ENTRY

◀︎ AI NEWS TOPへ

スイスの雪崩予報。20年分の記録で学んだAIが雪崩の危険度を出し、公表した危険度との一致は約70%。予報官が「もう一つの意見」として使う、と研究所の論文(2025年)

2026.10.11
スイスの雪崩予報。20年分の記録で学んだAIが雪崩の危険度を出し、公表した危険度との一致は約70%。予報官が「もう一つの意見」として使う、と研究所の論文(2025年)

スイスの雪・雪崩研究所(WSL Institute for Snow and Avalanche Research SLF、以下SLF)は、冬の間、毎日、雪崩の危険度を出しています。SLFは、20年分の気象と積雪の記録で学ばせたAIに、乾いた雪の雪崩の危険度を出させました。2020〜21年の冬に、予報には使わずに試したところ、AIの危険度は、公表した危険度と約70%で一致しました。翌冬からは、予報官がAIの答えを「もう一つの意見」として見ています。以下は、SLFの研究者が2025年4月に自然災害の学術誌「NHESS(Natural Hazards and Earth System Sciences)」に出した論文と、2024年4月のSLFのお知らせにもとづく内容です。

何が起きたか

スイスでは、雪崩は最も多くの命を奪う自然災害です。SLFは冬の間、毎日17時に翌日までの雪崩の危険度を出します。山に入る人や、道路や集落を守る役所が、これを判断に使います。これまでは、予報官が、気象の予報、観測、積雪の計算の結果、現地からの報告を読み合わせて決めてきました。

2019年、SLFは、スイスのデータ科学の研究拠点(Swiss Data Science Center)と組んで、AIづくりを始めました。山の上の100か所を超える自動の観測所で測った20年分の気象と、それをもとにした積雪の計算の結果を、機械学習のモデル(ランダムフォレスト)に学ばせました。答えにしたのは、公表した危険度ではなく、あとから確かめ直した危険度です。公表した危険度を答えにしたモデルも作りましたが、こちらは、人が慎重に高めに出す傾向まで映します。予報官が試すことにしたのは、確かめ直した危険度で学んだモデルです。モデルは観測所ごとに、3時間おきに危険度を1〜4で出します。いちばん上の5は、学ばせるときに4にまとめました。

2020年12月末から2021年5月まで、モデルを本番と同じ流れで動かしました。ただし予報には使わず、結果を見るのは決まった予報官1人だけでした。

何が変わったか

左は論文とSLFのお知らせの説明です。

公表されている結果 こちらで確認できていないこと
138日の試験で、予報が危ないとした高さと斜面の向きに当たる観測所では、AIの危険度は、公表した危険度と平均で約70%一致した(平地と斜面の向きによって66〜74%)。その範囲を外れる観測所では、一致はもっと低かった(南向きの例で、高さだけ外れると54.5%、高さも向きも外れると19.6%) 一致しなかった日に、どちらが正しかったか(論文も、AIの誤りか、人が慎重に出したのかは分けられないとしている)
食い違ったときは、ほとんどが1段階の違いで、AIのほうが低めに出すことが多かった 予報官が、AIを見て危険度を変えた回数
雪が降っている間はよく合い、古い積雪の中に弱い層が残るところや時期は合いにくかった。弱い層があるときは、AIの危険度が公表した危険度より早く下がった 新しい作り方(地域ごとに危険度を出すモデル)の成績
2021〜22年の冬から、予報官全員がAIの答えを見られるようになった。予報官は、役に立ち、もっともらしいと見ている。2023〜24年の冬には、機械学習のモデルの見立てが、危険度を決める話し合いにいつも加わるようになった AIを使い始めて、予報の当たりがよくなったか。2023〜24年の冬の話し合いに加わったのが、どのモデルか

AIは人と同じ観測や計算の結果を使いますが、現地からの報告は使いません。予報官の一人は、AIは自分たちとは違う間違え方をする、と話しています。大きく食い違ったときは、予報官が自分たちの判断を見直すきっかけにします。

誰に関係するか

漁協で、毎朝、船を出すかどうかを決める仕事に当てはまります。過去の風や波の記録と、あとから見てその日に船を出せたかどうかを組み合わせてAIに学ばせれば、担当者の判断の横に、もう一つの見立てを置けます。まず一つの季節は判断に使わずに並べて動かし、どれだけ一致するか、どんなときに食い違うかを数えてから、使い始められます。

まとめ

スイスのSLFは、20年分の記録で学んだAIに雪崩の危険度を出させ、まず一冬、予報に使わずに、公表した危険度と並べました。約70%で一致し、食い違うときはAIが低めに出すことが多く、古い積雪に弱い層が残るときは合いにくいと分かりました。いまは予報官が「もう一つの意見」として見ていますが、一致しなかった日にどちらが正しかったか、予報がよくなったかは示されていません。

参考文献

Tags

タグ一覧へ ▶︎

Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

今すぐわかる。報酬シミュレーション