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ピンタレスト、行動の記録から利用者の目的をLLMで名付け、通知の試験でクリック率が伸びた

2026.10.18
ピンタレスト、行動の記録から利用者の目的をLLMで名付け、通知の試験でクリック率が伸びた

画像を集めて暮らしの計画に使うサービスのピンタレスト(Pinterest)は、利用者が数週間から数か月かけて進める目的を、通知の中身に使っています。同社はこの目的を「ジャーニー」と呼びます。たとえば「夏の服」は興味で、「8月に出る結婚式の服を探す」がジャーニーです。同社は、この名前を付ける仕組みを、キーワードを束ねる多段の処理から、行動の記録を読んで名前を書く大規模言語モデル(LLM:文章を作るAI)1つに替えました。

この記事は、同社が2026年10月9日(米国時間)に技術ブログに出した記事にもとづきます。論文は出ていません。数字はすべて同社の発表で、外の人による確かめはありません。

何が起きたか

前の仕組みは、検索語や保存した画像のタグからキーワードを取り出し、似たもの同士を束ねて、束の中で一番強い語を名前にしていました。そのうえで並べ替え、「長く続く関心か、一時の関心か」を決まりで分けていました。

この仕組みで、通知は一度よくなりました。興味の分類にもとづく通知に比べ、メールのクリック率は88%、プッシュ通知の開封率は32%、好意的なアンケート回答は23%伸びた、と同社は書きます。

一方で、段ごとの小さな誤りが重なりました。食器棚、天板、壁のタイルは一つの台所の改装なのに、三つの目的に割れて、通知の枠を取り合いました。束がまとまらないときの名前は、「アート」「買い物」のように広すぎるものでした。数回クリックしただけの流行りの画像や芸能の話題が、上位に入ることもありました。

どう作ったか

同社は、名前を付ける処理を、記録を読んで答えを書く一回の生成にまとめました。

  1. 記録をまとめて読ませる: 性別・言語・国・年齢の幅といった属性、利用者が作ったボードの名前、過去360日のうち最大150件の行動を、日付の順に1つの入力にします。答えは、目的の名前を強い順に並べた一覧で、決まった形式で返させます。
  2. 行動を6種類にしぼる: 検索・保存・いいね・クリック・コメント・非表示の6つです。強さの順(検索と保存、コメント、いいね、クリックの順)も指示に書きます。非表示は、関心がないことの証拠として入れます。非表示が支えの大半を占める目的は、関連する強い行動がない限り出しません。
  3. 並べ方と禁止を指示に書く: 目的はおよそ12件まで、1つ1〜5語で、利用者の言語で書かせます。並べる基準は、行動の強さ、繰り返し、新しさ、まとまり、具体さです。関係のない話題はまとめない、一度だけの行動は落とす、と書きます。記録が支えないときは空の一覧を返してよく、支えのない目的を作ることは禁じます。指示の変更は、新しい機能を出すときと同じ手順で確かめます。
  4. 大きなモデルの手本で小さなモデルを学習させる: 最先端の大きなモデルは費用が高く、数億人の利用者に繰り返し使うには向きません。そこで大きなモデルに手本を書かせ、公開されているクウェン3(Qwen3)の小さなモデルに学ばせました(蒸留)。0.6B・1.7B・4B・8Bの4つの大きさを試し、品質と処理の速さのつり合いから4B(40億パラメータ)を選びました。
  5. 毎日、必要な人だけ回す: 最近使った利用者を毎日処理し、ここ数日で処理済みの人は飛ばします。目的は1時間ごとには変わらないためです。答えの生成に失敗したら、その人をやり直し、途中までの一覧は保存しません。前のキーワードの仕組みは、予備として残しています。

本番は、エヌビディア(NVIDIA)のL40Sという計算用の半導体(GPU)を100台規模で使い、毎秒約775件を処理します。1件の処理は中央値で約1.2秒、95%が約3.0秒以内です。

体や信条にかかわる推定は止めています。入力のキーワードと、出てきた名前の両方を、通知用の内容の確かめにかけます。健康状態、政治、宗教、性的指向、性自認、人種などを推定しないことも指示に書きます。年齢は幅でまとめて渡します。欧州経済領域・スイス・英国の18歳未満の利用者は、各地の法律のため、まだ対象外です。

