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ニュージーランドのマオリ語のラジオ局。自分たちの声だけで音声認識を作って書き起こしに使い、自前の試験用の音声で誤りの割合を27%から10%に下げた、と2024年の論文

2026.10.11
ニュージーランドのマオリ語のラジオ局。自分たちの声だけで音声認識を作って書き起こしに使い、自前の試験用の音声で誤りの割合を27%から10%に下げた、と2024年の論文

ニュージーランドのテ・ヒク・メディア(Te Hiku Media)は、マオリ語で放送してきた小さな非営利のラジオ局です。許しを得て集めた自分たちのデータだけで、マオリ語と英語の音声認識を作り、書き起こしサービス「カイトゥヒ(Kaituhi)」で使っています。母語の話者などの声で作った自前の試験用の音声で測ると、単語の誤りの割合は、最初の版の27%から10%に下がりました。以下は、同局の職員が2024年12月の国際学会「NeurIPS」で出した論文と、同局のウェブサイトにもとづく内容です。

何が起きたか

同局には、何十年も前のラジオ番組で録った、お年寄りへの聞き取りなどの古い録音がたくさんあります。数千時間の録音を電子化したあと、2017年に、母語の話者の聞き取りを書き起こす小さな企画を始めました。ところが、手で書き起こすのは手間がかかりすぎて、たくさんの古い録音を文字にするには別の方法が要りました。そこで、2018年に資金を得て、コンピューターにマオリ語を教える企画を始めました。この企画から、自前の音声認識と、それを使う書き起こしサービス「カイトゥヒ」が生まれました。

世の中には、多くの言葉を扱う公開された音声認識もあります。それでも同局は、許しを得て集めたデータだけを使うという考えから、自前で作ると決めました。最初の版は、モジラ(Mozilla)の仕組みで作り、地域の人たちの協力で集めた約400時間の声で学ばせました。いまの版は、マオリ語とニュージーランドの英語の二つに対応し、自分たちのデータだけで一から学ばせています。

新しい版に向けては、母語の話者の響きを学ばせるため、古い録音を人が書き起こしてデータを作りました。一人が書き起こし、言葉にくわしい職員が見直します。聞き取りにくいところは、二人で話し合って決めます。

何が変わったか

腕前を測るため、同局は自前の試験用の音声「テ・タウマタ(Te Taumata)」を作りました。1930年より前に生まれた母語の話者4人の声を中心に、新しい世代の話者(大人になってから学んだ人や、幼いころからマオリ語で育った人)、ニュージーランドなまりの英語、二つの言葉が混ざる地域の集まりの話し方を含みます。新しい版は、この物差しで前の版と比べ、オープンAIの「ウィスパー(Whisper)」など公開されたモデルとも比べます。

左は同局の論文とウェブサイトの説明です。

公表されている説明 こちらで確認できていないこと
自前の試験用の音声で、単語の誤りの割合は、最初の版の27%から10%に下がった 27%と10%をそれぞれ測った時期。外の人が同じ結果を出せるか
母語の話者の声での成績は、版を重ねるごとによくなった。その代わり、新しい世代のうち幼いころからマオリ語で育った話者と、二つの言葉が混ざる話し方では、成績が少し落ちた 落ちた幅(論文では図だけで、数字の記載はない)
同局は、この落ち方を受け入れている。母語の話者の声を文字にすることを、最も大事にしているため カイトゥヒでいま動いているのが、どの版のモデルか
カイトゥヒは、部族のラジオ局の字幕づくりのために作られ、古い録音の目録づくりと検索にも使える 書き起こしにかかる時間がどれだけ減ったか

同局は、公開されたモデルを自分たちで調整して試したこともあります。2023年1月の同局のブログによると、ウィスパーを、自前で書き起こした約125時間の音声で調整しました。ただ、ウィスパーの学びに使ったマオリ語の音声がどこから来たのか示されていないことと、自分たちのデータの使い方の決まりに合わないことから、本番では使わないと決めています。

誰に関係するか

地方の議会や町内会で、方言の多い会議の録音を文字にする仕事に当てはまります。まず、地元の人の声を手で書き起こして答え合わせ用に取っておけば、公開されたモデルや、売られている文字起こしを、そのまま使うか、調整するかを、同じ物差しで決められます。どの話し手の声をいちばん大事にするかを先に決めておけば、成績が上がる人と落ちる人が出たときにも選べます。

まとめ

テ・ヒク・メディアは、許しを得た自分たちの声だけで音声認識を作り、書き起こしサービスで使っています。母語の話者を中心にした自前の物差しで測ると、単語の誤りの割合は27%から10%に下がりました。その代わり、新しい世代の一部の話者などでは成績が少し落ちましたが、同局は母語の話者の声を優先し、これを受け入れています。数字はすべて同局自身の論文によるものです。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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