2017.08.14 Mon |
尊敬する人達②
それでは前回に引き続き、鈴木瑞人が尊敬する人紹介をしていきます。
前回は、以下のリストのうち、John Craig Venter氏と佐々木正氏をご紹介しました。
1,John Craig Venter
2,佐々木正
3,紺野大介
4,Linus Torvalds
5,Frederick Terman
6,John von Neumann
7,菅裕明
8,合田圭介
9,Hadley Wickham
10,Jeffrey Dean
今回は紺野大介先生とLinus Torvalds氏をご紹介します。
紺野大介氏ではなくて紺野大介先生と呼んでいるのは縁あって以前直接いろいろアドバイスいただいたためです。
紺野先生は清華大学と北京大学の招聘教授であり、清華大学では摩擦学を、北京大学では幕末史を教えている方で、セイコー電子工業株式会社(現セイコーインスツル株式会社(社員数約8500人(連結)))にてCTOをなされた後、NPO法人創業支援推進機構(ETT)を創業し、理事長をなさられている方です。
紺野先生は、メディアへの露出を好まず、業績を外にあまり出さないので、僕もあまりここには書けませんが、たとえば、産業革新機構での先生の任期中のルネサス再建の案件は見事exitし、産業革新機構の数少ない大成功例となりました。シリコンバレーのIT系ベンチャー企業の顧問に就任しIPOに導くなど枚挙にいとまがありません。あまり書くとよくないのでこの辺にして。。
いくつか先生からいただいたアドバイスが心に残っているので、それだけ書きたいと思います。
「すっ飛ばしたものはあとでかならずしっぺ返しがくる」売る覚えなのですが、こんな感じのことでした。
僕は音楽とか歴史とか物理とか結構やらないで来たものがあるのですが、先生のお言葉通り、すっ飛ばしたことで受けるデメリット・ペナルティ的なものを感じる機会が増えたので、今まで苦手と思って毛嫌いしていたものも積極的に学ぶようにしています。苦手意識を持って今まで避けていた量子力学を学び始めたらPET(Positron Emission Tomography)の原理を理解できたり、機械学習のところででてくる数式が理解できるようになったりしました。
紺野先生は、宇宙の始まりや生命の始まりに強く関心を持たれ、その分野の最先端の論文を読まれているだけでなく、その分野で最も先を行っている教授とのコミュニケーションも頻繁にとられており、最終的に知識人が行き着く先の姿を見ることができ、自分の将来の方向を決める大きな助けになりました。
また、僕が教授になりたいと強く思ったのは紺野先生の影響が大きいです。教授コミュニティがあまりにも楽しそうだったからですね。優秀な人たちとチャレンジングなことをずっとしていたいです。
次は、Linus Torvalds氏についてご紹介したいと思います。
4,Linus Torvalds氏
皆さんは、Linux(リナックス)という単語を聞いたことはありますか?
パソコンのOSには、Windows、Mac、Linuxがありますが、このLinux(カーネル)の開発者が、Linusさんです。gitというバージョン管理システムの開発者でもあります。
最近クラウドコンピューティングが一種のブームですが、クラウドコンピューティングに使われるOSは基本的にLinuxです。スマホ(iPhone以外)のOSであるアンドロイドは、Linuxカーネルをベースにして作られており、実は多くの人はLinuxを日常的に使っています。
Linuxはオープンソースで無料であり、自由に改変して再配布・販売できるので、多くのDistributionが出回っています。
バイオインフォマティクス・セキュリティ・ロボティクス・ハイパフォーマンスコンピューティング・コンピュータビジョンなど様々な分野でLinuxカーネルはインフラとして多大な貢献をしています。
世の中にはいろんな評価基準があると思いますが、”実質的に世の中の人々の役に立つ”という評価基準ではLinus Torvalds氏に勝てる人はそれほど多くないでしょう。
彼の言葉が僕は大好きで、たとえば、
“The innovation the industry talks about so much is bullshit. Anybody can innovate. Don’t do this big ‘think different’… screw that. It’s meaningless. Ninety-nine per cent of it is get the work done.”
(産業界がたくさん話す”イノベーション”はくそだ。人と違うように考えるなんてしなくていい。無意味だ。本当の意味のイノベーションの99%は作業を実際に終わらせることにある。)
“The real work is in the details.”
(本当の仕事は細部に宿る)
最近”オープンイノベーション”という言葉がはやっていますが、Linux kernelの開発はその良い例でしょう。ただ莫大な収益を上げているのは、Linux kernelの開発をしているLinux Foundationではなく、Linux kernelを無料で利用している、Google、Microsoft、Amazon、IBMや、アンドロイドスマホを販売している、SamSungやHuaweiなどで、文系のビジネスマンからはLinux Foundationは評価されない傾向にありますが、彼らを同じ人間としてみるのではなく神様としてみれば、納得できるかと思います。神様はお金儲けなんてしません。彼らはみんなのためにより良いことをしてくれる存在です。
Linus Torvalds氏みたいに、みんながお金儲けや研究をすることができる土壌を作ってあげる人も、僕はかっこいいと思っていて、将来は誰からも評価されなくても、そういうこともしたいなと思います。僕は、イノベーションの土壌を作り、種をまき、それを人に託し、その成長を見守る余生を過ごしたいなと思っています。
初めは技術も経験もないので、人が作ってくれたものを利用して、ビジネスや研究をするものの、年取ってからは、若い人にツールを提供して、若い人(起業家)が活躍できるようにしたいです。
鈴木瑞人
東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程
東京大学機械学習勉強会 代表
NPO法人Bizjapan テクノロジー部門BizXチームリーダ