何が変わったとするか

同じ利用者の記録で、前の仕組みとLLMの答えを並べて見比べています。食器棚と天板に割れていた束は、「モダンなファームハウス風の台所」の一つにまとまりました。「アート」は「ペンギンの絵の描き方」のように具体的になり、芸能や流行りの画像の話題は消えました。スペイン語を使う利用者には、スペイン語の名前が付いています。前の仕組みは英語のタグから名前を作るので、これができない作りでした。

外れの例も出しています。記録がはっきり「スパム入りキムチチャーハン」なのに「家庭料理」とまとめすぎる例と、記録が支える脇の関心を落とす例です。別のLLMに、出てきた名前を「記録に支えがあるか」などで採点させてもいますが、点数は書かれていません。

米国とカナダの利用者で、前の仕組みを対照にした試験をしました。メールのクリック率は1.1%、プッシュ通知の開封率は1.3%上がった、と同社は書きます。サイト全体の利用や継続でも、統計的に有意な伸びが複数あったとしますが、数字は出していません。多言語での国外展開でも同じ向きの結果が出て、二つの試験の結果を入れたあと、日・週・月の利用者が増えたとします。こちらも幅は書かれていません。

学習の手本は、最初の数千件で品質が急に上がり、そのあとはほとんど伸びませんでした。似た例を足すより、まとめるのが難しい例や多言語の例を選ぶほうが効きました。

意味ID(画像を短い番号の列で表すもの)を入力に使う方法、ピンタレストの外での購入や申し込みの記録を足す方法、利用者の「はい/いいえ」の回答で学習させる方法は、まだ試験中です。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 公表されている説明 ⚠️ こちらで確認できていないこと
米国・カナダの試験で、前の仕組みに比べメールのクリック率1.1%、プッシュ通知の開封率1.3%の伸び ⚠️ 1.1%が率の相対の伸びか、ポイントの差か
⚠️ 試験の期間・人数・分け方
⚠️ 「有意な伸びが複数」とする利用・継続の指標と数字
国外展開でも同じ向きで、日・週・月の利用者が増えた ⚠️ 増えた幅と、国・言語の内訳(日本を含むか)
メールのクリック率88%、プッシュの開封率32%、好意的な回答23%の伸び前のキーワードの仕組みを、興味の分類にもとづく通知と比べた数字。LLMの成果ではない ⚠️ この比べ方の時期と条件
100台規模のGPUで毎秒約775件。中央値約1.2秒、95%が約3.0秒以内 ⚠️ 運用の費用
⚠️ 手本を書かせた大きなモデルの名前と、手本の件数
健康・政治・宗教などを推定させず、入力と出力の両方を確かめにかける ⚠️ 確かめで落ちた名前の割合
⚠️ 落とせずに出た例があったか
別のLLMに、名前の関連・記録の支え・重なりのなさ・細かさを採点させる ⚠️ 点数そのものと、採点したモデルの名前

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
数字と説明は、ピンタレストの技術ブログ(2026年10月9日、米国時間)による。

誰に関係するか

会員の購入や閲覧の記録を持ち、メールやアプリで案内を送っているのに、中身が「よく買う分類」の案内にとどまっている会社に関係します。

たとえば、従業員100〜200人規模の地方のホームセンターが、会員カードの購入記録から案内メールを作るとします。数か月の間に防草シート、砂利、レンガを分けて買った客なら、「庭の小道づくり」という計画の名前をAIに書かせ、その計画に合う道具や作り方の案内を送ります。一度だけ買った品は計画にしません。記録が支えないときは名前を付けず、いつもの案内にします。薬や衛生用品の購入から体の状態を推し量る名前は、入力から外し、出てきた名前も送る前に止めます。始める前に、数百人分の名前を人が記録と並べて見比べ、まとめすぎや落とした関心を数えておきます。

まとめ

ピンタレストは、利用者が進めている目的の名前を、キーワードを束ねる多段の仕組みから、行動の記録を読んで名前を書く40億パラメータのLLM1つで作るようにしました。大きなモデルの手本で学習させ、記録が支えない名前は作らせず、体や信条にかかわる推定は止めています。前の仕組みを対照にした米国・カナダの試験で、メールのクリック率は1.1%、プッシュ通知の開封率は1.3%上がったとします。数字はすべて同社の発表で、試験の期間や人数は書かれていません。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)