ENTRY

◀︎ AI NEWS TOPへ

エヌビディアのクモ・タブラー。再学習なしの表予測でTabArena首位(ELO 1950)などを示したとする

2026.09.30
エヌビディアのクモ・タブラー。再学習なしの表予測でTabArena首位(ELO 1950)などを示したとする

エヌビディア(NVIDIA)は、表形式データの分類と回帰向けのオープン基盤モデル「クモ・タブラー(Kumo Tabular)」を公開しました。発表は2026年9月29日付のハギングフェイス(Hugging Face)ブログで、著者にはジンガン・ク(Jingang Qu)氏らが名を連ねます。ラベルの付いた行を文脈として渡し、まだラベルのない行の予測を、学習し直さず一度モデルを通す計算(前向き計算)で1回返します。タスクごとの再学習や特徴量の手作業、設定の試し回し(ハイパーパラメータ探索)は不要だと説明しています。TabArenaで総合首位、強さの相対スコア(ELO)1950、LimiX-2と比べて17倍高速といった数字は、いずれもこのブログに書かれたエヌビディア側の評価です。

何が起きたか

企業の機械学習では、顧客台帳、取引、センサの記録、請求、受注といった表が中心です。これまで多くは、木を順に足していく予測モデル(勾配ブースティング)で解いてきました。新しい予測の問いが出るたびに、ラベル集め、特徴量設計、探索、検証、配備を繰り返す流れが残りやすい、とブログは背景を述べています。大規模言語モデルが少数の例だけで新しい文書タスクを解く「文脈内学習」と同じ発想を、表にも当てはめるのがクモ・タブラーです。

モデルは、文章や表の並びをまとめて扱う仕組み(トランスフォーマー)で動きます。セルをモデルが読む単位に分け(トークン化)、数値とカテゴリは波の成分で数を表す手法(フーリエ特徴)などで埋め込みます。欠けた値は特別扱いし、補完を前提にしません。

続いて、どこを重視して読むかの仕組み(アテンション)を列方向と行方向で交互にかけ、行の要約を作ります。

最後の段では、ラベル付きの文脈行どうしと、未知のクエリ行から文脈行への参照により予測します。文脈はクエリを見ないため、キーと値を一度計算して再利用できます。分類ではクラスの確率を、回帰では999個の分位点(quantiles)から点推定と不確かさの目安を出します。

事前学習は人工の表だけです。表の仕組みを手順で作るモデル(構造因果モデル)から表の大きさや仕組み、欠け方を手続き的にサンプルし、木をいくつも重ねた予測器(木アンサンブル)で学べる信号がない表は捨てます。Small/Medium/Largeはおよそ2800万/1.15億/2.15億パラメータで、それぞれ約3500万/7100万/1.37億枚の人工表を見た、とします。訓練は行数を段階的に伸ばし、最終段では最大6万行・最大100列まで扱います。分類用と回帰用は別モデルです。

公開物はコード(GitHubのNVIDIA/structured-data-models)と重み(ハギングフェイスのnvidia/Kumo-Tabular)です。ライセンスはOpenMDW-1.1で、商用利用ができると書かれています。ライブラリは前処理やアンサンブル、多クラスへの拡張を含みます。分類の1パスは最大10クラスで、それ以上は誤りを直せる符号でクラスを増やす(誤り訂正符号)により、ライブラリ側が拡張します。

評価の中心はTabArenaです。調整済みの勾配ブースティングやAutoGluon、他の表形式基盤モデルを含む同ベンチで総合首位、ELO 1950とします。同じ単一のRTX 6000 Pro上の均一評価では、LimiX-2より17倍高速だとします。他ベンチでも首位側、と同ブログです。

制限も同ブログにあります。対象は数値列とカテゴリ列です。テキスト、画像、タイムスタンプは、用意された前処理で特徴に直します。訓練で見た規模を大きく超える表や、文脈行とクエリ行の分布がずれる場合は精度が落ちうるため、自前の控えデータで精度と当たり具合のずれ直し(校正)を確かめよ、と書いています。

何が変わったか

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
2026-09-29、Hugging Face BlogでKumo Tabularを公開 第三者によるTabArena等の再測定
ラベル付き行を文脈に、未知行を1回の前向き計算で予測。再学習・チューニング・特徴量設計なし(同) 実業務データでの誤分類率・校正曲線の公開値
人工表のみで事前学習。約28M/115M/215M。見た表約3500万/7100万/1.37億(同) 人工生成器の完全な公開物(「近日公開」と記載)
TabArena首位・ELO 1950。LimiX-2比17倍高速(単一RTX 6000 Pro)(同) 他GPU・他バッチ条件での同じ倍率
BeyondArena首位(ELO 1418、まだ伸ばせる余地の指標(Improvability)7.78%)。TALENTは分類精度・分類対数損失・回帰RMSEで総合トップ、平均順位6.67/3.98/4.22。ScoringBenchでLarge/Mediumが平均順位1位/2位(同) 各ベンチの生スコア表の独立再現
数値・カテゴリ中心。1パス最大10クラス。分布ずれに注意。ホールドアウト検証を推奨(同) 日本語業務表や小規模店舗データでの公開検証

首位や17倍高速は、エヌビディアが自らの評価設定で示した数字です。独立した第三者の再測定はありません。制限事項は同ブログに書かれており、適用前に自前データでの確認が前提です。

誰に関係するか

従業員100〜200人規模の卸では、過去の受注行を文脈に、翌週の需要だけを予測し、結果を控えの週で当てはめてから発注に使います。接骨院や整形外科では、レセプトや来院の表から再来の見込みを出し、予約枠の余裕を見る材料にします。ビジネスホテルや旅館では、過去の予約とキャンセルの行を文脈に、直近の空室リスクだけを短く出し、料金担当が上書きします。商店街の共同仕入れでは、品目と天候・イベント列をそろえた表で欠品の見込みを出し、自動確定せず確認リストに載せます。

まとめ

ラベル付きの行だけを渡し、未知行の予測を一度の計算で出します。ベンチの首位や速度は公開側の評価として残し、数値・カテゴリ以外や分布のずれがある表では、自前の控えデータで当たりを確かめてから使います。

参考文献

Tags

タグ一覧へ ▶︎

Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)