デンマークのリングステズ・フォシュニング(Ringsted Forsyning)は、町の家や建物にお湯で熱を送る地域暖房の会社です。大きなヒートポンプが冬に凍って止まる問題に、いつもと違う動きを見つけるAIを試しました。モデルづくりを手伝ったコンサルタント会社によると、試験の期間には、凍りつきの兆しを最大14時間前に見つけました。これまでの警報が鳴るのは、ふつう止まる3時間前でした。以下は、その会社の事例ページと、同じ会社が取りまとめた研究事業(2025年11月に終了)の最終報告にもとづく内容です。
会社には、外の空気から熱をくみ上げる8メガワットのヒートポンプがあります。安く、温室効果ガスの少ない熱を送るための設備です。ところが冬には、空気から熱を受け取る部分(蒸発器)に氷が付きます。氷は霜取りで溶かしますが、そのやり方やタイミングがまずいと、ポンプが止まったり、電気を余計に使ったりします。これまでの制御は、氷が付いてから動く作りで、霜取りが遅れがちでした。止まると、ガスの予備のボイラーなど、ほかの燃料で4000軒の客に熱を送ることになり、大きな費用がかかります。しかも凍りやすいのは、熱がいちばん要る寒い時期です。
そこで会社は、コンサルタント会社のヴィーガン・モーエ(Viegand Maagøe)の手を借り、機械学習を工場や設備で試す研究事業(2023〜25年。デンマーク工科大学などが参加)の中で、AIのモデルを作りました。モデルは、温度・圧力・流量など60か所以上の計測から「いつもの動き」を学び、凍りつきにつながりそうなずれを見つけます。見つけたずれは、運転の担当者が見る簡単な画面に、その場で出ます。担当者は、ファンの速さを変えたり、早めに霜取りをしたりして、止まる前に手を打てます。計器を大がかりに買い足さず、すでに取っているデータを使うのが、この研究事業の方針です。
運転責任者のスティーン・ウルリク・ハンセン(Steen Ulrik Hansen)さんは「早めに使える合図が出るようになり、運転がずっと落ち着いた」と話します。
左は、コンサルタント会社の事例ページと最終報告の説明です。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 凍りつきの兆しを、最大14時間前に見つけた。これまでの警報は、ふつう止まる3時間前だった(最終報告)。事例ページは「担当者がふだん対応するより最大14時間前」と書く | 試験の期間の長さ。14時間前に見つけたのが何回あったか(最終報告の図は1回の実例)。外れの警報がどれだけ出たか |
| 試験の期間は、多くの場合、止まる前に問題を解決できた(事例ページ) | 実際に止まった回数が、前と比べてどれだけ減ったか |
| 省エネの見込みは、年に最大約710万円(事例ページ。30万デンマーク・クローネを1クローネ23.7円でこちらが換算)と、年40万キロワット時を超える量(最終報告。ヒートポンプの効率が上がり、予備のガスのボイラーに頼る分が減ることから) | 実際に減った電気やガスの量。モデルづくりの費用 |
最終報告は、次の段階として、運転を助ける道具から、より自動で動く仕組みに進めることを挙げています。
地方の酒蔵で、タンクごとに付けている仕込みの温度の記録から、いつもの発酵の進み方をAIに覚えさせる使い方が考えられます。外れ始めたタンクを画面で知らせれば、冷やす・温めるの手当てを、見回りで気づくより早く打てます。
リングステズ・フォシュニングは、ヒートポンプの60以上の計測でAIに「いつもの動き」を覚えさせ、外れ始めを担当者の画面に出しました。これまでの警報(止まる3時間前)より早く手を打つための使い方です。省エネの数字は見込みで、止まる回数が実際にどれだけ減ったかは示されていません。