2018.06.07 Thu |
若い子たちへの教育方法(AI編)その3
前回、前々回に引き続き、
「AI教育」について書いていきたいと思います。
前々回では、
1, AIの技術進歩速度の観点から
2, ビジネスマン・エンジニアという職種による違いの観点から
前回では、
3, ビジネスの開発・運用という立場から
4, Amazon、Tencentといった、海外のIT企業の今後という観点から
書きました。
今回は、
5, 働き方改革という観点から
6, 学ぶ側がどうしたらモチベーション高く学び続けることができるかという観点から
「AI」をどう使うことを目指すか、どうすればAIを学び続けられるか、を書いてみたいと思います。
まずは、
5, 働き方改革という観点から、「AI」をどう使うことを目指すか、を考えてみます。
「働き方改革」といったときに大きく分けて以下5つの場合があると思います。
それぞれ個別に考えていきます。
あ) 少子高齢化による人手不足を背景として生産性の向上させたい場合(コンビニや飲食店など)
い) ビジネスモデルが弱体化して既存のビジネスモデルに使う人件費を経営者が抑えたい場合(銀行など)
う) 労働者が働く時間を減らして、趣味や家庭のための時間を増やしたい場合(経営が安定している大企業など)
え) 長時間労働が常態化していて、過労死が出ており、労働時間削減をしなければならない場合(大手広告代理店や医療業界など)
お) 会議が多かったり、無駄に長く働く習慣がついてしまった企業文化を経営者が直したい場合(経営が安定した中小企業や大企業など)
あ) ~お)のうちのどの「働き方改革」を狙っていくかで、学ぶべきAI技術の方向性が異なってきます。
一つずつ見ていきましょう。
あ) 少子高齢化による人手不足を背景として生産性の向上させたい場合(コンビニや飲食店など)
での「働き方改革」をする上で、どのようなAI技術を学ぶべきかについて書きましょう。
・AmazonGoのような無人コンビニ店舗を作る方向で学ぶ(画像データ処理、センサーデータ処理など)。
・PepperやSpotMiNiを活用する方向で学ぶ(ロボットが人と意思疎通する手段。自然言語処理、強化学習、汎用人工知能。)。
・日々の単純繰り返し作業削減のために、ExcelのVBAによる自動化、RPA(Robotic Process Automation)ツール導入方法を学ぶ。
い) ビジネスモデルが弱体化して既存のビジネスモデルに使う人件費を経営者が抑えたい場合(銀行など)
での「働き方改革」をする上で、どのようなAI技術を学ぶべきかについて。
・日々の単純繰り返し作業削減のために、ExcelのVBAによる自動化、RPAツール導入、チャットボットによる顧客対応自動化、などが考えられます。
う) 労働者が働く時間を減らして、趣味や家庭のための時間を増やしたい場合(経営が安定している大企業など)
・ExcelのVBAでの自動化、RPAツール導入、チャットボット導入
・GSuiteによる、社員の空き時間共有と機械学習機能を用いた会議設定の自動化(GSuiteの使い方を学ぶ)
・GSuiteによる、スライドデザインの自動化機能を用いたスライド作成時間の短縮(GSuiteの使い方を学ぶ)
・営業支援ツールの導入による営業業務の効率化
え) 長時間労働が常態化していて、過労死が出ており、労働時間削減をしなければならない場合(大手広告代理店や医療業界など)
このような、根本的に業務量が多い業界では自動化ツール導入やAIによる働き方改革で著しい成果を出すことは難しいですが、何らかの自動化やAI導入が有効な場合もあるかもしれません。ぜひ現場で何ができそうか考えてみてください。
お) 会議が多かったり、無駄に長く働く習慣がついてしまった企業文化を経営者が直したい場合(経営が安定した中小企業や大企業など)
・視点の動きやマウスの移動距離、キーボードのタイプ数、アプリの起動状況などの情報を使用した、各個人のパフォーマンス可視化ツール導入(既存のツールの使い方を学ぶかツールをゼロから開発する)。
・不必要な会議をなくすための手法を学ぶ。または、AIを用いた不要な会議の検出方法を学ぶ。(既存のツールの使い方を学ぶかツールをゼロから開発する)
・短い時間で集中してタスクをこなすのに必要な条件・環境を個人個人に推薦する方法(AIツール)を学ぶ。(既存のツールの使い方を学ぶかツールをゼロから開発する)
