2018.10.06 Sat |
AIのマーケティングに対する将来的な応用
この記事は、鈴木瑞人が執筆します。
本記事の構成
1, 現状のAIのマーケティング分野への適用
2, 将来的なAIのマーケティング分野への適用
1, 現状のAIのマーケティング分野への適用
現状では、たとえば、
検索連動型広告(リスティング広告)は、Google検索やYahoo!JAPANでの検索を行った後に、検索窓の下に出てくる広告のことをいい、これは、Googleの検索エンジンと連動しているので、背後で高度なAIが動いています。
検索連動型広告は以前は上写真のようなリンクと短い文書が出てくるだけでしたが、
最近では、以下の写真のように、商品購入サイトへのリンクが含まれるものが、小さなスペースに出てくるようになりました。
いろいろな単語を入力してみればわかりますが、gmailアカウントにログインしている状態では、websiteの閲覧履歴やyoutubeの閲覧履歴など様々な情報を総合してAIが解析し、個人に特化した広告が出されているのがわかります。
GoogleはgmailやYoutubeなどのサービスの個人情報を紐づけ、それぞれのプラットホームでAIを用いて個人に特化した広告を提供しています。Googleは、広告収入だけで2017年は10兆円ほどの売り上げがありました。これは、AIが最もマネタイズしている例として受け取ってよいと思います。Googleの検索エンジン自体が、AIの要素をふんだんに含み、他のサービス、例えばYoutubeなどに関してもかなりAIが使われています。Youtubeでは、新しい動画の視聴の6-7割が、レコメンド経由とのことです。どのような動画の視聴者にどのような広告を出すかも、AIが判断しています。
2, 将来的なAIのマーケティング分野への適用
では次に、将来的に、さらにマーケティングの分野でどのようにAIが使われるようになるか、考えてみたいと思います。
現状のGoogleやAmazonのサービスの進化の延長線上で考えても面白くないので、少し別の視点から考えてみましょう。
最近ジャパネットたかたの創業者である、高田明氏の「伝えることから始めよう」という書籍を読みました。
ジャパネットというと、テレビ通販が有名で、あまりAIと関係ないように思えますが、
ジャパネットのテレビショッピングの生放送は、リアルタイムで、注文数や外気温など様々な情報を出演者が番組中に見ることができるようになっています。同じ商品を何回も紹介するのが一般的ですので、言い方や、間、商品の見せ方などをどう変えると、どう売り上げが変化するかを知ることができます。
ECサイトなのでは、A/Bテストといって、websiteのどの部分をどう変えるとどう売り上げが変わるかを最適化することが良く行われますが、ジャパネットのテレビショッピングでは、まさにこのA/Bテストを繰り返し、どの商品をいつどのように紹介すれば売れるかというノウハウをものすごいたくさん持っています。
高田氏は、強調するポイントや、紹介のタイミング、間のとり方、商品の見せ方も大切であるが、「パッション(情熱)」と「この商品がお客様の日常をどう楽しく、豊かにするかを具体的に説明すること」が重要であると述べています。
現状この二つに関しては、AIが手を出せていないところです。
また、GoogleやAmazonやFacebookが手を出しそうにないところであるとも思います。
日本人独特の視点でAI分野を攻めるならこのような視点でいくのもありだと思います。
それでは、高田氏が言わんとする、「パッション(情熱)」と「この商品がお客様の日常をどう楽しく、豊かにするかを具体的に説明すること」とはどういうことなのでしょうか?
高田明氏の著作「伝えることから始めよう」から要約してご説明します。
まず「パッション(情熱)」について、
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コミュニケーションでは、「伝えること」ではなくて「伝わること」が重要です。
そのために重要ことは、情熱ーパッションーである。強い思いがあればそれは体から伝わる。この商品を使ってもらえばお客様に幸せ・感動・楽しみをお届けできると思えば伝えたい想いは一気に強くなります。
ジャパネットの大ヒット商品にシニア向けのウォーキングシューズがあります。累計85万足売れました(2016年時点)。高田氏は、このシューズを紹介するときに、日本の高齢者3300万人が街に繰り出して、元気に歩いている姿をイメージしてカメラに向かっていた。そういう姿を思い描くと伝えたい気持ちが一層強くなって自然とテンションが上がる。
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今のところ、AIからパッションを感じることはないですが、AIがパッションを発せられるようになると、より効果的なマーケティングになるのかなと思います。これには、AI自体がもう少し発展しかつ我々がパッションが何なのかについてもっと知る必要があるでしょう。
では次に、
「この商品がお客様の日常をどう楽しく、豊かにするかを具体的に説明すること」
に関して、これも高田氏の「伝えることから始めよう」から抜粋します。
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例えば、大画面の薄型テレビの紹介では、
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みなさん、42インチの大画面テレビがリビングに来たら格好いいでしょう。お宅のリビングが一気に生まれ変わりますよ。素敵なリビングになるんです。それだけではないですよ。大きなテレビがあったら、自分の部屋にこもってゲームをしていた子供たちがリビングに出てきて、大迫力のサッカーを観戦したりするようになりますよ。家族のコミュニケーションが変わるんです!
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例えば、機能性に優れたシニア向けウォーキングシューズでは、
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普段の生活でこんなことはありませんか?立った姿勢で靴下をはくのがきつくなった。買い物かごを持つのがつらくなった。布団の上げ下ろしがしんどい。だったら足を鍛えましょうよ。街中を見てください。ウォーキングしている人が多いでしょう?
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今、このような紹介をしてくれるマーケティングAIってないですよね?
現状は、レコメンドエンジンでは、「この商品を買っている人は他にこんな商品も買っています」だったり、「この商品を閲覧している人は他にこんな商品も閲覧しています」という程度で、その商品がその人の生活をどう変えるか、想像力を掻き立ててくれるAIはないと思います。
これを実現するには、現状の技術では、どういう人に、どの商品を、どう説明したら、売れるという、大量のデータが必要になります。そのデータさえ集められれば、実現できるんですが、現状、まだそれ用のデータを集められている企業はないようです。
結構人力なので、データ作成にコストがかかりますし、AIの素養がある人で、それをやりたいと思った人がいないのでしょう。
今回はここまで。
鈴木瑞人
株式会社パッパーレ
東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程
NPO法人Bizjapan テクノロジー部門 BizXチームリーダー