ベルギーのアントワープ王立美術館(KMSKA – Royal Museum of Fine Arts Antwerp)の図書館が、手書きの書き込みが入った19世紀の競売カタログを、文字を読み取るAIで書き起こし、表にする試みをしました。以下は、美術館の職員2人が2025年5月にブリュッセルの研究データの催しで発表したポスターと、その説明文にもとづく内容です。
図書館には、1738年から1935年までの競売カタログが4800冊あります。約半分には、売れた値段や買い手の名前が手で書き込まれています。絵がだれの手を渡ってきたかや、当時の値段を調べる手がかりになります。
2023年に、助成金でブックスキャナーを買い、1830年から1870年のブリュッセルの競売カタログのうち、書き込みのある65冊をスキャンしました。
2024年には、スキャンした画像の文字を、エスクリプトリウム(eScriptorium)というソフトで読み取る試みをしました。最初は、19世紀のフランス語向けに学ばせてあったモデルを使いました。印刷の字はそれなりに読めましたが、手書きは読めませんでした。次に、最初のモデルの出力を人が直した60ページを正解にして、2つ目のモデルを学ばせました。最後に、表にしたい5つの項目(ロット番号、作家名、作品名、買い手、値段)の文字だけで学ばせたモデルを作りました。このモデルのほうが、印刷の字にも手書きにも効率よく働いた、と図書館は書いています。何がどれだけ良くなったかを示す数字はありません。
読み取った文字がどの項目かを決める作業も試しました。ページの中を枠で囲んで項目を決める方法では、文字と項目を結びつけられませんでした。行の下の線(基準線)ごとに項目を決める方法のほうが良く、こちらを使いました。読み取って項目に分けた結果は、Python の小さなプログラムで Excel の表に出しています。
左は、図書館が出した説明です。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 5項目だけで学ばせたモデルのほうが、印刷にも手書きにも効率よく働いた | 何がどれだけ良くなったか。字の誤りの割合などの数字。3つ目のモデルを何ページで学ばせたか |
| 65冊をスキャンし、書き起こしを試した | 65冊のうち、何ページを書き起こしたか。人の直しがどれだけ要ったか |
| 結果を Excel の表に出す | 表がいま公開されているか。人の打ち直しと比べて時間がどれだけ減ったか |
ポスターは、今後の見通しとして、読み取りと項目分けのモデルをさらに良くすること、ほかのソフトも試すこと、アメリカのゲッティ研究所(Getty Research Institute)と組んで、データを広く使えるようにすることを挙げています。
従業員100人ほどの地方の運送会社で、手書きの配送伝票を毎日表に打ち直している場合が考えられます。全部の文字を読ませるのではなく、届け先、品名、個数、日付のように表の列にする項目だけにしぼり、人が直した数十枚を正解にして読み取りモデルを学ばせる、という順で試せます。
図書館は、読み取らせる項目を表に入れる5つにしぼると、手書きにも前より合うモデルになった、と報告しています。ただ、どれだけ良くなったかの数字はなく、65冊のうち何ページを読み取らせたかも書かれていません。