2018.04.15 Sun |

冥王星までの旅

 

 

2015年7月、探査機「ニューホライズンズ」が冥王星へ到達、その姿の観測に成功したのは記憶に新しいと思います。今回は史上初めてとなる冥王星観測の成功を導いた、その軌跡を見ていきたいと思います。

 

2006年、「ニューホライズンズ」はエッジワース・カイパーベルトと呼ばれる太陽系外縁天体の観測をする目的としてNASAのもと打ち上げられました。
この時の打ち上げ速度は、これまで地球を旅立った探査機たちの中でも最高速のものでした。
(ちなみに、主目標である冥王星はこの年まで太陽系第九惑星でしたが、ちょうど同年に見直され準惑星に再分類されてしまいました。)

2007年、冥王星までの旅路でたった一度のスイングバイを木星にて行い、さらに加速します。その後、バッテリー保持のため休眠状態と再起動を繰り返しながら、2011年に天王星軌道を、2014年に海王星軌道を通過します。

そして、2015年7月14日、9年の歳月を経てついに冥王星に到達、最接近しました。これまで誰も見たことがなかった冥王星の鮮明な画像を撮影することに成功し、また様々な観測データを地球へ送信、これからの宇宙探査に大いに貢献することになりました。

 

 

【出典】https://www.nasa.gov/mission_pages/newhorizons/main/index.html

(接近して初めて発見された冥王星表面のハート模様です。)

 

探査機「ニューホライズンズ」の特徴として、その航行速度の速さが言えます。上記にもあるように、地球を最速で旅立ったり、一度のスイングバイしか行わない訳はその観測方法にあります。

【出典】http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/swingby_navigation.html

(これは加速スイングバイの簡略図です。スイングバイには加速、減速法とありますがそれについては次の機会に紹介します。)

「ニューホライズンズ」の観測方法はフライバイ観測というものだからです。これは地球の周りを周回している数々の人工衛星のように、観測対象である天体の重力にとらえられ、周回軌道を回り長期的に観測を続ける方法とは異なり、凄まじい速度で観測目標に接近し一瞬にして膨大な数のデータを収集、そしてまたすぐに飛び去ってしまうというものです。

 

【出典】https://www.nasa.gov/mission_pages/newhorizons/main/index.html

(これは冥王星までの航行軌道ですが、確かにほぼ一直線に飛行していることがわかります。)

この周回軌道に乗っての探査方法とフライバイによる観測にはそれぞれ利点、欠点があります。

まず、周回軌道での観測法ですが、こちらは長期間観測をすることはできますが、目的地までの時間も膨大にかかります。何回ものスイングバイや軌道変更によって、徐々に観測対象まで近づいていかなければなりません。

次に、フライバイですが、こちらは観測対象まで比較的早く到達することができます。しかし先も述べたように、なにぶん凄まじい速度ですので観測時間も短くなってしまします。

つまりそれぞれ一長一短ということになります。

観測目標に近づいたのならそこで減速をすればよいのでは、と思うかもしれませんが、猛スピードで打ち上げられた探査機を観測対象の周回軌道に乗せるためには、その分大幅に減速する必要があり、そのためには多くの燃料を積まないといけません。しかし機体が重くなる分、今度は打ち上げ時に速度を出すことができず、目標に到達する時間も伸びてしまいます。

「ニューホライズンズ」は太陽系外縁天体の観測を目的としたことによる、その膨大な飛行距離などのため、フライバイ観測を行いました。つまり、この超高速の航行のおかげでわずか9年の間に「ニューホライズンズ」は冥王星に到達することができたのです。

 

 

その後「ニューホライズンズ」は冥王星を通過しましたが、さらに航行を続けています。2017年末には太陽系の外惑星軌道を越えた5機目の探査機となり、ボイジャー1号すら越え、地球から約61.2億kmの距離で星団の観測に成功しました。これは今までで最も遠い場所からの撮影となりました。
現在でも地球から最遠での撮影を続け、自身で打ち立てた記録を塗り替えています。

 

このあと、太陽系外縁天体でもフライバイ観測を行い、さらに太陽系からも離脱していきます。地球から離れれば離れるほど想像もできないような現象が起きているかもしれません。その先は未知との遭遇であり、どのような観測結果が届くのかとても楽しみです。
「ニューホライズンズ」のさらなる活躍に期待したいと思います。

 

【出典】
https://www.nasa.gov/mission_pages/newhorizons/main/index.html
http://spacenuclear.jp/spacecrafts/newhorizons0.html
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9719_newhorizons

 

D.M
理工学部二年

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