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ドリーム11の親会社スポルタ、クリケットの成績に答えるAIにデータベースの表の作りを覚えさせ、毎回渡していた長い説明をなくした

2026.10.23
ドリーム11の親会社スポルタ、クリケットの成績に答えるAIにデータベースの表の作りを覚えさせ、毎回渡していた長い説明をなくした

インドのスポルタ・テクノロジーズ(Sporta Technologies)は、クリケットの成績アプリで質問に答えるAIを、データベースの表の作りを覚えさせた自社のモデルに替えました。それまでは外の会社の言語モデルに、表の作りなどの説明を毎回1万7000トークン渡していました。トークンは、言語モデルが文章を区切って数える単位です。新しいモデルに渡すのは質問と短い合図だけで、100トークン未満です。論文によると、3万件の実際の質問で、AIの書いた問い合わせがエラーなく動いた割合は95.6%から98.4%になりました。

何が起きたか

スポルタは、インドのファンタジースポーツ「ドリーム11(Dream11)」の親会社です。ファンタジースポーツは、実在の選手で自分のチームを組み、実際の試合の成績で点を競う遊びです。クリケットの成績アプリ「クリキュー(CriQ)」は、ログインして使う人が35万人います。

アプリには「IPL(インドのクリケットのリーグ)で打率が一番高い選手は」のような質問に答える機能があります。AIが質問をデータベースへの問い合わせの言葉(SQL)に直し、データベースで実行して答えを返します。データベースには選手の通算成績から1球ごとの記録まで、つながった表がたくさんあります。

最初の試作では、グーグルの言語モデル「ジェミニ 2.0 フラッシュ(Gemini 2.0 Flash)」に渡す説明は1万トークンで、エラーなく動いた割合は82.0%でした。返答が数秒を超えることも多く、途中でやめる利用者が増えた、と論文は書いています。失敗した質問を数千件調べて書き方の決まりを足し、説明を1万7000トークンにすると、95.6%まで上がりました。ただ、外の会社への料金はトークンの数で決まるため、説明が長いほど高くつきます。

AIの使い方

公開されているモデル「クウェン(Qwen)3」の80億パラメーター版に、2段階で追加学習をさせました。パラメーターの数は、モデルの大きさの目安です。合図には、このデータベースにつけた「cricket stats db v1」という名前を使いました。

  1. 表の作りを覚える段階: 長い説明つきでSQLを書く例8万件と、「cricket stats db v1 の表の作りを全部書いて」と聞かれて答える例1万5000件で学ばせました
  2. 短い合図で使う段階: 質問とこの名前だけでSQLを書く例15万件で学ばせました

学習用の「正しいSQL」は記録から集めた1万1000件の質問をもとに、別の言語モデル(QwQ 32B)に作らせました。SQLが動かなければエラーを見せて直させています。できたモデルは自社の機械で動かし、ジェミニの仕組みと入れ替えました。

結果

📊 3万件の実際の質問 長い説明のジェミニ(基準) 自社で学ばせたモデル
エラーなく動いた割合 95.6% 98.4%
正しい答えを返した割合 89.4% 92.5%
毎回渡す説明 1万7000トークン 100トークン未満

出典:論文の図5。「正しい答えを返した割合」は、エラーなく動いたSQLのうち正しいデータを返した割合で、言語モデルが判定した。

1段階目を省いて短い合図だけで学ばせると、エラーなく動いた割合は74.96%でした。表の作りを覚える例1万5000件だけを外すと、87.2%(正しい答えは79.5%)にとどまりました。

費用は、質問ごとに払う外の料金から、自社の機械の決まった費用に変わったとしていますが、金額は出ていません。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 公表されている説明 ⚠️ こちらで確認できていないこと
正しい答えの割合は89.4%から92.5%に上がった 人が確かめた結果(判定は言語モデルで、学習用の正しいSQLも別の言語モデルが作った)
費用は決まった費用に変わり、長い目で得になる 外の料金と自社の機械の費用の金額
試作は返答が遅く、途中でやめる人が増えた 入れ替え後の返答の速さと、やめる人の割合
表の作りが変わらない仕組みに向く 表の作りを変えたときの学ばせ直しの手間
会社自身の論文 外の人による確かめ

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:Soni ほか、AAAI-26 の論文(2026年)

誰に関係するか

売上や在庫、勤怠などの社内データベースに、営業や店長が普段の言葉で質問できる仕組みを作っているなら、同じやり方を試せます。表の作りがあまり変わらないデータベースでは、毎回長い説明を外の言語モデルに渡す代わりに、表の作りを覚えさせたモデルを自社で動かす手があります。まず実際の質問の記録を集め、質問と正しいSQLの組を作ります。動いたかどうかと、正しい答えかどうかは、別に数えます。表の作りを変えるたびに学ばせ直しが要るので、変える頻度を先に確かめておきます。

まとめ

この結果は、1つのアプリの、作りがほとんど変わらないデータベースで出たものです。正しさの判定も、学習用の正しいSQL作りも、言語モデルが受け持ちました。入れ替えたあとの返答の速さと費用は、数字が出ていません。

参考文献

  • Chinmay Soni、Shivam Chourasia、Gaurav Kumar、Hitesh Kapoor「Schema on the Inside: A Two-Phase Fine-Tuning Method for High-Efficiency Text-to-SQL at Scale」Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence 40(47), 40110–40117、2026-03-14、https://ojs.aaai.org/index.php/AAAI/article/view/41446 (doi:10.1609/aaai.v40i47.41446)、確認日 2026-10-23

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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