ドイツのAI企業アレフ・アルファ(Aleph Alpha)は、2026年10月3日に言語モデル「コリブリ(Kolibri)」を公開しました。モデル本体のデータ(重み)を配布しているので、使う会社は自分のサーバーで動かせます。対応する言語は、ドイツ語と英語の二つです。
同社が力を入れたのは、資料を渡して質問に答えさせる使い方で、資料に答えがないときに「分からない」と返す動きです。同社の技術報告では、資料に答えがない質問で答えを控えた割合は85.6%でした。前の版の73.9%から上がっています。
一方で、資料に誤りが混じっているときに、それを正せるかを見る試験は34.0点でした。技術報告は、この試験をコリブリの弱い項目の一つとして挙げています。
アレフ・アルファは、ドイツのハイデルベルクに本社を置く会社です。2019年に創業し、従業員は約200人です。行政や製造業など、規則の厳しい現場で使うAIを作っています。
コリブリは、全体で781億個の数値(パラメータ)を持ちます。ただし、文字のかたまり(トークン)を1つ処理するときに動くのは、そのうち約35億個だけです。データの大きさは約78GBで、動かすには、データセンター向けの画像処理装置(GPU)が最低でも1〜2枚要ります。配布条件は、商用でも使えるものです。
同社は、答えを控える動きを学習の段階で教え込みました。まず、正しい答えが「分からない」になる質問を学習データに入れました。さらに、質問に添えた資料から答えの根拠を自動で抜き取り、その場合は答えを控えることだけを正解にしました。当てずっぽうで答えが合っても、根拠を抜いた資料では正解になりません。根拠が残った資料では、正しく答えることを求めます。
規制のある業界の顧客にとって、答えを控えられるモデルかどうかは、試しに使う段階で終わるか、本番で使うかの分かれ目になります。同社はブログでこう書いています。
モデルの説明書(モデルカード)が想定するのは、人が出力を確かめてから使う用途です。判断を下す役には置きません。
左の列は、アレフ・アルファのブログ、技術報告、モデルカードに書かれている内容です。数字はすべて、同社が自社の評価の仕組みで出したものです。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 資料に答えがない質問で、答えを控えた割合は85.6%。前の版は73.9%。比較した他の12モデルのうち、85.6%より高いのは3モデル | 社内文書のような実際の資料でも、同じ割合で控えるか |
| 資料に誤りが混じったとき、それを正す試験は34.0点。比較した他の12モデルのうち、11モデルが34.0点を上回る(53.0〜90.0点) | 実際の業務で、資料の誤りをどのくらい見逃すか |
| 資料を渡さずに知識だけで答える試験では、比較したモデルの中で最も低い | 同社以外が測っても、同じく最も低くなるか |
| 知識を問う試験で、間違える代わりに答えを控えた割合は44%。前の版は15% | 控えたぶん、答えられる質問が減っていないか |
| 自動車部品、半導体、ドイツの行政など5業種の社内試験で、前の版より点が上がった(例: 航空宇宙は0.14から0.59)。顧客のデータでは学習していない | 社内試験の問題を、外部の人が同じ条件で確かめられるか |
| 最初の大きな学習(事前学習)で使った文章のうち、ドイツ語は2割強 | 資料ごとに21.3%、23.4%、23.9%、約23%と数字が揃っていない理由 |
マンションの管理会社では、管理規約や使用細則をもとに、住民からの「ペットは飼えるか」「工事の届け出はいつまでか」といった質問にAIで答える使い方が考えられます。規約に書いていない質問は答えさせず、担当者へ回します。規約を改めたのに古い版が残っていると、AIはその古い条文で答えてしまうので、規約が変わった日に資料を差し替える担当を決めておきます。
学習塾では、自前の教材や解説をもとに、生徒の質問へAIで答える使い方が考えられます。教材にない問題は答えさせず、講師へ回します。教材の誤植や古い解き方はAIでは正しにくいので、誤りを見つけた講師が直す正誤表と、その反映日を先に決めておきます。
同社自身の評価では、答えを控える力は上がった一方、資料の誤りを正す力は比べたモデルの中で低い結果でした。使うときは、資料にない質問を人へ回す決まりと、資料を直す担当を一緒に用意します。