2016.09.05 Mon |

データサイエンス応用(Airbnb業務)Part1

最近Uber, Lift, Airbnbといった、CtoCのビジネスが繁栄していますが、今回はそこにデータサイエンスを使用することを考えましょう。

一般の人の家をシェアするAirbnbというサービスを使ったビジネスを今回は考えてみます。

hotel
民泊業は、日本ではまだ法規制ができていないので、しっかりと、法律で許可されてから始めましょう。

さて目標設定してみましょう。
目標1:手持ちの物件の稼働率80%。
目標2 :利益(営業利益と経常利益)を増やす。
目標3 :優良物件の数を増やす。
目標4 :不良物件の数を減らす。
目標5 :顧客と近隣住民のトラブルを引き起こさない。
目標6 : 顧客に満足してもらう。

こんな感じに設定してみました。
運用を進めていく過程で、必要な目標が増えれば、追加で増やすものとします。
前回のデータサイエンス応用(派遣企業編)で、業種・企業によっても共通しているものがあると書きましたね。

まず、作業フローでした。1、目的設定、2、計画作成、3、運用、4、評価、5、計画修正。

もう一つは、内容でしたね。
会計・財務内容の最適化、マーケティング・広告戦略、顧客管理について共通しているということでした。
なので、前書いた記事と一部重複します。

それでは、目的1から行きましょう!

目的1:手持ちの物件の稼働率80%

no-vacancy

稼働率というのは、この場合、月あたりの物件が使用される日数の割合です。
手持ちの物件の稼働率にプラスに影響を与える要素から式を作ってみましょう。

手持ちの物件の稼働率 =

①物件の地理的魅力×②物件の内装的魅力×③宿泊価格 × ④外国からの旅行客数 × ⑤顧客評価 × ⑥メッセ―ジ対応の迅速さ・丁寧さ×⑦リスティング順位 ×⑧メディア露出 ×⑨対象顧客への広告リーチ数 ×⑩新規顧客の獲得数×⑪リピート数×⑫顧客が部屋使用後に部屋についてツイートで呟いた回数 ×⑬ブランディング ×⑭円安度合×⑮連続宿泊数×⑯現地の観光サービス×⑰空港または駅までの迎え×⑱日本の文化体験(一般家庭のもの)の有無 ×⑲駐車場の有無 ×⑳アカウント写真の見栄えと性別 × ㉑物件の近隣での競合物件の少なさ・・・(ア)

次に考えられるセグメント化(層別化)を挙げてみます。

market-segmentation2

違う対象に対しては、できるだけ別個に考えた方がよいためです。
まず顧客に対して層別化してみます。
A, 日本人顧客か、外国人顧客(観光客)か
B, 初めてAirbnbを利用する客かリピート客か
C, 初めてAirbnbを利用する客か同じ物件を再度利用する客か
D, 宿泊目的が、旅行かイベントか、出張か
E, 宿泊個人かカップルか友人同士か家族とか
F, 顧客の年齢層:10代か20代か30代か40代か50代かそれ以上か
G, Airbnbの物件の探し方は:スマホ経由かPC経由か

それでは(ア)式の各項目(①~㉑)について考えていきましょう。時折顧客のセグメント化を考えていきます。

①物件の地理的魅力

location

まずセグメント化を考えないで話を進めると、現在から前後3か月くらいで、稼働率のよい物件をリストアップし、その地理的条件を洗い出します。実際にその場に足を運んでみて調査するのもありでしょう。

ここでの情報の集め方は、web scrapingが理想ですが、手作業になる可能性もあります。本当に客入りのよい物件に関しては、実際に物件を利用してみることも重要でしょう。

hotel-staying

実は、稼働率の良い物件のwebpage調査・物件訪問調査・物件使用調査で集めることができる情報は、①物件の地理的魅力だけでなく、②物件の内装的魅力、③宿泊価格、④外国からの旅行客数 、⑤顧客評価 、⑥メッセ―ジ対応の迅速さ・丁寧さ、⑦リスティング順位 、⑧メディア露出、⑬ブランディング、⑮連続宿泊数、⑯現地の観光サービス、⑰空港または駅までの迎え、⑱日本の文化体験(一般家庭のもの)の有無、⑲駐車場の有無 、⑳アカウント写真の見栄えと性別 、 ㉑物件の近隣での競合物件の少なさ、など大部分を占めます。

どれも適当な顧客層にマーケティングするために必要な情報です。重要なものが分かれば、そこを重点的に対策する必要があります。

 

