ブラジル北東部リオグランデ・ド・ノルテ州グアマレ(Guamaré)のマンギ・セコ(Mangue Seco)風力発電所では、発電機を動かすための励磁(れいじ。電流を整える側)まわりの放熱板(ヒートシンク)の過温停止を減らすため、温度を予測する人工ニューラルネット(ANN)を使いました。発電所にはエナコン(Enercon)E82(2.0メガワット)が39基あります。解析はデルフォス(Delfos)、運用はV2iエネルジア(V2i Energia)、保全はボベン・ウィンドパワー(Wobben Windpower)が関わりました。
繰り返し出ていたのは、「Failure Excitation: Overtemperature Heatsink」というアラームです。励磁側の抵抗器(レオスタット)の換気に関わる故障で、エネルギー損失の主因の一つになっていました。デルフォスとV2i、ボベンの共同検討では、根本は励磁装置の箱(キャビネット)内の、横向きに風を送るファン(クロスフローファン)です。ファンが止まると放熱板の温度が上がり、アラームが機械を止めます。
対策は、止まったあとに直すのではなく、止める前に手を入れる計画です。デルフォスはANNで放熱板温度を予測する道具を作りました。入力は外気温、ナセル(機械室)温度、タービン出力の三つです。実測温度が予測から大きくずれると、予知の知らせを出します。知らせを見た保全は、リスクの高い号機を優先し、風の弱い時間帯に修理を入れます。
実運用の比較は、2023年後半と2022年後半です。故障1件あたりの停止時間は40.8時間から16.2時間へ減り、約60%短くなりました。発電できなかった電力量は24,636キロワット時から16,353キロワット時へ、約34%減です。この故障が全体損失に占める割合は3.14%から2.03%になりました。
当該故障のエネルギー影響は33%減、過温による停止時間は60%減です。保全そのものの所要は11%短く、エネルギー影響は28%減です。その一部は新しい戦略に直接は結び付けられません。
著者にはデルフォスのナチアン・アンドラーデ(Nathianne Andrade)氏らと、V2iのレナーン・オリベイラ(Rennan Oliveira)氏が名を連ねます。くわしい論文はフォーム経由の配布で、公開ブログに載っている範囲だけを用います。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| E82 2.0 MW×39基。アラームは励磁ヒートシンク過温。根本はクロスフローファン(Delfosブログ) | 号機別のファン交換履歴の生データ |
| ANN入力は外気温・ナセル温度・出力。ずれで予知アラート(同) | モデル構造・学習期間・閾値の定義式 |
| 故障あたり停止40.8→16.2 h(−60%)。未発電24,636→16,353 kWh(−34%)(同) | 気象・出力条件を揃えた独立再集計 |
| 総損失寄与3.14%→2.03%。見出し33%/60%(同) | 第三者監査済みの損失配分 |
| 保全11%/エネルギー影響28%減。一部は直接帰属不可と注記(同) | 注記分を除いた純効果の内訳 |
工場の大型モータやチラーで、冷却ファンまわりの過温アラームが続き、負荷の低い時間帯にしか直せない現場では、手元の外気温・筐体温度・出力から「あるべき放熱板温度」を先に出し、ずれが大きい号機だけを低稼働帯の作業リストに載せる使い方ができます。
手元の外気温・機械室温度・出力から「あるべき放熱板温度」を出し、実測が大きくずれた号機だけを風の弱い時間の作業リストに載せます。アラームで長い停止に入ってから直す順番を決めるのではなく、止める前に手を入れます。