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ストライプの社内知識AI「カイ」。非エンジニア向けに基盤を組んだ

2026.09.21
ストライプの社内知識AI「カイ」。非エンジニア向けに基盤を組んだ

ストライプ(Stripe)は、社内の知識を扱うAI(ナレッジAI)基盤「カイ(Kai)」を2026年4月に公開した、と2026年7月30日付の自社開発者ブログで伝えました。日本向けの説明は、2026年9月17日付のストライプジャパン発表にもあります。対象はコーディングだけでなく、営業・財務・カスタマーサクセスなど、エンジニア以外の日常業務です。利用率や成約件数の変化は、いずれもストライプの自社測定です。

何が起きたか

カイは、社内のデータベース照会、商談前のアカウント調査、障害の優先付け、売上シナリオの試算、コンプライアンス確認など、知識業務向けのエージェント基盤です。専用のWebアプリとスラック(Slack)から使え、社内ツールへ埋め込むための共通の窓口(API)もあります。

背景として、ストライプはノーコードのエージェント作成で社内に4,000以上のエージェントができ、似た作りの乱立と監視負担が増えました。一方、コーディング向けエージェントは非エンジニアにはセキュリティと運用の壁が高かった、という課題もありました。そこで、共通の窓口(API)、部署がスキルやエージェントを作る管理画面、セキュリティを担う実行環境、の三層に分けました。管理画面はエージェントスタジオ(AgentStudio)と呼びます。

実行環境では、やり取りごとに隔離された作業場(サンドボックス)と、一時ファイル用の仮想ファイルシステムを用意します。エージェントは、1,000を超えるスキルや社内ツールから、その場で必要なものを選んで使います。

長いやり取りでも文脈を保ち、最長で932ターンのセッションが記録されました。データ分析を中心にしたセッションは、全社で毎日5,000を超えます。

基盤の一部には、ラングチェーン(LangChain)の「ディープ・エージェント(Deep Agents)」を使っています。2026年8月3日付のラングチェーン側の解説では、500を超える社内のモデル・コンテキスト・プロトコル(Model Context Protocol、MCP)ツールがあり、スキルの選択がツールの読み込みを決めます。

安全の境界(ガードレール)の例として、無関係な二つの顧客データを同じ分析に混ぜない、というルールを挙げます。利用者にアクセス権があっても、その仕事の文脈では見せない、という境界を、システム側で守ります。

何が変わったか

以下の表では、GTM(営業・マーケ・カスタマーサクセスなど顧客接点の部門)、AE(アカウントエグゼクティブ=担当営業)、同じ入社時期の集団(コホート)という語を使います。

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
週次利用率83%(全社の週次利用者、との説明。GTMはほぼ全員)(stripe.dev 2026-07-30)。GTM部門の83%が毎週利用(ストライプジャパン発表/PR TIMES 2026-09-17)。LangChainは全体83%/GTM 87% 独立監査、分母の定義、計測期間の詳細
2026年4月リリース後2週間で社内に急速普及(同) 当時の利用者数の内訳、ロール別の伸び
AEが使った週は、使わなかった週と比べ活動量2倍・商談17%増・売上見込み26%増・成約39%増(同) 因果の切り分け、季節要因、サンプル規模
新入社員(GTM)の利用は既存比2.7倍。同じ入社時期の集団内で、ヘビーユーザーはライト比で売上80%多い(同) コホートの定義、ヘビー/ライトの閾値
年2万5000時間を管理業務から売上寄りの業務へ移した(同) 時間の集計方法、対象業務の一覧
1,000超スキル、毎日5,000超のデータ分析セッション、最長932ターン(同) スキル品質の評価基準、失敗率
共通API/エージェントスタジオ/実行環境の三層。セッション隔離と仮想ファイルシステム(同) 読者環境での同構成の再現手順
ディープ・エージェント採用、500超MCP、スキル選択でツール動的読込(LangChain 2026-08-03) ストライプ社内の評価指標の公開

誰に関係するか

受託やSaaSの社内では、部署ごとのプロンプト乱立を止め、共通の実行環境と管理画面にスキル登録を寄せます。接骨院やクリニックの事務では、予約・在庫・案内の手順を短いスキルに分け、個人情報はセッションごとに閉じます。旅館やビジネスホテルでは、予約変更と在庫確認の下調べだけを機械に寄せ、割引や特別対応の最終判断は人が行います。

まとめ

共通の実行環境と管理画面を先に用意し、部署がスキルと接続先を持ち、生成と分析はセッション単位の隔離環境で行い、最終の判断は人が行います。

参考文献

  • Meet Stripe’s Knowledge AI Platform(stripe.dev、2026-07-30)、https://stripe.dev/blog/meet-stripes-knowledge-ai-platform 、確認日 2026-09-20
  • Stripe インサイト:Stripe の非エンジニア社員のための AI プラットフォーム「Kai」(ストライプジャパン PR TIMES、2026-09-17)、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000127.000077879.html 、確認日 2026-09-20
  • How Stripe Built Kai on Deep Agents in 1 Week(LangChain Blog、2026-08-03)、https://www.langchain.com/blog/how-stripe-built-their-knowledge-ai-platform-on-deep-agents 、確認日 2026-09-20

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)