2017.01.20 Fri |
Open Science(生命科学分野)2
この記事はOpenScience(生命科学分野)1の続編です。
まだ、OpenScience(生命科学分野)1を読んでいない方はそちらをご覧ください。
2017年1月現在、The Open Science Prizeというコンテストが開催されています。
https://www.openscienceprize.org/
現在6つのチームが出場しており、前回は3つのチームのプロジェクト内容をご紹介しました。
今回は前半扱えなかった後半の3つのプロジェクトのうちの1つについてご紹介したいと思います。
プロジェクト名は以下です。
4, OpenAQ: A Global Community Building the First Open, Real-Time Air Quality Data Hub for the World(世界のために開かれた現時点の空気の質データハブを作るプロジェクト)
https://openaq.org/#/?_k=4jy6ly
【プロジェクト内容】
コンセプトはかなりシンプルで、世界中のあらゆるところの空気の汚染度のデータを集めてみんなが見れるようにするプラットホームを作りましょうというものです。空気の汚染度のデータから、健康に関する研究を促進するのが長期的な目標のようです。
すでに世界43か国、4752箇所の地点から、約3千6百万個のデータを集めたそうです。データは政府が定める水準または研究水準を満たすデータ源から集めたそうです。
集めているデータの内容は、PM2.5, PM10, オゾン(O3), 二酸化硫黄(SO2), 二酸化窒素(NO2), 一酸化炭素(CO), 黒色炭素(BC)だそうです。
自分が興味ある国でのそれらの空気中の濃度を下記URLから簡単に調べることができます。
https://openaq.org/#/locations?&_k=y9iflz
ここでは、大気汚染で有名な中国をまず調べてみましょう。
Filter LocationsでChinaを選択、
Valuesで、PM2.5からBCまですべてを選択して、右のBeijing US Embassy(在中国アメリカ大使館)のView Moreをクリックしてみましょう。
https://openaq.org/#/location/Beijing%20US%20Embassy?_k=ajo6zd
一応7種類すべての物質に対して、結果を出すように指示しましたが、PM2.5しか出ないあたり、在中国のアメリカ大使館では、これしか観測できていないみたいです。
ただこれだと、この値が大きいのか小さいのかわかりません(個人的な感覚としては微小粒子が16µgというのは相当な量と想像できますが)。なので、世界中のPM2.5の値を可視化してみましょう。その機能もwebsiteにあります。
https://openaq.org/#/map?_k=7o675g
OpenAQのwebsiteの上の方のMAPタブをクリックすると上のように、各観測地点での、観測地の値が色であらわされます。先ほどの北京の16µgは緑色に近い青色ですね。赤いところが特に濃度が高いようです。
マップ全体を見ると、インドが赤い地点が多く大気汚染が深刻であることが分かります。確かに最近よくインドでの大気汚染のニュースを目にするわけです。ではインドの部分を拡大してみましょう。
https://openaq.org/#/map?_k=7o675g
この地図は、日本の観測値は示していませんが、日本は値を測定してはいるので、たぶん外国人が日本語のwebpageを読めなかったか、日本は空気がきれいなので掲載する優先順位が低かったと個人的に推測しています。
さてインド、バングラディッシュで赤とオレンジが多いのがよくわかりますね。地図の各点をクリックしても値は示されないことから、上のDataタブ→Countries→India→Anand Vihar in Delhiを選択すると、PM2.5が140µg/m³ と出てきます。これは北京の9倍です。いくつか調べてみましたが、140µg/m³ 越えが結構あるようです。
https://openaq.org/#/location/Anand%20Vihar?_k=7fo8nh
あとこのwebsiteは、APIも提供していて、他のwebsiteやアプリにこの値をリアルタイムで持ってくることが可能みたいです。上のDataタブからAPIを選択すると、以下のように詳細が書いてあります。CitiesやCountriesを指定してほしい情報をとれるとのことです。
https://docs.openaq.org/
OpenAQのシステムとしては、空気の汚染情報が載っているwebsiteからwebスクレイピングしてきて、その値を表示しているみたいです。
今のところは、誰かが観測したものを集めて表示するだけの機能になっていますが、それだと現状の掲載数が限界に近いと思うので、今後は、この組織が自ら観測機器を各国に設置して、掲載情報を増やす方向に行くのではないかと思います。楽しみですね。
今回はここまで。
鈴木瑞人
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程 1年
東京大学機械学習勉強会 代表
NPO法人Bizjapan