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豪クイーンズランドの亜鉛選鉱。浮選の目標値をニューラル網ツインが閉ループで動かす

2026.09.27
豪クイーンズランドの亜鉛選鉱。浮選の目標値をニューラル網ツインが閉ループで動かす

オーストラリアのMMGは、クイーンズランド州のダガルド・リバー(Dugald River)選鉱所で、ハッチ(Hatch)のAIPC(AI-Assisted Process Control)を使い、亜鉛の浮選目標値を閉ループで動かしています。質量収支とニューラル網で作ったプロセスのデジタルツインが、短い周期でネット精鉱価値(NSR)を見ながら、16個の目標値を制御層へ返します。

MMG公式(2026年7月20日)とハッチ(2026年7月30日)が、稼働から1年を報じています。MetPlant 2026の技術論文が、設計・導入・試験の中身を詳しく書いています。

何が起きたか

ダガルド・リバーの選鉱所は、2017年から稼働しています。亜鉛の粗選・掃選(rougher-scavenger)は、すでに高い回収率まで改善が進んでいました。論文では、2024年の粗選・掃選回収は97.1%です。これ以上伸ばすには、フィードの品位・粉砕粒度などが時間帯で変わるたびに、空気量・薬液の一種(捕収剤)・泡深さ・活性化剤・pHなどの目標値を揃え直す必要があります。交代ごとに合わせ方がずれると、同じ原料でも結果がぶれます。

従来のルールベースや線形のモデル予測制御では、多変数の関係や、フィードの性質が変わるたびに操作してよい範囲(運転の窓)も動くことを十分に表せません。そこでサイトは、制御に組み込んだプロセスデジタルツインを選びました。

ツインの中核は、粗選と掃選を結んだ多変量モデルです。質量収支とニューラル網を組み合わせ、鉱石の性質など上流条件(ジオメタ)や粉砕条件、オペレータが触る操作変数から、品位と回収の位置を推定します。そのうえで、ネット精鉱価値の式に通し、短い間隔で目標値の組を更新します。

出力は制御層へ直接入り、対象は浮選の目標値16個です。オペレータは、ツインに任せる範囲を画面から指定できます。モデルの確からしさがしきい値を下回ると、制御は人手側へ戻ります。

2025年1月に閉ループ稼働を始めています。稼働後2か月の利用率は90%を超えました。執筆時点の年間累計は約75%です。モデルはおおむね6〜8週ごとに再学習・再投入し、オペレータが内側の操作窓を調整できる仕組みも後から足しています。

効果の数字は、経路で少し分かれます。ハッチのAIPC製品ページでは、すでに97%超の回路で亜鉛回収が0.5%改善しています。地方紙ノース・ウェスト・スター(North West Star)も同じ0.5%を報じています。投資回収は稼働後3か月未満だった、とMMG公式とハッチの1年報にあります。MetPlant論文のランダム化ブロック試験(2025年8月開始、オン/オフ、175シフト)では、粗選・掃選の亜鉛回収が+0.53%、統計の確かさは95%超でした。フィードの亜鉛品位と、合わせた精鉱品位には統計的な差はありませんでした。正式な評価は執筆時点で続いています。

ゼネラルマネジャーのティム・アクロイド(Tim Akroyd)は、常時オンの助手のようにプラントの動かし方を調整し、処理する鉱石1トンあたりの亜鉛を増やす、とMMG公式で語っています。上級の冶金担当(シニアメタラージスト)のアレック・マルコム(Alec Malcolm)は、「これまでのベンチマークを超えた」「目標に合わせて柔軟に仕立てられる」と言います。

何が変わったか

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
2025年1月に亜鉛粗選・掃選で閉ループ稼働(論文/MMG) 第三者による監査報告書の全文
目標値16個を制御層へ直接最適化。オペレータが任せる範囲を指定(論文) 16個の変数一覧の公開仕様
質量収支+ニューラル網の多変量モデル(論文) 学習データの生データと評価プロトコルの外部公開
稼働後2か月の利用率90%超。執筆時点の年間累計 約75%(論文) 利用率定義の独立再計算
回収+0.5%(製品頁・地方紙)。ランダム化試験で+0.53%・95%超の統計的確かさ(論文) 正式評価完了後の最終数値と第三者再現
投資回収は稼働後3か月未満(MMG/ハッチ) 投資額の内訳と感度分析の公開
確からしさ低下時は人手へ引き継ぎ。6〜8週の再学習(論文) 引き継ぎ回数と停止時間の独立ログ

誰に関係するか

化学プラントの反応器、食品の連続加熱、小さな塗装ラインなど、原料の性質が時間帯で変わり、目標値の合わせ方が人によってずれる現場があります。多変数の目標値を経済指標つきで揃え、モデルの確からしさが落ちたら人手に戻す、という使い方がここにあります。

まとめ

フィードが変わるたびに目標値を揃え直し、モデルの確からしさが落ちたら人手へ戻す閉ループです。オペレータは任せる範囲を指定し、多変数をネット精鉱価値つきで動かします。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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