ENTRY

◀︎ AI NEWS TOPへ

コペンハーゲンの救急電話。心停止を見つけるAIの合図を受付係に出しても、気づく割合にはっきりした差は出なかった、とくじで分けた試験の論文(2021年)

2026.10.11
コペンハーゲンの救急電話。心停止を見つけるAIの合図を受付係に出しても、気づく割合にはっきりした差は出なかった、とくじで分けた試験の論文(2021年)

デンマークのコペンハーゲン救急医療サービス(Copenhagen Emergency Medical Services)は、救急番号112の通話を聞いて、心臓が止まった疑いを見つけるAIを試しました。AIが疑いを見つけたら、受付係の画面に合図を出します。この合図が受付係の判断を本当に助けるのかを、2018年9月から2019年12月まで、くじで分けた試験で確かめました。AI単独では受付係より多くの心停止に気づきましたが、合図を見た受付係が気づく割合には、はっきりした差は出ませんでした。以下は、2021年1月に医学誌「JAMAネットワーク・オープン(JAMA Network Open)」に載った論文と、試験の登録情報にもとづく内容です。

何が起きたか

病院の外で心臓が止まった人を助けるには、電話の受付係が早く気づき、電話の向こうの人に胸を押すやり方を伝えることが大事です。ところが論文によると、救急の受付係は一般に、こうした心停止の約25%を見落としています。

そこで、コペンハーゲン救急医療サービスは、通話の声を文字にする仕組みと、機械学習のモデルを組み合わせました。モデルは話の中身から心停止の疑いを見つけ、受付係の主な画面に目立つ合図を出します。合図は受付係の作業のじゃまをしない作りです。過去の通話を使った前の研究では、このモデルは受付係より多くの心停止に気づき、外れは少しだけ多くなりました。

試験の期間に、AIは16万9049件の通話を聞き、そのうち5242件を心停止の疑いとしました。この5242件を、くじで「受付係に合図を出す」2581件と「出さない」2661件に分けました。合図が出ないかぎり、受付係には、その通話でAIが動いているかどうかは分かりません。あとから心停止の記録とつないで、本当に心停止だった通話を確かめました。合図ありは318件、合図なしは336件です。

何が変わったか

左は論文の数字です。

公表されている結果 こちらで確認できていないこと
本当に心停止だった通話で、受付係が気づいた割合は、合図あり93.1%、合図なし90.5%。差は偶然の範囲を出なかった 合図が出たのに受付係が従わなかった理由の詳しい中身
気づくまでの時間は、どちらも平均で約1.7分で、ほぼ同じだった その後の命が助かった割合への影響(この試験の目的の外)
AIが聞いた通話全体(本当の心停止は1110件)では、AI単独のほうが受付係より見落としが少なかった(気づいた割合85.0%対77.5%) いまの運用でAIを使い続けているか
ただしAIの合図は外れが多く、AIが心停止と見た通話のうち本当に心停止だったのは17.8%。受付係が心停止と見た通話では55.8% 外れの合図が受付係の手間をどれだけ増やしたか

論文は、AIが人より多くの心停止に気づいても、受付係の気づきにははっきりした改善が見られなかった、と結論づけています。受付係が合図に従わなかったとみて、受付係への訓練と、外れの合図を減らすことを次の課題に挙げています。あとからの計算では、合図を出した通話で受付係が合図どおりに動いていれば、さらに22件の心停止に気づけたとしています。

誰に関係するか

自治体の消費生活センターや役所の相談窓口で、急ぎの相談(詐欺のさなか、命に関わる話など)を聞き分ける仕事に当てはまります。会話を聞いてAIが合図を出す仕組みを入れるなら、合図を見せる日と見せない日を分けて、職員の対応が本当に変わったかを数えてから、広げるかどうかを決められます。

まとめ

コペンハーゲンの救急電話では、AIは受付係より多くの心停止に気づきましたが、合図の多くは外れでした。合図を見せても、受付係が気づく割合にはっきりした差は出ず、人が合図をどう使うかが課題として残りました。

参考文献

Tags

タグ一覧へ ▶︎

Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

今すぐわかる。報酬シミュレーション