さて話を戻しましょう。

①物件の地理的魅力に対して、A~Gまでの間で、効果がありそうなセグメンテーションはどれでしょうか?手元にすでに宿泊データがあれば、それをもとに、どの顧客層に対して、どういった地理的条件が受けがいいのかを導き出し、適切なマーケティング・広告戦略につなげます。手元に宿泊データが十分になければ、一般常識から仮説を立てて、その仮説をなんらかの手段で検証・裏付けしていきます。

たとえば、顧客がD、 宿泊目的が、旅行かイベントか、出張かによって、地理的魅力が影響することはありそうです。何かのイベントで来た場合は、その会場に近ければ近いほど良いわけです。

event

もし、東京ビックサイトに近い物件でイベント目的の顧客が多い場合は、イベントに来る人に適した部屋にするべきです。また、周りでイベントがよく開かれている物件には、そのイベントのページで広告を出したり、そのイベント名で検索した人に広告を出したり、そのイベント名をハッシュタグにしてFaceBook投稿またはTweetしている人に広告が配信されるようにすればよいといえます。

物件の地理的魅力は、運営側にとって、単に初めの物件選びの時だけ注意すれば良いものではなく、マーケティング上重要なものであり、また日々変化するため、できるだけリアルタイムで把握しなければいけない情報です。物件の地理的魅力は、F, 顧客の年齢層(:10代か20代か30代か40代か50代かそれ以上か)で分けることも重要です。特定の場所に位置する物件は特定の年齢層の人が好むかもしれません(年配者ほど浅草を好むなど)。顧客年齢情報は、それほど得やすいわけではありませんが、もし得られてなんらかのルールが抽出できれば、Google, Twitter, Facebookでの広告配信指定の一条件として使用できます。

順番が前後しますが、顧客セグメントのA, 日本人顧客か、外国人顧客(観光客)かにおいて、好む宿泊先が違うのは容易に想像がつきます。外国人は新宿、東京など有名な場所を好むのに対し、日本人はより多くの選択肢があります。

Tokyo

なので、GoogleAdwordsの設定において、新宿の物件は、Airbnb  Tokyoで登録しておけばいいのに対し、外国人が来なさそうな場所の物件に対しては、日本人をターゲットにして、広告配信Areaを北海道、沖縄など地方に選択、検索wordを、東京、Airbnb、格安などと指定するとよいでしょう。年齢、性別まで指定できればよりターゲットを絞った広告となります。もし、その物件のポテンシャルを正確に推し量れている場合は、類似のポテンシャルを持ち、かつ客入りのよい物件の内装をまねてもよいかもしれません。新規性を求めるのならば、同様のポテンシャルを持ちかつ客入りの良い海外の物件の内装をまねるのもありです。

次に

②物件の内装的魅力

に移ります。

内装

①で見たように、物件によって、現状の顧客層やポテンシャルのある顧客層が違っている可能性があることがいえます。なので、例えば、客入りが良い物件の内装をそっくりそのまままねたからといって、客入りが良くなるかというとそうなるとは限りません。物件の地理的特徴を理解し、どのような年齢・旅目的・国籍の人に対してポテンシャルがあるかを理解したうえで、それに適した内装・価格にして、その上で、特定の顧客に対してマーケティング・広告していきましょう。過去に特定の客が入っていたからといって、それをうのみにせず本来のポテンシャルをしっかり考えたうえで、戦略を立てましょう。

顧客セグメントの話に戻りますと、②物件の内装的魅力はD, 宿泊目的が、旅行>イベント>出張の順で重要と考えられます。もしも、出張が主な旅目的の物件があった場合、内装は控えめにしてコストを押さえ、GoogleAdwordsでは、“場所”“格安”“出張”などの検索ワード、年齢20-40歳、性別男性などと設定すればよいわけです。もし海外からの旅行客が多ければGoogleAdwordsでの設定を、国籍“アメリカ”または“ヨーロッパ”、検索ワードをTokyo, Airbnb, cheapなどとすればよいでしょう。もし中国人が多ければ、百度や微博、などに中国語のキーワードで広告を設定するとよいでしょう。

 

③宿泊価格

ですが、これはできるだけ、物件や時期によって最適化すべきでしょう。

物件と特徴によって合わせるのが理想的ではありますが、その算出式を自動的にはじき出すことがリソースがなくて出来ないなら、あまり変えないのもありです。広告に値段を出す場合そちらも変えなくてはいけなくなるため。

