事務機とITサービスのリコーは2026年10月15日、図表の入った日本語の文書を読む生成AIのモデル「リコーLMM_35B-A3B」を発表しました。アリババ(Alibaba)が公開しているモデルをもとに、社内の文書を読む用途に向けて追加で学習させたものです。机の横に置ける小型のAIサーバー1台で動く形も作り、同じ文を繰り返して止まらなくなる失敗を学習で減らしました。
この記事は同社のニュースリリースと、評価の表と条件を載せた技術ページにもとづきます。数字はすべてリコーの測定です。モデルはまだ公開されておらず、外の人による確かめはありません。
リコーは、請求書、設計の資料、約款、申請書類のように、図や表を含む社内の文書を生成AIで読みたい会社が増えている、と書きます。一方で、情報の扱いの決まりから、社外のクラウドのAIを使えない会社もあります。社内に置く機械で動かすには、計算用の半導体(GPU)や電力、答えが返るまでの時間が問題になります。
そこで同社は、社内の機械で動かせる3つ目のモデルとして、速さと軽さを優先したものを作りました。6月に出した2つのモデル(27B版と9B版)は、精度を優先する版と、軽い版です。
軽くした版はエヌビディア(NVIDIA)の小型AIサーバー「DGX Spark」1台で動かしました。
小型サーバー1台で、図表の問題100問を5回ずつ、計500回解かせました。同時に解かせたのは1件ずつです。元のモデルを同じ4ビットの形式に軽くしたものでは、ループ回答が14回出ました。リコーの版では0回でした。出力の量は平均で約25%減り、1問の平均応答は21.03秒から16.46秒になりました。1秒に書くトークンの数は元のモデルと同じで、短くなったのは、止まらない答えがなくなったためです。
軽くする前と後の速さも測っています。軽くする前の版は1秒に約27トークンを書き、1問に約46秒かかりました。軽くした版は約61トークンで約16秒です。次の数語を先回りして書く仕組み(MTP)を足すと、約81トークンで約12秒になりました。
図表入りの日本語文書の問題(リコーが作ったベンチマーク、1,361問。うち1,286問は公開済み)では、点数(満点1.0)が元のモデルの0.816から0.841に上がりました。採点は、オープンエーアイ(OpenAI)の別のAI「gpt-4.1」が担当し、5回の平均です。リリースは、クラウドの商用AI「GPT-5.6 Sol」(0.821)と同等以上だと書きます。ただし同じ表では、参考値のクロード・フェイブル5(Claude Fable 5)が0.904、同社の27B版が0.853で、どちらもこのモデルより高くなっています。ふだんの日本語の文章の試験の点は、元のモデルとほぼ同じでした。
業務の決まりに従って道具を使い、客と話しながら手続きを進める試験もしました。エスビー・インチュイションズ(SB Intuitions)が公開した日本語の試験の、通信会社の窓口の場面です。正答率は62.4%から77.7%に上がりました。
このモデルは11月から順次「RICOH オンプレLLMスターターキット」に載せ、リコージャパンから提供する予定です。価格は書かれていません。
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 図表入りの日本語文書の問題で、点数(満点1.0)が元のモデルの0.816から0.841に上がったリコーが作ったベンチマーク(1,361問。うち1,286問は公開済み)。採点は別のAI(gpt-4.1)で、5回の平均 | ⚠️ 同じ問題を外の人が解かせた結果(モデルが未公開のため、まだできない) ⚠️ ベンチマークの外の、実際の社内文書での点数 |
| クラウドの商用AI「GPT-5.6 Sol」(0.821)と同等以上同じ表に載る参考値では、クロード・フェイブル5が0.904、同社の27B版が0.853で、どちらもこのモデルより高い。リリースの本文はこの2つに触れていない | ⚠️ APIで測った時期(2026年6〜9月)以降の各社の更新の影響 |
| 小型サーバー1台で、同じ文を繰り返して止まらない失敗が500回中14回から0回になり、1問の平均応答が21.03秒から16.46秒になった比べた相手は、元のモデルを同じ形式(NVFP4)に軽くしたもの。同時に1件ずつ解かせた条件 | ⚠️ 何人かが同時に使うときの速さ ⚠️ 500回より多く回したときに失敗が出ないか |
| 業務の決まりに従って道具を使い、客と話す試験で、正答率が62.4%から77.7%に上がったエスビー・インチュイションズが公開した日本語の試験の、通信会社の窓口の場面。客の役もgpt-4.1 | ⚠️ ほかの場面(通信以外)での結果 |
| 11月から「RICOH オンプレLLMスターターキット」に順次載せるリコージャパンから提供する予定 | ⚠️ 価格と、載せるサーバーの選び方の条件 |
凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
数字と説明は、リコーのニュースリリースと技術ページ(2026年10月15日)による。
社外のクラウドに出せない図表入りの書類を抱え、生成AIを社内の機械で動かしたい会社に関係します。
たとえば、従業員100〜200人規模の建設コンサルタントが、自治体から預かった橋の点検の記録を読ませるとします。記録には損傷の場所を描いた図と、ひびの幅や長さの表があります。預かった書類は社外に出せないので、事務所の小型サーバーでAIに表の数字を拾わせ、橋ごとの一覧を作ります。入れる前に、過去の記録100件を5回ずつ解かせ、止まらずに書き続けた回答の数と、1件あたりの時間を、元のモデルと並べて数えます。拾った数字は、担当の技術者が元の図表と見比べてから一覧に載せます。
リコーは、アリババの公開モデルを図表入りの日本語文書向けに鍛え、4ビットに軽くして、小型AIサーバー1台で動かしました。長すぎる答えを減点する学習で、同じ文を繰り返して止まらない失敗を500回中14回から0回にし、1問の平均応答を21.03秒から16.46秒にしました。図表の問題の点数は0.816から0.841に上がりました。ただし同じ表の参考値では、クロード・フェイブル5が上回っています。数字はすべて同社の測定で、モデルは11月から製品に載せて提供する予定です。