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アンソロピックのフェルマー最終定理。リーンで端から端まで形式化した

2026.09.16
アンソロピックのフェルマー最終定理。リーンで端から端まで形式化した

アンソロピック(Anthropic)は2026年9月4日、フェルマー最終定理(Fermat's Last Theorem。以下FLT)を、証明支援言語リーン(Lean)で端から端まで形式化した、と研究記事で伝えました。クロード(Claude)のエージェント群が、既存の証明を機械が一行ずつ検査できる形へ書き直した、という説明です。以下は、同社の研究ページとバザード氏のブログ、公開リポジトリまわりの整理です。

中心は、新しい数学を見つけたことではありません。すでに人間が通した議論を、抜けのない形に書き直し、コンピュータが通したかどうかを見ることにあります。

何が起きたか

FLTは、「2より大きい自然数の指数では、正の整数のべきの和が同じ指数のべきにならない」という主張です。アンドリュー・ワイルズ(Andrew Wiles)氏が1995年に正しい証明を発表し、リチャード・テイラー(Richard Taylor)氏との修正を経て受け入れられました。人間向けの証明は明らかな段を飛ばすが、リーンはその飛ばしを許しません。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのケヴィン・バザード(Kevin Buzzard)氏が2024年に始めたコミュニティ形式化は、初期段階の設計だけでも86ページ規模で、年単位の作業が目安でした。アンソロピックの研究者ティエンイー・ポン(Tianyi Peng)氏は、クロードで進むかを試し、結果が想定を超えました。同社によると、エージェントは約11日で端から端までの形式化を終え、リーン約1300万行を書きました。途中で約3万300本の定理を証明し、最終証明では約2万9500本を使いました。

初期の試みは、局所では進んでも全体の状態を見失い、協調が崩れました。失敗分は、最終の決まりきった繰り返し以外の行(非ボイラープレート)の約7%に残りました。成功したのは、ポン氏らが作った協調基盤プルーブツーミー(Prove2Me)と、クロードコード(Claude Code)系の実行の枠組み(ハーネス)を組み合わせたあとです。定理の依存は一方通行のつながり図(有向非巡回グラフ)で持ち、文と証明をファイル分割し、自然言語の説明で再利用しやすくしました。

使ったのは、クロード・フェイブル5.1(Claude Fable 5.1)に近い内部の汎用研究モデルで、出力の単位(トークン)は約60億です。証明の道筋は、ワイルズの議論をダルモン(Darmon)・ダイヤモンド(Diamond)・テイラーの解説に沿って簡略化した線です。新しい定理の発見ではなく、既存線の形式化です。

成果物はギットハブ(GitHub)のanthropics/fermats-last-theoremに公開されています。リーンの標準公理は3つのみで、プレースホルダ(sorry)や追加公理はありません。コンパレータ(comparator)で、証明した文がマスリブ(Mathlib。リーンの主要な数学ライブラリ)側のFLT文と一致します。別の検査プログラム(カーネル)のナノダ(nanoda)での検査にも触れています。

バザード氏は同日のブログでリポジトリをコンパイルし、コンパレータを実行して通りました。数学として新しいことはほとんどなく、人間が読む動的な解説やマスリブへの取り込みは別仕事だ、と分けて書いています。コンパイルは時間がかかり、メモリも大きいです。

何が変わったか

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
約11日で端から端までのリーン形式化(アンソロピック) 11日間の全エージェントログの公開再現、外部が同じ工程を同じコストで再実行した記録
リーン約1300万行、最終で中間定理約2万9500本(同) 行数・定理数の第三者による再集計定義の統一
出力の単位(トークン)約60億、内部モデル(フェイブル5.1相当の目安)(同) 公開モデルでの同規模再現、実費の独立監査
標準公理3つのみ、コンパレータでマスリブ文と一致(同) 中間定理の名前が意図どおりかを機械が保証すること(リポジトリ自身も限界を記す)
プルーブツーミー+実行の枠組み、初期失敗が約7%(同) 失敗キャンペーンの詳細な公開データセット
バザード氏がコンパイルしコンパレータが通った(クセナブログ) 本稿執筆時点での、他多数の独立グループによるフル再ビルド一覧
ナノダ等の追加検査への言及(アンソロピック/二次整理) 読者環境でのナノダ再実行の一般化手順の簡略化

工程の速さやトークン量は、アンソロピック自身の説明です。リーン成果物が通った、という点は、バザード氏のコンパイル報告が独立の確認になります。

誰に関係するか

規格や安全論証の文書では、結論の命題だけを機械検査できる形にし、人が読む物語調の説明は後から足します。製造の設計変更では、変更が満たすべき条件を検査可能な文にし、レビュー時間を結論文の一致に寄せます。受託開発の受け入れでは、仕様の「満たした」を検査可能な条件に直し、デモ動画だけに頼らない確認にします。

まとめ

アンソロピックが示したのは、FLTの既存証明をリーンで端から端まで形式化し、機械が検査できる形にしたことです。約11日・約1300万行・中間定理約2万9500本は同社の説明です。新しい数学の発見ではありません。バザード氏はコンパイルとコンパレータの通過を述べ、一方で人間向けの解説やライブラリ整備は別だと分けています。

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)