日立製作所(Hitachi)は、製造業の設計業務を支援する「設計ナレッジシステム」を、次世代AIソリューション群「エイチマックス・インダストリー(HMAX Industry)」の新たなラインとして、2026年9月10日付の自社プレスで発表しました。提供開始の時期は、二次報道のクラウドWatch(2026年9月11日)で2026年7月と伝えられています。中心は、熟練者の判断を設計ルールとして蓄え、三次元形状の設計データ(3D CAD)の検図を機械で先に回す仕組みです。100%抽出などの数字は、いずれも日立側の説明です。
設計の現場では、熟練者の経験、技術文書、過去の不具合、三次元の形状データなど、ばらばらの情報を踏まえて判断します。知見が人に寄り、確認に時間がかかり、見落としや手戻りが起きやすくなります。
設計ナレッジシステムでは、まず人工知能(AI)のエージェントが、熟練者のノウハウや過去トラブルなどの技術文書をもとに、言葉にしにくい経験をルールへ直します。プロンプト(指示文)を都度書かなくても、テキストや図表から設計ルールを抜き、設計ナレッジとして一か所に蓄えます。蓄えた内容は、チャットボットから自然言語で検索できます。
次に、蓄えたルールからチェック用のプログラムを自動で作り、日立独自の「形状認識関数データベース」と組み合わせます。部品の穴、曲げ、距離などを取る関数があらかじめ入っており、製造業でよく使う標準形式(STEP形式)の三次元形状モデルを対象に、ルール違反の箇所を画面上で示します。設計者が自然言語で書いたルールからも、生成AIと連携して形状チェック用のプログラムを作ります。
自ら最初の利用者になる「カスタマーゼロ」として、株式会社日立ハイテク(Hitachi High-Tech)でプロトタイプを試しました。対象は板金・製缶図面の検図です。過去3年分の検図記録のうち、すでに不備と分かっている案件に対し、曲げや打ち抜き・切断が難しい箇所、寸法の不備などを、プロトタイプが自動で100%抽出しました。注記では、当該不備案件に対する結果だと書かれています。
位置づけとしては、設計者向けの空間コンセプト「ディーアイダブリュー(DIW、Design Insight Workspace)」の中核です。品質保証向けの品質ナレッジシステム(2026年6月4日発表)に続く、設計側の製品です。将来は製造部品表(BOM)や製造工程表(BOP)の自動生成、類似形状の試作検証などへ広げます。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 2026-09-10発表。提供開始は2026年7月(クラウドWatch。日立プレス本文は開始を述べるが月の明示なし)。エイチマックス・インダストリーの新ライン(日立プレス) | 価格、対応CAD製品の一覧、導入社数 |
| AIエージェントが技術文書から設計ルールをプロンプト不要で抽出(同) | 抽出精度の全体指標、誤抽出率、対象文書の件数 |
| チャットボットから自然言語でナレッジ検索(同) | 検索の適合率・再現率の公開値 |
| ルール由来プログラム+形状認識関数でSTEPの三次元CADを自動チェックし違反を可視化(同) | 他社CAD・他フォーマットでの再現手順 |
| 自然言語ルールからチェックプログラムを生成AI連携で自動生成。穴・曲げ・距離などの関数を内蔵(同) | 生成プログラムのレビュー手順、失敗時の人手介入率 |
| 日立ハイテクのカスタマーゼロ。板金・製缶の検図記録(3年分)の不備案件で、困難加工箇所・寸法不備等を100%抽出(同※4) | 不備案件以外の全図面での見逃し率、本番運用の継続測定 |
| ディーアイダブリューの設計向け中核。品質ナレッジシステム(2026-06)に続く(同) | 両システムの連携手順の詳細公開 |
100%は、既知の不備案件に対するプロトタイプ結果です。すべての新規図面での見逃しゼロを、ここだけで確定はできません。
建築設備の改修図面では、ダクト干渉や寸法抜けのルールを先に登録し、一次洗い出しだけを機械に寄せます。造船の配管レイアウトでは、客先公差を短いルールにして出図前チェックに回します。金型や治具の受託では、客先ごとの寸法公差を短いルールとして登録し、出図前の自動検図に回します。自治体の公共工事の図面確認では、寸法表記の抜けや干渉の一次洗い出しだけを機械に寄せ、最終の合否は人が行います。いずれも、ルール化→形状チェック→人の最終判定、の順です。
技術文書から設計ルールを先に抜き、形状チェック用の関数と組み合わせて三次元CADの違反を可視化し、最終の合否は人が判断します。