2019.03.28 Thu |
東大卒の指揮者とファシリテーターが見つけた、共通する「コミュニケーションの芸術」
東大卒でフリーランス・ファシリテーターの杉山大樹です。
月に一度のペースで寄稿させてもらっています。
東大卒で指揮者になった人がいるんです。
40歳でようやく若手とされる指揮の世界で、ポルトガルの指揮コンクールで優勝、大阪府高槻市「特別功労賞」を受けるなど、鮮烈に活躍する木許裕介さん。(本記事公開時に31歳)
お互い知ってはいたのですが、半年前にたまたま掛川のリツアンさんの飲み会で話して、意気投合しました。
コミュニケーションの芸術
なぜこんなにも話が合ったんだろう。
それは、僕らは広い意味で「同業者」だったからだと気づきました。
指揮のことを「コミュニケーションの芸術」と木許さんは言います。
自分が演奏を通じて表現したいことを理解し、実現のために奏者を導く。
ファシリテーションも、全く同じなのです。
自分が作りたい場を理解し、実現のために参加者を導く。
全ての場は自分だけでは成立しません。
特にファシリテーターが仕事をする場は、先生/生徒のように、教える側/教えられる側を切り分けません。「正しい人がいて、従う」ではなく、「一緒に見つけ出す、生み出す」場。その主役はファシリテーターではなく、参加者です。
演奏しないけれど導く指揮者と、ファシリテーターが似ているゆえんはここにあります。
あり方で示す技
共通点はもう一つあります。
主役が決まってる場ではないからこそ、合意を取り、その気にさせる必要がある。そして、それを言葉で示すこともあれば、自分のあり方で言外に示すこともあるという点です。
元々ピアノをやっていた木許さんは、大学1年の時、当時85歳の日本最高齢指揮者だった村方千之さんのレッスンを受けます。その技に衝撃を受け、村方さんのほとんど最後の弟子として、門下生になった。
その衝撃こそ、言葉ではない、あり方で示す技だと言います。村方さんが指揮台に立つだけで、一振りするだけで、オケ全体の空気が変わる。
「指揮の最上級の技術のひとつは、指揮しないことだと思います。」
と木許さんは言います。
「つまり相手に委ねること。委ねつつも、相手が指揮されていることに気がつかないぐらい自然な形で、想いを強く共有すること。能動と受動が一体になったような感覚。
control(支配)ではなく、invite(招き入れ)という言葉がふさわしいような、時間と空間の創造行為です」
まさに言葉ではなく、あり方。命令でも指示でもなく、言わずして導くこと。もはや魔術です。
ファシリテーションにおいて僕は、序盤で特に同じようなことを注意しています。
・場が始まる前から参加者と雑談をして、相手の雰囲気を掴みながらゆっくりほぐす
・始まった後も、本題に入る前に「自分がどんな人か」態度を含めて示す
・場の目的を伝える時に、参加者に何をあげられるか、何をお願いしたいかを丁寧に共有する
これも半分は言葉ですが、半分はあり方です。
やはり指揮とファシリテーションは「コミュニケーションの芸術」として繋がっていると思うのです。
木許さんに「指揮された」体験
前回記事にした「イケダハヤト×箕輪厚介対談in掛川」にも、木許さんは来ていました。
対談後に遅くまで、木許さんは僕にパワフルな激励をくれました。
「杉山くん、君には素質がある。勇気がある。
参加者がついていけてない難しい単語が出たら、すかさず割って入ったり。イケハヤさんと箕輪さんに挟まれて、普通ではできないよ。
でも、イケハヤさんや箕輪さんを怒らせるギリギリを攻めて欲しかったな。普段見れない二人の姿、言ったことのない本音がもっと出せたはず。
君ならもっとできる。」
なんとなく感じていた、あの対談の場での不完全燃焼感を、木許さんは明確に指摘してくれました。
なんだかやる気が出てきて、「次は攻めのファシリを身につけてやる」と思った。
まずは情報感度が足りない。役に立つメディアを絞って、知らないことに触れる習慣をつけようと動き出しました。
あの時、僕は木許さんに指揮されていたのです。
木許さんと話さなければ、あの体験を十分に活かすことはなかったでしょう。
それが、「人のハメを外す魔術を持った指揮者」、木許裕介さんなのです。
僕も自分のハメをもっと外したい。
そしてファシリテーションという魔術で、誰かのハメをもっと外して、良い場を作りたい。
違う領域で、でも同じ魔術の使い手たる木許先輩に、追いついて追い越したいと思います。
リツアンさんの次回イベントとして、僕と木許さんがコラボする予定です。
その様子も開催後にお伝えできたらと思います。
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文責)東大卒フリーランス・ファシリテーター 杉山大樹
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