2016.09.01 Thu |
データサイエンスの応用(派遣業編)Part1
データサイエンスやビッグデータという言葉が、最近はやっていますが、実際どのように使うのでしょうか?
いろいろな業種においてどのように使用していくのか、具体例をご説明していこうと思います。
データサイエンスは、業種・企業によって使い方がかなり異なりますが、
今回は、その中の一例(派遣業)を示したいと思います。
業種・企業によっても共通している部分が二つあります。
1つ目は、全体の流れです。
全体の流れは、
1、目的設定、2、計画作成、3、運用、4、評価、5、計画修正です。
二つ目は内容です。
会計・財務内容の最適化、マーケティング・広告戦略、顧客管理について共通しています。
今回は、派遣業でのデータサイエンスの応用を考えてみます。
説明の流れですが、
まず達成したい目標を設定し、各目標に関して深堀していく形式で行きたいと思います。
まず目標設定です。
ここが一番重要な段階です。
絶対的な解答はなく、経営者次第で決まります。
ここでは、深く考えず、
例えば、筆者の個人的な好みから、
目的1: 売り上げを上げる、
目的2: 利益(営業利益と経常利益)を上げる、
目的3: 社員の幸福度を上げる、
目的4: 顧客の幸福度を上げる、
目的5: 取引企業の売り上げを上げる、
としてしまいます。
(ここで、50年以内に時価総額100兆円の企業を作るだと目的も変わってくるわけですが、今回は小さくいきます。)
データサイエンスとビジネスモデルを理解していればしているほど、ここでの目的設定が具体的かつ適切かつ長期的視点なものになります。
では目的1からご説明していこうと思います。
目的1: 売り上げを上げる
派遣業の売り上げは、
売り上げ=社員数×稼働率×給与額×マージン率×継続率
で大まかに算出できます。
なので、社員数、稼働率、給与額、マージン率、継続率のどれかを上げれば、売り上げ向上につながるわけですね。
この一つ一つを増やすことを、データサイエンスを用いて、考えます。
まず
社員数
社員人数を増やすには、どうしたらよいのでしょうか?
いろいろ考えられます。
・口コミ
・IT系の勉強会を主催してそこで勧誘
・エンジニア社員の何人かがオープンソースコミュニティに貢献し、会社の名前を有名にする。
・他の派遣会社にない、特徴を持つことで、他の派遣会社からの乗り換えを増やす。
・FacebookやGoogleのサービスを利用して、適切な層に広告を出す。
・自らがネットメディアを持ちコンテンツマーケティングする。
・ハローワークに求人を出す。
いろいろ考えられますね。
考えられることを一通り実行してみて、どれくらいの予算で、どれくらいの効果があったかを、分類・回帰といった機械学習で解析することが考えられます。
もし今の社員さんの中に、理想的な人材が多数いれば、その人たちがどのような経緯で入社したか、解析してみるのもありですね。
ターゲットすべき層を定めるのに、すでに社員になってくれた人に、現在どのようなモチベーションで働いているか、この会社に入った理由など、いろいろアンケートを取ってみて解析することも考えられます。
基本的に、考えられることを、すべて挙げた後に、コストとリソース配分の兼ね合いから優先順位をつけて、検証段階に移していきます。
次に
稼働率
です。
在籍している社員がどれだけ、派遣先で働けているかの割合を示します。
稼働率は、取引相手(派遣先企業)が多いほど高まります。
また、取引先相手が求めるスキルを持った人材であるほど、派遣先との需要が合い、稼働率は上昇することが考えられます。
データサイエンスは取引相手先の候補を挙げるのに使用できます。
データの取得方法が少し難がありますが、どの企業において、どのような人材を募集しているか、他社の求人情報などから予測できます。
取引先相手が求めるスキルを持った人材の探索も可能です。
ターゲットを絞ったFB広告やGoogle広告、または、玄人がよく見るwebsiteや雑誌などへの広告掲載が考えられます。
雇用者の能力評価に関しては教師なし学習のクラスタリングや主成分分析により、可能です。
また、過去にどの企業にはどのような人が、高評価であったかをしっかり記録しておくことにより、どの企業がどのような属性・性格・能力の人をほしがる傾向があるかが分かります。
今、社員数、稼働率、給与額、マージン率、継続率のうち、稼働率まで来ました。
