2016.11.20 Sun |

人工知能の歴史Part2~第二次AIブーム~

第二次AIブーム~エキスパートシステム~

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Part1に引き続いて人工知能の歴史について説明します。今回は人工知能二回目のブーム「エキスパートシステム」についてです。

第一次AIブームは、現実の問題よりはるかに単純なパズル、迷路、チェスなどのトイプロブレム(おもちゃの問題)しか解けないという欠点のため終結しました。そこで現実の問題を解くために考え出されたのがエキスパートシステムです。エキスパートシステムとは、専門家(エキスパート)の知識をコンピュータに移植することにより現実の複雑な問題を人工知能に解かせようとするものです。

例えば、専門医の知識をコンピュータに移植すれば、患者の症状から病名を特定することができます。「頭が痛いですか?」、「倦怠感はありますか?」などといった質問をしていき、「頭が痛ければA~Eの病気の可能性がある」、「倦怠感がないのであればB、Dの二つの病気の可能性が高いだろう」といった具合です。

このエキスパートシステムによって人工知能の応用範囲をトイプロブレムのみでなく現実的な医療診断、会話アプリケーションなどにも及ぼせる事がわかってきたため、1980年代にはまた人工知能ブームが再燃していきます。これが第二次AIブームです。

二回目の冬の時代~現実はそんなに簡単じゃない~

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現実世界の問題を解く事ができるようになったように思えたエキスパートシステムですが、これを作っていくうち多くの問題が露呈し始めます。エキスパートシステムはルールをため込んで「もしこういう状況なら、こういう対応をしろ/こういう選択肢が答えになるはずだ」という判断を行うことで問題を解決していきます。

しかし、これを実現するには専門家のありとあらゆる知識を教え込まなければいけなく、さらに多数のルールを教えている間に互いに矛盾するようなルールも出てきてしまいます。コンピュータは杓子定規なふるまいしかできないため、矛盾したルールにぶつかるとそこで止まってしまうのです。また、教えていない例外的な事例が出てくるとコンピュータは対処できません

このように、トイプロブレムから脱したと思われたエキスパートシステムも結局はルールが明確な簡単な事例にしか対処できず、複雑で例外も起こりうる現実世界には全く対処できなかったのです。こうして、今度こそはと思われた二回目のブームは深い失望とともに終結し、またしても1990年前後から二回目の冬の時代に突入していきます。

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次回からはまず第一次、第二次AIブームのどちらにおいても立ちはだかったフレーム問題という大きな壁について説明し、続いて、現在進行中の第三次AIブームがその壁を抜ける可能性はあるのかについて説明していきます。

東京大学工学部航空宇宙工学科4年

T.Y.

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