2017.01.21 Sat |

Open Science(生命科学分野)4

この記事は、以前に書いた記事Open Science(生命科学分野)の1,2,3の続編です。
そちらに目を通してない方はそちらからご覧ください。
Open Scなience(生命科学分野)1
http://ritsuan.com/blog/5256/
Open Science(生命科学分野)2
http://ritsuan.com/blog/5281/
Open Science(生命科学分野)3
http://ritsuan.com/blog/5298/

2017年1月現在、The Open Science Prizeというコンテストが開催されています。
OpenScience2https://www.openscienceprize.org/

現在6つのチームが出場しており、過去の記事、第一回、第二回、第三回で、5つのチームのプロジェクトをご紹介し終えたので、今回は最後の1チームのプロジェクトについてです。

6, OpenTrialsFDA
まずは、プロジェクトのプロトタイプを見てみましょう。
OpenFDAhttps://fda.opentrials.net/search
このwebsiteの青いところに書いてある通りFDA(アメリカ食品医薬品局)の公開書類を”名前”や、”テキスト”や、”キーワード”で検索することを可能にするプロジェクトとわかります。
【プロジェクト内容】
FDAの文書には、学術雑誌には公開されていない臨床試験のデータを多く含み非常に有益であるにも関わらず、目的の情報を見つけるのが著しく困難である。
本プロジェクトは、誰もが目的のFDA文章を、キーワードなどの条件から簡単に見つけ、利用することを可能にすることが目標、
とのことです。

それでは実際に、プロトタイプを使用してみましょう。
その前に、どんなFDA文書を探すかですが、以下のAFP通信社の記事に載っている、頭のよくなる薬と以前呼ばれていた、アンフェタミン(amphetamine)について調べてみましょう。

”米大学生の間で「頭の良くなる薬」が流行、将来は試験前にドーピング検査?”
http://www.afpbb.com/articles/-/2649076?pid=4710758

下のように、”Drug, ingredients, or other keywords”のところに”amphetamine”を入力します。
FDASearch

すると以下のように結果が出てきます。
99個ヒットしたようです。
amphetamine1
いろいろ、ありますが、それなりに新しそうなものの中で、内容がまとまっていそうな、以下のSummaryReviewを選択しましょう。
summaryReviewさてこの中に、どのくらいこの薬で頭がよくなるかについての情報はあるのでしょうか?
SumaryReviewをクリックすると、以下のような画面になります。
SumaryReviewContenthttps://www.documentcloud.org/documents/3187900.html

6ページしかないので、すぐ見つかるでしょう。ただ、サイト内検索はできなそうなので手作業ですが。
。。。。
。。。。
。。。。
残念ながらこの薬はADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療目的の薬であり、頭がよくなることについては情報がありませんでした。。とりあえずADHDの治療薬としては効果があるので薬として承認しますという文書でした。
たしか聞いた話だと、FDAが承認した薬で、”頭がよくなる薬”はないんですよね。。。
頑張って探せば”副作用”として記述されている可能性も無きにしも非ずですが。。
たぶん記憶力増強については、普通に学術誌読んだ方がありそうですね。
これとか、、
Takeuchi, T., Duszkiewicz, A. J., Sonneborn, A., Spooner, P. A., Yamasaki, M., Watanabe, M., Smith, C. C., Fernández, G., Deisseroth, K., Greene, R. W. & Morris, R. G. M.: Locus coeruleus and dopaminergic consolidation of everyday memory. Nature, 537, 357–362 (2016)
http://www.nature.com/nature/journal/v537/n7620/full/nature19325.html

ということで、OpenTrialsFDAの紹介を終えたいと思います。

ちなみに現在、今までご紹介した6つの中からfinalistとして、3つが選ばれています。

その3つとは、

MyGene2: Accelerating Gene Discovery with Radically Open Data Sharing

OpenTrialsFDA

Real-Time Evolutionary Tracking for Pathogen Surveillance and Epidemiological Investigation
です。
脳科学のプロジェクト2つと大気汚染モニタリングのプロジェクトが落選してしまったようです。
残ったプロジェクトはより緊急性が高いものが多いように思います。
MyGene2: 希少疾患の原因究明
OpenTrialFDA: FDAでの新薬の承認過程のデータを使用することでの新薬創成
Real-Time Evolutionary Tracking:致死性ウイルスによる感染症の撲滅

惜しかったのは大気汚染のモニタリング情報のシェアリングかなと思います。大気汚染で苦しんでいる人は多いはずなので。ただ、現地にいる人はわかったところでどうしようもない人も多いとは思いますが。

以上で、The Open Science Prizeのシリーズを終えたいと思います。
今までは単にデータを持っている組織が大量のデータを公開するということが”Open Data”として注目を浴びていましたが、現在はそれらの情報を組み合わせて特定の目標を達成するという次の段階に入ったのだなと思います。

話は変わりますが、現在日本は、とりあえずデータを公開しましょう、という段階です。これが特定の目的をもって、公開されているデータを集め、シェアしようとなってきたときが、本当のOpenDataの力が発揮されるときなのかなと思います。

以上。

鈴木瑞人
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程1年
東京大学機械学習勉強会 代表
NPO法人Bizjapan

 

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