アンソロピック(Anthropic)は、社内の生命科学ラボの初期成果として、クロード(Claude)のエージェントがゲノムの配列データを読み、遺伝子を切って編集する技術として知られるCRISPRに似た反復配列を持つ新しい逆転写酵素の系を見つけたと発表しました。系の名前は配列関連逆転写酵素(array-associated reverse transcriptases)、略してARTです。発表は2026年9月23日付のニュースと、査読前のプレプリント「Autonomous AI agents discover reverse transcriptases with tandem repeat arrays」です。著者にはピーター・H・ユーン(Peter H. Yoon)氏、ジャヌカ・S・アトゥコーララーゲ(Januka S. Athukoralage)氏、エマニュエル・アメゼン(Emmanuel Ameisen)氏、エリック・カウデラー=エイブラームス(Eric Kauderer-Abrams)氏、ニコラス・T・ペリー(Nicholas T. Perry)氏、マシュー・G・デュラント(Matthew G. Durrant)氏が名を連ねます。機能はまだ分かっていません。以下の数字は、いずれもこのニュースとプレプリントに書かれた説明です。
アンソロピックは2026年春、一般のAIモデルが生物学の発見をどこまで早められるかを見る研究グループを作りました。対象は、DNAのデータからまだ性質が分かっていないタンパク質のまとまりを探し、仮説を出し、実験室で確かめることです。実験室はベイエリアにあり、バイオセーフティレベル1と2(BSL-1/BSL-2)だけを扱い、ヒトに感染する病原体は扱いません。実験室の作業は人間の科学者が行います。
調査の題材は逆転写酵素(RT)です。RNAをDNAに写す酵素で、細菌やファージの防御などにも使われます。エージェント基盤はクロード・ミトス5(Claude Mythos 5)です。研究の短い指示書から段階を分け、作業役と監督役のエージェントが計画と結果を共有記録に残しながら進めます。監督は途中の観察から新しい作業を開き、一連の調査(キャンペーン)は自分で伸びます。
プレプリントによると、エージェントは約19億(1.9 billion)の似たタンパク質のまとまり(クラスタ)の上でRTを普查し、近傍に繰り返し現れるタンパク質家族を候補パートナーとして採点しました。基準を通った16家族に加え、途中の観察から17番目が昇格し、それぞれ深掘りしました。
キャンペーンは119タスク、949のエージェントセッションです。エージェント時間にして77時間、処理の単位(トークン)にして約2.156億、実際にかかった時間(壁時計)で21.5時間で、途中の人間の介入はありません。ニュースでは、およそ950エージェント、2.1億トークン、21時間と概数で書いています。
17の候補パートナーのうち、これまで報告されていなかった関連として残ったのは3件です。残りは注釈の誤り、既に知られている系、あるいは特定の相棒ではない近傍の遺伝子でした。ARTは、決めたパートナー遺伝子の採点とは別の経路で出てきました。エージェントは細菌に感染する大型のウイルス(ジャンボファージ)のRTのそばにあるDNAを、そのまま文脈に読み込みました。そこで縦に並ぶ反復配列を目で拾い、「CRISPR様の反復配列では」と記録しています。反復の数と間隔を数え、既知の系や文献と比べ、新しい系だと判断して人間レビュー用の報告を出しました。研究チームはこの系統をARTと名付けました。
ARTの典型は、上流のタンパク質にならない反復配列(非コード)、RT、下流の専用パートナー遺伝子の三点です。環境などから集めたDNAの山(メタゲノム)と公開ゲノムの探索では、90%一致で95のRTクラスタが見つかり、うち28がRTの上流に検出可能な反復配列を持ちます。反復は3〜21コピーで、長さは15〜49塩基、コピーのあいだの配列(スペーサ)は120〜220塩基です。近傍にCRISPRの道具立ての遺伝子(cas)はなく、CRISPR配列そのものではありません。黄色ブドウ球菌のファージSA1(Staphylococcus phage SA1)の感染時系列データでは、ARTの配列が強く発現し、一つずつ分かれた短いRNAとして現れます。一次の機能や、RTがこれらのRNAをどう使うかは、まだ分かっていません。実験は続いています。
CRISPRの先駆者の一人であるフェン・チャン(Feng Zhang)氏(マサチューセッツ工科大学/ブロード研究所)は、ニュース上のコメントで、AIエージェントが生物学の発見に寄与する例だとし、RNAの反復配列と逆転写酵素の組み合わせは調べる価値がある、と述べています。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 2026-09-23、Anthropicニュースと査読前プレプリントでARTと生命科学ラボを公開 | 査読後の最終版での数値の変更の有無 |
| Claude Mythos 5が約19億タンパク質クラスタ上のRTを調査(プレプリント) | 他のモデルでの同型キャンペーンの再現 |
| 約20万RTクラスタ、9クラス、約1.1万遺伝子座、候補パートナー3564、17候補の深掘り(同) | 人間だけの同規模調査との所要時間の直接比較 |
| 119タスク、949セッション、77エージェント時間、約2.156億トークン、壁時計21.5時間、途中介入なし(同)。ニュースは約950/2.1億/21時間 | トークン単価や総費用の公開値 |
| 17候補のうち既報でない関連として残ったのは3件(同) | 棄却14件の一覧の第三者再分類 |
| エージェントがDNAを直接読み、縦列反復を認識してARTを報告(同) | Mythos 5以外での同じ発見経路の再現 |
| ARTは上流反復+RT+下流パートナー。95クラスタ中28が反復あり。反復3〜21コピー、15〜49塩基、スペーサ120〜220塩基。近傍にcasなし(同) | ARTの生化学的活性と、好きな配列で動かすように設計できるか(プログラム可能性) |
| SA1感染時に配列が高度に発現し、一つずつ分かれた短いRNAとして現れる(同) | RTがこれらのRNAを基質にする証拠 |
| 機能は未解明。BSL-1/BSL-2。実験室作業は人間(ニュース) | 一般人口や他ドメインへの外挿 |
機能やプログラム可能性の断定は、出典にもありません。キャンペーン規模とARTの構成・発現は、アンソロピック側の説明です。
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決めたパートナー遺伝子の採点のあと、生のDNAを読むステップを置き、そこで出た候補だけを人が実験で確かめます。機能が分かっていない段階でも、反復配列とRTとパートナーの三点は報告します。