次に、

④外国からの旅行客数

は、特に外国人旅行客が多い物件において大きく影響します。基本的には前年度通りの人数の増減となることが予想されるため、それに変動させて値段を調整することが考えられます。また、外国人旅行客が増えたからといって、日本のすべての場所で外国人旅行客が増えるとは限りません。しっかり微博やTwitterなどで、外国人がどのような行動をしているか(何を呟いている人がどんなルートを通ってどこに滞在しているか)、把握しましょう。

たとえば訪日外国人観光行動分析サイトinbound insight ( http://inbound.nightley.jp/ ) などがあります。訪日外国人に関する行動に関しては様々な解析事例があるので、しっかり研究しましょう(Twitter  訪日外国人  観光 で検索してみましょう)

⑤顧客評価

に関しては、スターの数とコメントの数と種類(言語)、コメントの長さなどを、最適な形で、そろえましょう。客入りのよい物件のコメントをテキストマイニングして、出現単語の数をカウントしてみるだけでも、優良物件の特性がつかめるかもしれません。自分の物件と競合の物件のカスタマーレビューを比べたいときはテキスト解析しましょう。ここを利用します。UserLocal (http://textmining.userlocal.jp/home/multi_files)

出てくる結果は、4つあります。

一つ目は、ワードクラウド:スコアが高い単語を複数選び出し、その値に応じた大きさで図示しています。色が品詞に対応しています。

二つ目は、特徴語マップ:横軸は単語がどちらのファイルに偏っているか、縦軸はその単語が特徴的かどうかを表しています。

三つ目は、ネガポジマップ:横軸は単語がどちらのファイルに偏っているか、縦軸はその単語がポジティブかネガティブかを表しています。

四つ目は、単語の出現比率:出現回数の多い単語を選び出し、それらが2つのテキストにおいてどれぐらいの比率で出現するかをグラフにしています。

です。

単一のテキストファイルだけの情報を解析したい場合は、以下でできますUserLocal( http://textmining.userlocal.jp/ )

⑥メッセ―ジ対応の迅速さ・丁寧さ,

これに関しては、競合相手のものはwebpageで見れます。メッセージ対応が迅速かつ丁寧であることに越したことはないですが、もしこれを少しでも自動化したい場合は、WatsonのAPIを使えばできるかも(時間的コストが多少かかりそう)しれませんが、これは時間と技術的余裕がある方にのみおすすめします。

 

⑦リスティング順位:

リスティング上位に位置する物件やアカウントの特徴を得られる情報から推定してみて、マネできるところはまねる。

⑧メディア露出:

自分で自分の物件だけでNAVERまとめ作るなど。もしくは、自分でメディアサイトを運営するなど。

⑨対象顧客への広告リーチ数:

これに関しては、競合のサイトでどこからの流入が多いかを調べる。詳細はたとえば、https://www.marketingbank.jp/special/cat05/210.php に詳しく書いてあり、GoogleAnalyticsやYahoo!JAPAN アクセス解析、User Local スマートフォン解析、Ptengine、UserHeatで可能。無料でかなりできる。うまくいっている競合の戦略が分かったらそれを自分のサイトにも導入する。

⑩新規顧客の獲得数:

この値を増やすためには、適切なマーケティングと広告を打つことを考える。

⑪リピート数:

まずは現状どれだけのリピートがあるのかを、自分の物件で確認する。他の業者が持っている物件でも聞けたらきき、調べられれば調べる。リピート数を伸ばすには、しっかり問題なく使ってくれた顧客に対して、2回目以降の利用に割引を導入したりする。

⑫顧客が部屋使用後に部屋についてツイートで呟いてくれる回数:

顧客が部屋使用後に部屋についてツイートで呟いてくれるとそれを見た人が新たに物件を使ってくれるかもしれないので、ツイートやFBに投稿してくれれば、割引という条件をあらかじめ書いておくとよいでしょう。

長くなってしまいそうなので、今日はここで終わりにしようと思います。

 

筆者がAirbnb業に関して詳しくないため、浅い考察となった部分もあるのと、データサイエンスの詳細を知らない方からすると、技術的な用語でよくわからないことも多かったかもしれませんが、何か新しく知ったことがあれば幸甚です。

ご質問ご指摘があれば、
machine.learning.r@gmail.com
までご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
※この文章は民泊業を推奨していません。あくまでデータサイエンスを使えるようになるとどのような物事の考え方になるのかを示したものです。

鈴木瑞人
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程1年

東京大学機械学習勉強会

一般社団法人Bizjapan

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