米国の病院グループ、プロビデンスは、重い病気の患者と医師らが治療やケアの希望を話し合った記録を、カルテの文からAIで見つける仕組みを作りました。見つけた記録は、電子カルテのまとめの画面に出ます。4つの病院で6か月試したあとグループ全体に広げ、約2か月で3万7000人分の話し合いの記録を拾いました。2026年10月22日に医学の専門誌でオンライン先行で公開された論文の要旨に書かれています。ただ、このうちAIがなければ見つからなかった人数は出ていません。モデルを選ぶときに専門家が答えを決めたカルテと比べた試験では、話し合いのある記録の約4分の1を見落としました。
プロビデンス(Providence)は、米国西部で病院を運営するグループです。本部はワシントン州レントンにあります。
重い病気の患者には、どこまでの治療を望むか、どこで過ごしたいかを、医師や看護師と話し合う場面があります。米国ではこの話し合いを「ゴールズ・オブ・ケア(goals-of-care)」と呼びます。ここでは「治療の希望の話し合い」と書きます。
プロビデンスは、話し合いを記録するよう全体で取り組んできましたが、カルテの自由な文に書かれた話し合いは、追いかけにくいままでした。決まった入力の欄もありますが、医師らには窮屈だと見られがちでした。書き手らはポスターで、人の目で読むやり方や、決まった言葉を探すやり方には、費用、広げやすさ、正しさの面で難しさがあると書いています。
AIは、オープンAIの言語モデル「GPT-4o」です。マイクロソフトのクラウド(Azure OpenAI)で動かし、指示の文を何度も直して使いました。
先に緩和ケアの専門家らが、話し合いの記録といえる決まりを作りました。その決まりで488件のカルテに答えを付けました。答えを付けた人どうしの一致の度合いは、平均0.77でした。
この488件で、いくつかのモデルを比べました。話し合いのない記録を、あると判定しないことを優先して選び、GPT-4o にしました。
AIは新しいカルテの文を読み、話し合いの記録があるかを判定します。仕組みは電子カルテ(エピック、Epic)に組み込みました。AIが当たりとした記録は、治療の希望の記録をまとめた画面に出て、医師らが見られます。
本番に出したあとも、専門家が判定の一部を抜き取って読み直しています。
正しさの3つの割合と、人種・性別・年齢ごとの特異度は、モデルを選ぶときに、専門家が答えを決めたカルテと比べた数字です。ポスターでは、この比べに488件のカルテを使っています。
| 📊 項目 | 数字 |
|---|---|
| 話し合いのないカルテを正しく外した割合(特異度) | 95% |
| 話し合いのあるカルテを見つけた割合(再現率) | 74% |
| 当たりとしたもののうち正しかった割合(適合率) | 78% |
| AIが当たりとした325件を人が読み直し、専門家と一致した割合 | 86% |
| 人種・性別・年齢で分けた特異度 | 0.91〜1(意味のある差なし) |
| グループ全体に広げたあと約2か月で拾った人数 | 3万7000人 |
出典:Journal of Pain and Symptom Management の論文の要旨(2026-10-22 オンライン先行)
ポスターによると、試験は2024年12月に4つの病院で始まりました。これまでの方法で拾えていた話し合いは、グループの52の急性期の病院で1週間に平均1,908件です。4つの試験の病院では、AIがそれに加えて1週間に平均14件を新たに見つけました。
論文の要旨は、AIが当たりとした患者と、そうでない患者も比べています。当たりとした患者のほうが、集中治療室に5日以上いた割合(30.2%と8.2%)や、病院で亡くなった割合(14.9%と0.6%)が高くなっていました。これは患者の違いを示す数字で、AIを使ったことで患者の結果が変わったことを示す数字ではありません。
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ 確認できていない点 |
|---|---|
| 話し合いのあるカルテの74%を見つけた | 本番で見落とした記録の数 |
| 当たりとした325件の86%が専門家と一致した | 一致しなかった14%の中身 |
| 約2か月で3万7000人分を拾った | AIなしでは拾えなかった人数 |
| 医師らが話し合いに気づきやすくなる | 医師らが画面を見た回数、かかった時間 |
| 書類の手間が減る | 手間を測った数字 |
| 費用の面でも続けられる | かかった費用の額 |
凡例:📢=論文の書き手が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:Journal of Pain and Symptom Management の論文の要旨(2026-10-22)と、書き手らの学会 SAIL 2025 のポスター。本文の全文は読めていません。書き手はすべてプロビデンスの人で、利害の関係はないと書いています
保険の会社で、契約の窓口の相談の記録を扱う担当者なら、「受け取る人を変えたい」といった決まった種類の相談がある記録をAIで探し、まとめの画面に出せます。先に担当者が「この話があれば当たり」という決まりを作り、数百件の記録に答えを付けておくと、AIの判定と比べられます。
介護の相談員なら、家族との面談の記録から、最期をどこで過ごしたいかの話を拾い、次の担当者に引き継げます。
どちらも本番では、AIが当たりとした記録から抜き取って人が読み直します。
論文は、AIで話し合いの記録を探せるようにすると、患者の希望に沿ったケアにつながると書いています。その効果を測った数字は要旨に出ていません。