2017.07.04 Tue |
ドローンと人のこれから
1. はじめに
Amazon社が2013年に公開した動画は世界中に衝撃を与えました。
この動画はAmazonで商品を注文するところから始まります。そして、商品がマルチコプター型のUAVによって運送され、最終的に庭に届けられるという内容になっています。この動画をきっかけにして、ドローンに対する認知が一気に広がりました。
また、賞金1億円超のドローンレースがドバイで開催されるなど、今やドローンエンタメ産業は成長が止まりません。(Bloomberg Businessの紹介する動画が非常に面白いので是非見てみてください!)
一方日本国内のドローンに対する認知といえば、善光寺でのドローン墜落事件、総理大臣官邸屋上でのドローン発見など、なんだかあまりよくない事に関わっていそうなイメージもあります。
世界的に見ても、ISが偵察のためにドローンを用いている事や、さらにそういったテロリストの撲滅のために軍が無人機で無差別的に爆撃を行っているなど、ドローンに対してのイメージは必ずしも良いものではありません。
この記事ではそういったドローンの持つ現状と課題、可能性をより大きな視点から紹介していきたいと思います。
2. ドローンとは? – 自律飛行の可能性
Oxford英英辞典によると、UAV(ドローン)とは”an aircraft piloted by remote control or onboard computers”、日本語で訳すと遠隔操縦もしくは搭載されたコンピューターによって航空される飛行体です。
また、自律飛行とは自分自身で判断して飛行するということです。(言葉のまま)そのため、ドローンが何かしらの形で自動で飛ぶようになったらドローンの自律飛行となります。(ドローンにコンピューターを載せることや、ドローンに搭載する形ではない自律飛行も考えられます。)
※ マルチコプター…3枚以上の回転翼を持つ機体を指す。
※ UAV … Unmanned Aerial Vehicleの略、人が乗り合わせない機体を指す、小型無人機。ドローンがより民間で用いられるのに対し、UAVは政府などの公式文書にみられる傾向がある。また国によって呼び名は異なる。
さて、自律飛行は現在盛んに研究開発、実証実験が行われている分野の一つでもあります。(そもそも何をもって自律飛行とするかは議論がある部分です。)そして、自律飛行を実現するもっとも重要な要素の1つに、「着陸座標や自分の現在地座標を正しく認識すること」があげられます。今回はこの座標認識を主に2つのタイプに分けて把握してみます。一つ目のタイプはGPSなどの測位システムを用いることで、座標を特定するタイプ。もう一つのタイプは何かしらのセンサーを用いて位置を認識するタイプです。
GPSを用いた典型的な例としては、ドローン最王手のDJI社などのドローンにも応用されており、操縦者は飛行範囲を指定すれば、自動で飛行ルートを設計してくれます。(すごい( ゚д゚)! ) センサーを用いるタイプとしてはNVIDIAなどが開発しているドローンが挙げられるでしょう。このドローンの場合、カメラなどで自身や木々の位置関係を認識しつつ森の中を進んでいきます。
また、これからドローンが様々な場面で使われる上で、ドローンの自律飛行の技術的革新は必要となっています。理由として、人や建物が多い場所でドローンを飛ばす場合、何か事故が起こってしまうと、重大な事故になりかねません。(特に大型のドローンは数十kg以上になります。)そのため、即座にモノを認識し避けられるような技術や数センチ、数ミリ単位で厳密に着陸するドローンが今求められています。現状のGPSや地図データの精度を考えるとこういったニーズにもっとも効率的に答えられるのはセンサーで認識する形のドローンです。(もちろんGPSとセンサーを組み合わせることも可能です。)
私が調べた限り、現状離陸・着陸の指示まで完全に自動で行うドローンで実用化されているものはないのでこれからが楽しみです。(例えば、インターネット上で商品が注文されると勝手にドローンが飛んでいって配送する、赤外線で何かを感知した情報がドローンに伝達され該当地点まで自動で飛んでいくなど。)
こういった技術が発展すれば、ドローンが複数台同時にクラウド上で管理され、複数目的地を同時に処理し、もっとも効率よく飛行、配送していくことが可能になっていくと思います。(UTM, Unmanned Aerial System Traffic Managementの考え方に通じます。ご興味ある方はご自身で調べてみてください!)このように、これからはドローンや飛行システム自身が考え、かつ他のIoT機器などと連携していくことが可能になっていくと思われます。
