インドのスポルタ・テクノロジーズ(Sporta Technologies)は、クリケットの成績アプリで質問に答えるAIを、データベースの表の作りを覚えさせた自社のモデルに替えました。それまでは外の会社の言語モデルに、表の作りなどの説明を毎回1万7000トークン渡していました。トークンは、言語モデルが文章を区切って数える単位です。新しいモデルに渡すのは質問と短い合図だけで、100トークン未満です。論文によると、3万件の実際の質問で、AIの書いた問い合わせがエラーなく動いた割合は95.6%から98.4%になりました。
スポルタは、インドのファンタジースポーツ「ドリーム11(Dream11)」の親会社です。ファンタジースポーツは、実在の選手で自分のチームを組み、実際の試合の成績で点を競う遊びです。クリケットの成績アプリ「クリキュー(CriQ)」は、ログインして使う人が35万人います。
アプリには「IPL(インドのクリケットのリーグ)で打率が一番高い選手は」のような質問に答える機能があります。AIが質問をデータベースへの問い合わせの言葉(SQL)に直し、データベースで実行して答えを返します。データベースには選手の通算成績から1球ごとの記録まで、つながった表がたくさんあります。
最初の試作では、グーグルの言語モデル「ジェミニ 2.0 フラッシュ(Gemini 2.0 Flash)」に渡す説明は1万トークンで、エラーなく動いた割合は82.0%でした。返答が数秒を超えることも多く、途中でやめる利用者が増えた、と論文は書いています。失敗した質問を数千件調べて書き方の決まりを足し、説明を1万7000トークンにすると、95.6%まで上がりました。ただ、外の会社への料金はトークンの数で決まるため、説明が長いほど高くつきます。
公開されているモデル「クウェン(Qwen)3」の80億パラメーター版に、2段階で追加学習をさせました。パラメーターの数は、モデルの大きさの目安です。合図には、このデータベースにつけた「cricket stats db v1」という名前を使いました。
学習用の「正しいSQL」は記録から集めた1万1000件の質問をもとに、別の言語モデル(QwQ 32B)に作らせました。SQLが動かなければエラーを見せて直させています。できたモデルは自社の機械で動かし、ジェミニの仕組みと入れ替えました。
| 📊 3万件の実際の質問 | 長い説明のジェミニ(基準) | 自社で学ばせたモデル |
|---|---|---|
| エラーなく動いた割合 | 95.6% | 98.4% |
| 正しい答えを返した割合 | 89.4% | 92.5% |
| 毎回渡す説明 | 1万7000トークン | 100トークン未満 |
出典:論文の図5。「正しい答えを返した割合」は、エラーなく動いたSQLのうち正しいデータを返した割合で、言語モデルが判定した。
1段階目を省いて短い合図だけで学ばせると、エラーなく動いた割合は74.96%でした。表の作りを覚える例1万5000件だけを外すと、87.2%(正しい答えは79.5%)にとどまりました。
費用は、質問ごとに払う外の料金から、自社の機械の決まった費用に変わったとしていますが、金額は出ていません。
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 正しい答えの割合は89.4%から92.5%に上がった | 人が確かめた結果(判定は言語モデルで、学習用の正しいSQLも別の言語モデルが作った) |
| 費用は決まった費用に変わり、長い目で得になる | 外の料金と自社の機械の費用の金額 |
| 試作は返答が遅く、途中でやめる人が増えた | 入れ替え後の返答の速さと、やめる人の割合 |
| 表の作りが変わらない仕組みに向く | 表の作りを変えたときの学ばせ直しの手間 |
| 会社自身の論文 | 外の人による確かめ |
凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:Soni ほか、AAAI-26 の論文(2026年)
売上や在庫、勤怠などの社内データベースに、営業や店長が普段の言葉で質問できる仕組みを作っているなら、同じやり方を試せます。表の作りがあまり変わらないデータベースでは、毎回長い説明を外の言語モデルに渡す代わりに、表の作りを覚えさせたモデルを自社で動かす手があります。まず実際の質問の記録を集め、質問と正しいSQLの組を作ります。動いたかどうかと、正しい答えかどうかは、別に数えます。表の作りを変えるたびに学ばせ直しが要るので、変える頻度を先に確かめておきます。
この結果は、1つのアプリの、作りがほとんど変わらないデータベースで出たものです。正しさの判定も、学習用の正しいSQL作りも、言語モデルが受け持ちました。入れ替えたあとの返答の速さと費用は、数字が出ていません。