2016.12.01 Thu |
忘れられる権利はどうやって生まれたのか
企業が持つ大規模データの中には、法規制の影響を受ける「個人情報」が多く含まれることもあり得ます。
前回はEU(ヨーロッパ連合)と米国の個人情報保護の基本的考え方を比較したので、今回は前者のEUについてより深く見ていきましょう。
EUの個人情報保護においてやはりキーワードになるのは、「忘れられる権利(right to be forgotten)」でしょう。この言葉、知っている人は多いと思いますが、何から「忘れられる」こと、つまりどこから情報が消え去ることを指すのでしょうか。
正解はGoogleやYahoo!といった検索エンジンサイトです。インターネットの世界全てから「忘れ去られる」わけではないのです。ウェブサイトそのものから情報が消えるわけではありませんが、多くのデータは検索サイトを介されて新たに発掘されます。そのため、発見されにくくなるという意味では「忘れ去られる」という表現は正しいと言えるでしょう。
自身のデータを検索エンジンから削除するようにという裁判はいくつかあったのですが、立法までの動きにつながったのは2011年11月に出た判決が契機でした。
訴えたのはあるフランスの女性。彼女が若いころにただ有名になりたいという理由で一度だけアップロードしたヌード写真が、名前とともにネット上に流出され続けていて、彼女はろくな仕事にもつけずにいました。彼女はグーグルにこの情報の削除を求め、グーグルに勝訴したのです。
この判決が契機となり、EUでは「データ保護規則案」の第17条で「忘れられる権利」を明示したのです。(2014年には「忘れられる権利」という用語は「削除権」という言葉に修正されています。)
その後、EUでは「私の情報を検索エンジンから消して欲しい」という声が相次いでいます。しかし知る権利との兼ね合いがあるため、全ての削除要請に従うわけにはいきません。次回がその2つのぶつかる権利をどのように守っているのか見てみましょう。