU・実施機関の見解との一致(記事は著者見解と注記)

記事の著者はエスパシオSOAのロベルト・ヒメネス(Roberto Gimenez)です。

誰に関係するか

果樹や野菜の少量多品目、直売所付き農園、牧場見学やワイナリー見学では、センサやQRはあるのに、画面の読み取りに時間がかかることがあります。温泉街の回遊案内と設備の異常値確認を同じ窓口にしたい小規模施設や、工場見学コース付きの食品工場でも、位置・天候・現場センサを会話の道具にして、来客案内と現場判断を一本化できます。

まとめ

専門家用の画面は残し、日常の灌水や案内の問いだけを会話に載せます。

参考文献

  • AGROJACK completes its validation of JackDaw GeoAI at the Aires de la Vera estate(PoliRuralPlus News、2026-07-31)、https://www.poliruralplus.eu/news/agrojack-completes-its-validation-of-jackdaw-geoai-at-the-aires-de-la-vera-estate/ 、確認日 2026-09-12
  • From farm to visitor: how we taught JackDaw to speak for our estate(PoliRuralPlus Knowledge Transfer Blog、2026-08-01)、https://www.poliruralplus.eu/knowledge-transfer/blog/from-farm-to-visitor-how-we-taught-jackdaw-to-speak-for-our-estate/ 、確認日 2026-09-12

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)