・体調が悪く働いてもパフォーマンスが低いときは休むことを推薦する方法(AIツール)を学ぶ。(既存のツールの使い方を学ぶかツールをゼロから開発する)
以上で、「働き方改革」という観点から、今どのようなAI技術を学ぶべきかということを挙げました。
本来は、目標とすべき到達点だけでなく、それに到達するには、何をどの順で学んだらよいかまで書くべきですが、
一つの目標につきかなりの記述量になるので今回は書くのをやめておきます。気になるところがあれば筆者(鈴木瑞人)まで連絡ください。(machine.learning.r@gmail.com)
それでは、最後に、
6, 学ぶ側がどうしたらモチベーション高く学び続けることができるかという観点から
「AI教育」のあるべき姿を書いてみたいと思います。
僕の今までの経験上、一人ひとり、生い立ちと今興味ある事、今学校で何を勉強しているか、将来どうなりたいか、親は将来何になってほしいと言っているか、などいろいろ聞いた上で、適切な目標(人によって短期的な目標だったり、長期的な目標だったりする)を立ててあげて、少しずつ手とり足取り、AI技術を学んでいくのが、一番よいと思っています。
各個人が最終的にたどり着きたい場所(脳を理解したい、弁護士になりたい、官僚になりたい、企業家になりたい、介護の分野に行きたい、何かものを作れるようになりたい、とりあえず役に立ちそうだから学んでおきたい、など)によって、学んでもらうべきことと、それぞれのAIのコンテンツを学ぶ理由を説明する方法が変わってきます。
理想は一人ひとりに寄り添って教えてあげることですが、先に申し上げたようにAIの進歩が速く、教える側も最先端にのAI技術にcatch upしたり、自分が生きるためのビジネスしたりするのでいっぱいいっぱいなので、現実的には、まとめて教えられるところは、みんなを集めて教えるか、ビデオ講座化してそれを見てもらったり、本を指定して読んでもらったり、ということになりますし、実際僕はそのようにしています。
最終的になりたい具体的な人物像がはっきりしている場合には、その像(持つべきスキルセット)から逆算して、論理的に、こうこうこういう順番でこれを学べばよいとそれなりに絞って言えます。ただ説得を試みることはできるものの、モチベーションを維持させられるかというと必ずしもそうではありません。
モチベーションを維持させるには、短期的なゴール(小テストとかレコメンドエンジン作るとか)を設定してあげて、理解「できる」、作ることが「できる」という成功体験をさせてあげることがよいと感じています。
短期的なゴールまでの道のりが長すぎたり、先が見えなかったり、次にやるべきことがわからない状態が続いたりすると、離脱率がぐっと上がります。
学んだことを、スライドにまとめるタスクや、すぐに解決できない課題に取り組ませると、これもまた離脱率が上がります。
どこまで学習が進んだら、どんな課題を与えるべきか見つけることも、教える側の大きな課題です。
できるだけ、簡単かつ達成感のある短期的ゴールが望ましいと思います。特に「達成感ある」ゴールの設定が難しいです。
やってもらって、「これがなんの役に立つんだろう?」という課題はだめです。
個人的にはデータ可視化やレコメンドエンジン作成をやってもらっていますがすぐにネタ切れします。。今の僕の課題です。
最終的になりたい像(持つべきスキルセット)が明確に決まっていない人が多く、そういう人には、論理的に何を目指して、そのためにどういう順番で何を学べばよいということが言いにくいです。
そういう人のモチベーションを維持させるには、日々のコミュニケーションをより密にすることが重要と思います。月に一回スカイプするとか。たまにあった時に立ち話するとか。いかに気さくな友達になれるかが重要です。
「AI教育のあるべき姿」はおそらく「普通の教育のあるべき姿」と変わりません。
ただ、AIが数学や統計、物理、最適化数学、プログラミング、コンピュータサイエンスなどの複合分野で、
理解が難しい部分があるので、普通の教育よりも生徒との密なコミュニケーションが必要であり、
生徒が他の分野にいかないように引き付け続ける努力が必要であると、日々感じています。
鈴木瑞人
東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士課程
株式会社パッパーレ 代表取締役社長
実践的機械学習勉強会 代表
NPO法人Bizjapan テクノロジー部門BizXチームリーダー