韓国の論文サイトを運営するヌリメディア(Nurimedia)は2025年1月、論文PDFから著者名や参考文献を手で写す作業を、ページの配置を読み取るAIに替えました。AIを作った会社と大学の論文は、精度が97%を超えたとしています。ただし、何を正解にしてどう測ったかは書かれていません。
この事例で分からないこと
ヌリメディアは韓国最大の論文サイト「ディービーピア(DBpia)」を運営しています。約1138の学術誌、89万本を超える論文を載せ、毎月1万本を超える論文が加わります。大学や公的機関など1100を超える機関が契約しています。
著者で探す、関係する論文をすすめる、といった機能には、論文ごとの題名・著者名・要旨・参考文献のデータが要ります。以前は職員が論文のPDFを1本ずつ開き、項目を写し、参考文献を打ち直していました。管理者の一人は、12ページで表が3つ、図が2つ、参考文献が25本ある論文だと、20分以上かかることもあったと話しています。
市販の文字読み取り(OCR)と言語モデルの道具も使いました。しかし、図や表のあるページでは読む順番が崩れ、図の説明文の取り違えも起きました。費用が手作業より高くつくこともありました。
ヌリメディアは韓国の新興企業オールビッグダット(ALLBIGDAT)と慶熙(キョンヒ)大学の研究者が作った「データラックス(DATALUX)」を入れました。ページの画像から部分を見つける方式(DINO)に、文字読み取りで得た文字の情報を合わせ、どこが題名で、どこが参考文献かを見分けます。論文がサイトに届くと、見分けた結果をデータにして、データベースと検索、言語モデルの機能に渡します。
| 📄 論文が書く数字 | 中身 |
|---|---|
| 精度 | 97%超 |
| 手で付ける作業 | 95%減 |
| 過去の論文約30万本の費用 | 手作業の見込み約8300万円(55万4000ドル)→ 約345万円(2万3000ドル)、24分の1 |
| 作業の速さ | 1年の作業が6週間(52週÷6週で8.7倍) |
| 手作業の費用の前提 | 1ページ40秒・1論文8ページ・時給約3000円(19.93ドル)と仮定し、1本約280円(1.85ドル) |
出典:論文の「Business Implications」。1ドル150円で換算。
見本のうち試験に取っておいた分では、もとの DINO より、正しく見分けた度合い(mAP)が約2.1%上がりました。これは仕組みどうしの比べで、仕事の成果の数字ではありません。
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 精度は97%を超える | 何を正解として、どの書類で測ったか。手で写したときの誤りとの比べ |
| 費用は24分の1 | 手作業の実際の費用(「1ページ40秒」などの仮定から計算) |
| 1年の作業が6週間 | 何をどう測ったか(52週を6週で割った数字) |
| 職員は繰り返しの入力から離れた | 職員の時間の実際の変化 |
| 開発した会社と大学の論文 | ヌリメディア自身の発表。外の人による確かめ |
凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:Kim ほか、AAAI-26 の論文(2026年)
申込書や報告書、カタログなどのPDFから、項目を社内のデータベースや表計算ソフトに手で写している事務の仕事なら、次のように進められます。写す項目の種類を先に決め、過去の書類で「どこがどの項目か」に印を付けた見本を作ります。見た目と文字の両方を見るAIに見分けさせ、人が確かめてから入れます。始める前に、手で写したときの1件の時間と誤りを実際に測っておくと、あとで比べられます。学ばせ直しは、毎月ではなく新しい書式が出たときだけにします。
AIの仕事は、ページの各部分が題名か、図か、参考文献かを見分けることです。そのために、ヌリメディアの論文約700本に人が手で印を付け、見本にしました。精度も費用も開発した側の論文の数字で、手作業の時間と誤りを実際に測った数字はありません。