14か国を超える国で事業をする物流会社のエフエム・ロジスティック(FM Logistic)は、ポーランドの倉庫で、荷を集めて回る経路の決め方をAIに書き直させました。今のプログラムを出発点としてAIに渡し、書き直し案を何千も作らせ、自社が決めた点数と減点で選ばせています。同社によると、できたのは人が読んで直せる決まりで、経路の効率は前の最良の決め方より10.4%上がりました。
以下は、同社の技術者とグーグル(Google)の担当者が2026年3月にグーグル・クラウド(Google Cloud)のブログへ共同で書いた記事と、同社が同年6月に自社のブログで出した発表にもとづきます。使ったAIは、グーグルがクラウドで提供している製品です。この事例は、グーグルの催し「グーグル・クラウド・ネクスト(Google Cloud Next)」でも紹介されました。数字はすべて同社とグーグルの発表で、外の人による確かめはありません。
同社が試したのは、24時間動くポーランドの倉庫です。広さはサッカー場8面分で、荷を取り出す棚の場所は1万7700か所を超えます。どの勤務の時間帯にも、最大で数十人の作業員が乗って動かす電動の運搬車で床を行き来し、1回の巡回で何十か所もの棚を回ります。
同社はすでに一度、経路の決め方を良くしていました。その決め方は、その場で一番よく見える一手を順に選ぶ方式で、速くて現場に間に合う一方、倉庫全体を見渡して経路を組み合わせることは苦手でした。
そこで使ったのが、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)が作ったアルファエボルブ(AlphaEvolve)です。グーグルのAIのジェミニ(Gemini)を使って、プログラムの書き換え案を自分で作り、点数をつけ、良い案をもとにまた書き換える道具です。
AIには、今使っている経路の決め方のプログラムを出発点として渡しました。AIはそれを少しずつ変えた案を作り、元の決め方より良くなるかを試しました。
点数のつけ方は、同社が自分で決めました。使ったのは、作業員の1時間あまりの仕事にあたる60回の巡回の記録です。主な目標は、1回の取り出しあたりの平均の移動距離を短くすることです。
あわせて、やってはいけないことを減点として先に書きました。
試しを何度も重ね、そのたびに数百の案を作らせた結果、前の最良の決め方を上回る決まりが残りました。グーグル・クラウドのブログによると、できたのは人が読んで直せる決まりで、主な改良は次の3つです。
| 主な改良 | 中身 |
|---|---|
| 起点の選び方 | 前は、作業がいちばん重なる1か所を起点にした。今は、近くに品が集まった場所のまとまりを起点にする |
| 2段の絞り込み | まず合わない注文を粗く外し、残った候補だけで距離を細かく計算する。速さを保つため |
| 無理に積まない | 起点のまわりでうまく積めない注文は、全体に戻して、ほかの経路に回す |
同社の担当者は、できた決まりについて「すべてを後から確かめられ、これからも育てて広げていけます」と話します。「AIが倉庫を管理するわけでも、今の仕組みを置き換えるわけでもありません。効率を一段上げられるようにするだけです」。
同社とグーグルによると、経路の効率は、前の最良の決め方より10.4%上がりました(同社のブログでは「10%超」)。どのデータで、どの期間に測ったかは示されていません。
倉庫の中の移動は、年に1万5000km以上減るとされます。3月のグーグル・クラウドのブログではこれが「全面的に動かしたときの」1年の値で、6月の同社のブログでは、年に減った距離として出てきます。実際に1年分を測った数字かは、どちらにも書かれていません。同社によると、設備やフォークリフトを増やす投資はしていません。
3月のグーグル・クラウドのブログの時点で、ポーランドでの試行は本番で動いていて、同社はほかの大きな通販向けの倉庫へ広げる道を探っていました。6月の同社のブログでは、欧州と南米のほかの拠点へ広げているところです。
| 公表されている説明 | こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 経路の効率が、前の最良の決め方より10.4%上がった(同社のブログは「10%超」) | 「効率」が移動距離の割合か、時間の割合か。60回の巡回で出した点数か、本番の運用で測ったものか。比べた期間 |
| 倉庫の中の移動が、年に1万5000km超減る(グーグル・クラウドのブログは全面的に動かしたときの値、同社のブログは年に減った距離として書く) | 実際に1年分を測った数字か |
| ポーランドでの試行は本番で動いている(3月時点) | 本番で使い始めた時期 |
| 欧州と南米のほかの拠点へ広げている(6月時点) | どの拠点で、同じ効果が出たか |
| できた決まりは、人が読んで直せる | 現場の人が実際に決まりを直したことがあるか |
配車や段取り、仕事の割り当てを、社内で作った表計算や古いプログラムの決まりで回している会社に関係します。
たとえば、従業員150人ほどのゴルフ場が、翌日のキャディとカートの割り当てを、表計算のマクロで決めているとします。今のマクロを出発点にして、AIに書き直し案を作らせます。点数は、過去数週間の予約で計算した、キャディが組と組のあいだで空く時間の合計です。カートの定員を超える、予約を取りこぼす、同じキャディを同じ時間の2組に入れる、先に予約した組を後回しにしすぎる、前の晩の締めに計算が間に合わない、の五つは減点にします。採るのは、支配人が読んで直せる決まりになった案だけです。
エフエム・ロジスティックは、倉庫の経路の決め方を、今のプログラムを出発点にしてAIに書き直させました。点数と減点は自社で決め、できたのは人が読んで直せる決まりです。同社とグーグルは効率が10.4%上がったとしていますが、測った条件は書かれておらず、年1万5000km超の移動減も、実際に1年分を測ったかは分かりません。