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アンソロピックの生体分子モデル。推論を速くし、大きな複合体も一台のGPUで

2026.09.19
アンソロピックの生体分子モデル。推論を速くし、大きな複合体も一台のGPUで

アンソロピック(Anthropic)は2026年9月17日、クロード(Claude)がオープンソースの生体分子モデルを推論側から速く・省メモリにした、と研究記事で伝えました。対象は構造予測やタンパク質設計、タンパク質・ゲノムの言語モデルなどです。以下は、同社の研究ページと技術レポート、公開リポジトリ、競技案内の整理です。

中心は、新しい生命現象を見つけたことではありません。すでに公開されている予測・設計ツールを、同じ使い方のまま速く動かすことです。速さの数字は同社の測定です。

何が起きたか

生体分子の立体を配列から予測するモデルや、狙った性質のタンパク質を設計するモデルは、計算コストが大きいです。とくに構造予測では、トークンの三つ組に対する処理(triangle attention/triangle multiplication)が、時間とメモリの主なボトルネックになります。系の大きさが2倍になると、時間とメモリはおよそ8倍になります。

アンソロピックは、クロード・サイエンス(Claude Science)の枠組みで、この推論を最適化しました。社内の汎用研究モデルが、生体分子向けの深層学習モデル30超を、約4週間で扱いました。監督は、生体分子モデリングの経験はあるが推論最適化やカーネル(GPU向けの低水準プログラム)は未経験だった技術スタッフ2人です。平均でおよそ4倍速くなり、精度の低下は小さいです。出力を完全に同じに保つ条件では、およそ2倍です。

共通の高速化として、フラッシュペアフォーマー(FlashPairformer)という独自カーネルを作りました。標準とされる実装と比べ、三つ組の注意処理は平均2.7〜2.9倍、三つ組の乗算は1.7〜3.2倍です。加えて、モデルごとに、重複計算のキャッシュや、死んだ分岐の整理など個別の最適化も入れました。

メモリ面では、省メモリのBigモードを追加しました。1万トークン(アミノ酸・塩基・低分子やイオンの原子など)を超える系を、単一のエヌビディア(NVIDIA)GPUノードで正確に予測できます。ヒトのミトコンドリア複合体Iや、細菌のリボソームなど、実験構造と近い予測例を示します。一方で、3万〜7万トークン級のウイルス殻などでは、同じノードで推論は走るものの、予測は崩れる例もあります。訓練時の文脈を大きく超えた一般化には限界があります。

以前の研究では、デノボ(de novo。配列の新規設計)の結合タンパク質(バインダー)設計に、ターゲットあたり最大約1万ドル相当のモーダル(Modal)計算(エヌビディアH100換算でおよそ2500時間)を使っていました。今回は、加速した生体分子モデルと短いプロンプトで、単一のエヌビディアH200と24時間を使う条件を示します。16ターゲットの平均では、以前と同程度の計算機上の結合スコア(ipSAE)を、GPU時間が約2桁少ない条件で出しました。GPUとトークンを合わせた見積もりでは、およそ150ドル程度でも同水準に届きます。

成果物はギットハブ(GitHub)のanthropics/uplifting-biomolecular-modelingにあります。キットは36個で、特定バージョンに固定した上流ツールと最適化を並べます。モードは、最適化なし(off)、同一出力の高速(exact)、わずかな数値差を許す高速(fast)、省メモリ(big)です。呼び出し方は上流ツールのまま変えません。リポジトリは参照用の公開で、継続メンテや外部からの修正提案は受けません。詳細は技術レポート「Accelerating open-source biomolecular models with Claude」にあります。

あわせて、アダプティブ・バイオ(Adaptyv Bio)とタンパク質設計の競技を、プロテインベース(Proteinbase)上で開きます。課題は5つで、2026年9月28日から10月31日に週次で公開する予定です。選ばれた設計は、実際の試験管や細胞での実験(湿式実験)で5000超を検証します。クロードの利用枠は最大100万ドル相当、モーダルの計算枠は最大25万ドル相当、ツイスト・バイオサイエンス(Twist Bioscience)がDNAを提供します。申請の締切は9月24日です。生命科学向けの検証プログラム(Life Sciences Verification Program)の公開ベータ開始にも触れています。

何が変わったか

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
約4週間でモデル30超を最適化。平均およそ4倍(最小精度低下)、同一出力ではおよそ2倍(アンソロピック) 第三者による同じベンチ定義での再測定一覧
フラッシュペアフォーマーが三つ組の注意処理を2.7〜2.9倍、三つ組の乗算を1.7〜3.2倍(同) 読者環境でのカーネル再実装と、全モデル横断の再集計
Bigモードで1万トークン超を単一GPUノードで正確予測。7万トークン超は推論可能だが崩れる例あり(同) すべての巨大系での再現条件と失敗条件の第三者カタログ
以前のバインダー設計と同程度の計算機上成績を、GPU時間約2桁減で達成(同) 湿式実験での結合確認、公開モデルでの同条件再実行
36キットをギットハブ公開。モードはoff/exact/fast/big(リポジトリ) キットの継続更新(READMEはメンテしない旨を明記)
アダプティブ共催競技の日程・クレジット・湿式検証の案内(研究記事/プロテインベース) 申請後の採択結果、各課題の実験結果(発表前)

誰に関係するか

受託のML推論では、モデル本体の入れ替え前に、カーネルとモードだけの差し込みで、応答までの待ち時間(レイテンシ)を短くできるかを見ます。画像検査や需要予測など、本体モデルを替えず推論モードだけ試す現場でも、同じ切り分けが使えます。

まとめ

モードはoff/exact/fast/bigで切り替え、呼び出し方は上流ツールのまま変えません。Bigは通っても正しさは別問題です。36キットは参照用の公開で、継続メンテはしません。極端に大きい系では、推論が走っても予測が崩れる例があります。

参考文献

  • How Claude is uplifting biomolecular modeling(Anthropic Research、2026-09-17)、https://www.anthropic.com/research/claude-uplifts-biomolecular-modeling 、確認日 2026-09-18
  • Accelerating open-source biomolecular models with Claude(技術レポートPDF)、https://www-cdn.anthropic.com/d8ca26d0d205708d26c7337cf4cfe7cb52e9b671.pdf 、確認日 2026-09-18
  • anthropics/uplifting-biomolecular-modeling(GitHub)、https://github.com/anthropics/uplifting-biomolecular-modeling 、確認日 2026-09-18
  • Anthropic × Adaptyv Protein Design Competition(Proteinbase)、https://proteinbase.com/competitions/anthropic-adaptyv-2026 、確認日 2026-09-18

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)