3. ドローン法制 – グローバルな視点で考察する
現状、各国で統一されたドローン法制は存在しません。そのため、それぞれの国が独自の法制を導入しています。
日本の場合、特別な許可・申請がない限り、200g以上のドローンを飛ばす場合人口集中地区の上空や発電所や空港付近の上空などの一部の区域をのぞいた150mよりも低い空域での飛行、日中の目視内飛行、飛行の都度の飛行申請などが義務づけられています。申請の際も郵送費、印刷費などを除きかかりません。(詳しくは国土交通省の無人航空機の飛行ルールを参照ください。)
アメリカの場合、250gから25kgのUAVの場合、人口集中地区の上空や発電所や空港付近の上空などの一部の区域をのぞいた400フィート(約120m)よりも低い空域での日中の目視内飛行であれば、オンライン上での機体登録により飛行可能です。申請料は5$かかります。商業利用については、パイロット資格習得(ドローン用のもの)などが必要になります。(詳しくはFederal Aviation Administrationの該当ページをご参照ください。)
日本とアメリカを単純比較すると、日本の申請は個人利用に対して比較的難しく、商業利用については普通、もしくはやりやすいと思われます。世界の国ではまだドローン法制が整備されていなかったり、申請料が非常に高額な国もあります。こういった法制度は産業育成の面で大きな影響を与えるため、法制度の整備はいま世界的に議論の最中です。いつかはドローン法制が世界的にある種の統一原則をもって定められ、ドローンの行き来が飛行機のようになる時代がくるのでしょうか
4. ドローンを利用した実例 – 人々の生活を変革しうるドローン活用
ドローンの技術や規制だけでは味気ないので、せっかくなのでドローンを用いた実例を取り上げてみようかと思います。今回ご紹介するのは、Facebook社のAquilaとZipline社の事例です。
Facebook社の”Aquila”は非常に有名なドローンの事例です。AquilaはBoing 737よりも長い数十メートルものウイング長を持つブーメランのような超大型のドローンです。Auilaは非常に省電力、小重量の設計がなされており、一回の飛行で数ヶ月、高度60,000フィート(18km)付近で艦隊を作って飛び続けます。Aquilaには高速Wifi設備が搭載され、インターネットインフラを発展途上国や災害時提供しようと試みています。
なんとも夢があるプロジェクト!ご参考までにこの動画で紹介されています!
Zipline社は医療品配送をてがけるカリフォルニア拠点、ルワンダ国内で活動するドローンスタートアップです。投資家の面々もそうそうたるもので、シリコンバレーのVCや大学ベンチャーファンドなどが名をつらねます。彼らはGPSを用いた自律飛行を導入しており、国内の20以上の病院拠点に対し、血液輸送を行なっています。道路インフラなどが整備されていない発展途上国において、ドローン物流は大いなる可能性を秘めています。特に医薬品など緊急のニーズがあるものについては、尚更です。
5. 終わりに – ドローンと人のこれから
まとめると、ドローンは各産業に適応する、そして新たな産業を作る上で、大きな可能性を秘めており、人々の生活を変革する手段となりうると思います。ただ、そこには重大な課題が2つあると思っています。
1つ目の課題として、多くのイノベーションが求められているということです。自律飛行の技術革新だけではありません。例えば、既存の電池では約数分から数十分のみしか航続できません。それらを打開する長時間持つ電池、ドローンに搭載可能なそもそもモーターを使わずに住むような手段(エンジンなど)が求められています。また、ドローンのサイバーセキュリティも大きな問題となっています。ドローンによって収集された膨大なデータは個人情報や機密情報を多く含みます。現在ブロックチェーンを利用した対策などが模索されています。こういったものはいくつかの例ですが、現在ドローン技術では多くのイノベーションが必要になっています。
2つ目の課題として、ドローン技術の利用方法についてです。最終的にドローンを作り使うのは人間です。ドローンを用いれば簡単に人を殺すことができます。インターネット同様、ドローンはそもそも軍事技術として発展してきた歴史が大きいです。それらの技術は私たちの生活を改変するために用いられるべきであって決して私たち自身を脅かすものになってしまってはいけません。
1つ目の課題にはブレークスルーが存在します。しかし、2つ目の課題には明確なブレークスルーが存在しないため、ドローンに携わる人は常にその利用方法を意識しつつ、社会のためにドローン技術を活用していくべきではないでしょうか?
東京大学学部生 青いプリンス