ドイツのビットブルガー(Bitburger)は、クローネス(Krones)のリナトロニックAI(Linatronic AI)で、返却瓶の空瓶検査をしています。洗浄あとに残る水滴や泡と、汚れ・欠け・ひび・残液などを、人工ニューラル網(ANN)が分けます。本当に落とすべき瓶だけを外し、使える瓶の誤棄却を減らします。
クローネス公式の事例記事(2024年6月)が、共同開発から受入試験、現場運用までを伝えています。
ビットブルガーは、ドイツ南部アイフェル地方に本拠を置くビール会社です。従業員は約1,500人で、1日におよそ400万本を充填し、その約90%が返却瓶です。返却瓶を長く回し続けることが、同社の取り組みの柱のひとつです。洗ったあとの空瓶を、充填機の直前で検査し、汚れや欠け、残液などを落とす必要があります。
従来の空瓶検査は、画素の明るさなどを規則で比べる方式が中心でした。水滴や泡が欠陥に見えやすく、使える瓶まで落ちることがありました。クローネスの製品発表(2020年11月)でも、誤棄却の多くは水滴です。
2020年、クローネスがビットブルガーに、深層学習を使うリナトロニックAIの共同開発を持ちかけました。技術・持続可能性責任者のヨハネス・ハンケス博士(Dr. Johannes Hankes)は、品質を上げる新しいやり方に開いていました。両社は1970年代から取引があります。
ちょうど、2007年に入れた検査機(0.33リットルのガラス瓶を毎時5万本扱う線)の更新時期でもありました。現場はまず、従来機能のリナトロニックを使いながら、AI向けの準備を進めました。準備の本体は写真の注釈です。クローネスの検査チームが数万枚を1枚ずつ見て、泡か汚れか、使えるか棄却かを付け、そのラベル付きデータで教師あり学習のANNを作ります。
2022年11月、醸造と飲料の研究教育機関であるVLB(ベルリン)が、このニューラル網の検証と受入試験を行い、合格しました。その後、ビットブルガーでAI機能が本番稼働しています。電気保全責任者のベルント・クール(Bernd Köhl)は、「確実に棄却すべき瓶だけを落とせるようになった。以前は、まだ使える瓶まで外していた」と言います。
充填機の直前に、複数のカメラとセンサが並びます。輪郭・高さ・色・擦れを見、側壁を360度で撮り、口金と底の欠けを調べ、残液は高周波と赤外で見ます。欠陥と判定した瓶は、破片がラインに入らないよう封じられた排出シュートへ落とします。運用では、5万本を見るごとに、QRコード付きのテスト瓶を流し、想定した欠陥を検出できるかを確認してから通常生産へ戻します。
インタビュー時点で、8本あるボトリングラインのうち3本にリナトロニックAIが入っています。将来のラインにも載せる予定です。再調整の手間が減り、操作する人の負担も下がっています。
なお、クローネス製品発表の「水滴と他異常の区別で信頼性99.9%超」は、製品側の一般説明です。ビットブルガー固有の検出率%としては書いていません。バイエルンのホーフブロイハウス・フライジング(Gräfliches Hofbrauhaus Freising)も別の早期導入例です。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 2020年から共同開発。注釈付き数万枚でANNを学習(クローネス事例) | 注釈基準表とクラス定義の全文 |
| 2022年11月、VLBが検証・受入試験で合格(同) | 受入試験の測定条件と生データの公開 |
| 「棄却すべき瓶だけを落とす」とクール氏(同) | 導入前後の誤棄却率%の独立測定 |
| 8ライン中3ラインに導入。将来ラインにも予定(同) | 残り5ラインの導入日程 |
| 日産約400万本、返却瓶約90%。対象更新線は毎時5万本(同) | ライン別の実測スループット日誌 |
| 5万本ごとにテスト瓶で検出確認(同) | テスト不合格時の停止時間の独立記録 |
| 水滴と他異常の区別で信頼性99.9%超(クローネス2020製品発表) | ビットブルガー固有KPIとしての99.9% |
給食センターの返却食器、クリーニングの返却ハンガー、レンタル機材の返却点検など、洗ったあとに水滴や汚れが残り、無害な見た目と欠陥が混ざる現場があります。注釈で見分けを教え、第三者の受入試験を挟む使い方があります。
洗った返却瓶を、注釈付き写真で教えたニューラル網が水滴・泡と欠陥に分け、棄却を本当に必要な瓶だけに絞ります。第三者の受入試験を挟み、本番後もテスト瓶で検出を確かめます。