ENTRY

◀︎ AI NEWS TOPへ

ドイツのチーズ熟成庫。世話ロボットが撮った写真をAIが読み、カビを早く見つける

2026.09.19
ドイツのチーズ熟成庫。世話ロボットが撮った写真をAIが読み、カビを早く見つける

ドイツ・アルゴイ地方の伝統乳業、ゲブリューダー・バルダウフ(Gebr. Baldauf GmbH & Co. KG)は、熟成庫のチーズ輪を見る仕組みを自動化しています。オーストリアの自動化会社エーベルレ・オートマティッシェ・システーメ(Eberle Automatische Systeme GmbH & Co. KG)が仕組みを作りました。スイスのロイ・アンラーゲンバウ(Leu-Anlagenbau)の移動式世話ロボットと、エムブイテック(MVTec)の産業用画像ソフトハルコン(HALCON)を組み合わせています。エーベルレ公式(2026年3月26日)、エムブイテックの成功事例、専門媒体IN Food(2026年3月20日)が、この導入を紹介しています。

最長14か月の熟成で人手では回しきれない表面点検を、世話ロボットの4K画像と深層学習(ディープラーニング。画像から特徴を学ぶ手法)で全数に近づけ、異常を早く見つけて手入れを変えます。

何が起きたか

チーズ輪は、空調した庫で最大14か月ほど熟成します。保管コストを抑え、廃棄を減らすには、カビの有無を定期的に見る必要があります。ただし数千輪を人がすべて見るのは事実上むずかしい、とエーベルレのマシンビジョン技術者ドリアン・ケープフレ(Dorian Köpfle)氏は指摘します。バルダウフから、自動化の依頼が入りました。

世話の前に、マシンビジョン(機械の目)でカビや傷などの欠陥を見ます。カメラ画像はハルコンで解析し、結果はデータベースに残ります。バルダウフはWeb画面から、早い段階で不良輪を把握し、手入れの仕方を変えられます。同時に、移動ロボットがブラシや手入れ液で表面を整え、不要なぬめりを落とします。

仕組みは次のとおりです。棒状の照明(バー照明)と4Kカラーのラインスキャンカメラ(細長いセンサーで高解像度の色画像を撮るカメラ)を載せた世話ロボットが、庫内を回ります。板の上のチーズ輪を、最大3輪ずつ扱います。1組ごとに画像を撮り、画像を整える処理(前処理)のあと乳業側の中央PCへ送り、深層学習で分類します。位置データも送り、チーズの種類と固有IDを結びつけます。解析結果は倉庫管理システムからも見られます。エーベルレは自社のストレージ(Storage)ソフトとハルコンを併用し、手入れの記録も残します。

チーズの種類や熟成段階ごとに見た目が変わり、人が決めた条件だけで見る従来の画像処理(ルールベース)だけでは限界がありました。そこで深層学習で異常を見分けます。エムブイテックのフェリックス・ポドホルスキー(Felix Podhorsky)氏によると、まず注目する領域を決め、そのあと分類と解析を行います。エーベルレのクリストフ・ムクセル(Christoph Muxel)氏は、カメラの種類が変わっても使いやすい点がエムブイテックを選ぶ理由だとします。

いまは倉庫管理側で画像を分類できる段階です。種類と熟成段階をまたいだ完全な自動分類は、今後の目標です。

何が変わったか

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
2024年12月から稼働。期待を上回った(エーベルレ/ケープフレ氏) 廃棄削減率・工数減の独立数値
最大3輪を同時に扱い、手入れ前にマシンビジョンで欠陥を見る 1日あたりの点検輪数・サイクル時間
4Kカラーラインスキャン+バー照明。中央PCで深層学習分類 学習画像枚数・モデル構成の公開詳細
100%の検査率・同じ基準。早期検知で廃棄減。デジタル追跡(エムブイテック/エーベルレ) 「100%」の定義と実測ログ
熟成は最大14か月。人手では数千輪の点検は事実上不可能(依頼背景) 導入前の人手点検の頻度と抜け漏れ率
種類・熟成段階をまたぐ完全自動分類は今後の目標 全種対応の完成時期

誰に関係するか

建材や木材の長期保管場でのカビ・ひび点検、塗装やメッキの変色監視、ワインや乾物の長期熟成庫など、見た目が時間とともに変わる品を人が巡回している現場でも使えます。移動する世話・巡回装置で撮影し、中央の深層学習で分類し、異常があれば手入れや処置を変えます。結果は倉庫管理やWeb画面で追えるようにします。

まとめ

世話の前に4Kで撮り、中央の深層学習で分類し、異常があれば手入れを変えます。結果は倉庫管理やWeb画面で追います。2024年12月稼働や100%検査・同じ基準は、自動化会社エーベルレとソフト会社エムブイテックの説明です。

参考文献

  • AI meets cheese production: rethinking efficiency(Eberle、2026-03-26)、https://www.eberle.at/en/aktuelles/ai-meets-cheese-production-rethinking-efficiency/ 、確認日 2026-09-19
  • Revolutionizing cheese production with AI and machine vision(MVTec)、https://www.mvtec.com/application-areas/success-stories/article/revolutionizing-cheese-production-with-ai-and-machine-vision 、確認日 2026-09-19
  • AI vision moves deeper into cheese ripening(IN Food、2026-03-20)、https://in-food.co.uk/ai-vision-moves-deeper-into-cheese-ripening/ 、確認日 2026-09-19

Tags

タグ一覧へ ▶︎

Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)