次は
給与額
です。
給与額を大きくするには、それなり額を支払える企業と契約する必要があります。
そのような企業の見つけ方にデータサイエンスを使用することが出来ます。
また、もしすでにそのような企業が多数あれば、それらの特徴量をクラスタリングや分類などによりとってきて、類似の企業を探すことが出来ます。
派遣従業員のスキルが高くなると、会社がより儲けるようにできるようになり、他の人を雇う必要性がなくなって、より高い給与を支払えるようになります。
このことから、社内の教育システムを完備するという解決策も考えられます。
次はマージン率です。
マージン率は、個別にことも可能ですが、ここでは一律としましょう。
ここもデータの力を用いて最適化することもできますが、ここでは、いじらないことにします。
最後に
継続率
です。
継続率が高まった方が、より売り上げが上がります。
データサイエンスを用いて、継続率を上げる方法を考えてみましょう。
まず、定期的に社員とコミュニケーションをとり、今の職場や仕事に関する本音を引き出すことが、重要です。
アンケートという形でもよいですが、飲み会という形で、いろいろ聞き題した後に、データ化するのもよいでしょう。単なるアンケートだと、情報収集にとどまりますが、飲み会やパーティーの形式で情報収集を行うと、社員同士がお互いに不満を共有でき、コミュニティへの帰属意識も高まり、solutionにもつながり一石二鳥です。
定期的にとったアンケートを解析するのは、データサイエンスの出番です。
たとえば、会社を辞めた人が、やめる前にどのような行動をとっているか、どんなことを言っていたか、家庭の変化などなかったかなど、アンケート結果や飲み会での会話から、解析して、今後に生かすことが可能です。
パフォーマンスの低下は、ウェアラブルディバイスによっても検知できるので、社員にApplewatchなどを装着してもらい、一定期間内の社員の活動量の低下を検知することで、社員のモチベーション低下などを検知することが出来ます。
また可能であれば、派遣先の周りの方々に定期的にアンケートを取りに行くまたは、派遣社員の仕事ぶりに関して感想をもらうというのも、派遣社員の現状を把握する良い手段です。
これで、
売り上げ=社員数×稼働率×給与額×マージン率×継続率
の右の各要素の説明は終わりました。
実はこれ以外にも売り上げを上げるために考えられることが二つあります。
一つ目は、
セグメンテーション(層別化)
についてです。
上の掛け算の式では量的変数(連続値)のみを扱いましたが、実際のデータには、質的変数(離散値)がかなりあります。
住所、スキル(扱える言語・使えるソフトウェア)、性別、学歴、趣味、性格などです。
これらの質的変数で場合分け(セグメント化)して、それぞれについて、売り上げを上げる方法について考えるというアプローチは、手間はかかりますが非常に重要です。
理想は社員一人ひとりそれぞれを解析していくことですが、社員の数が一定数より多くなると、一人ひとりに時間を割いていく時間がすくなくなってくるので、ある程度、社員をグループにまとめて解析する必要が出てきます。
二つ目が、
別のビジネスモデルを作ることです。
先ほどの、売り上げ=社員数×稼働率×給与額×マージン率×継続率
という式は、一つのビジネスモデルを指していました。
しかし何か、例えばシステム製作の外注を行ったり、メディアを作ってそこに広告を載せられるようになると、別の売り上げの式を作り上げることが出来ます。
さて、
目的1: 売り上げを上げる、
目的2: 利益(営業利益と経常利益)を上げる、
目的3: 社員の幸福度を上げる、
目的4: 顧客の幸福度を上げる、
目的5: 取引企業の売り上げを上げる、
のうち、
目的1: 売り上げを上げる、
まで、話し終わりました。
長くなってしまうので、今日はここまでにしましょう。
続きはPart2で!
ご質問があれば、
machine.learning.r@gmail.com
までご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
※注:この文章は筆者の独断と偏見で書かれたものであり、実際の派遣会社とは関係ありません。
鈴木瑞人
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程1年
東京大学機械学習勉強会
一般社団法人Bizjapan