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リコー、図表入りの文書を読むAIを小型サーバー1台で動く形にし、答えの繰り返しを減らした

2026.10.19
リコー、図表入りの文書を読むAIを小型サーバー1台で動く形にし、答えの繰り返しを減らした

事務機とITサービスのリコーは2026年10月15日、図表の入った日本語の文書を読む生成AIのモデル「リコーLMM_35B-A3B」を発表しました。アリババ(Alibaba)が公開しているモデルをもとに、社内の文書を読む用途に向けて追加で学習させたものです。机の横に置ける小型のAIサーバー1台で動く形も作り、同じ文を繰り返して止まらなくなる失敗を学習で減らしました。

この記事は同社のニュースリリースと、評価の表と条件を載せた技術ページにもとづきます。数字はすべてリコーの測定です。モデルはまだ公開されておらず、外の人による確かめはありません。

何が起きたか

リコーは、請求書、設計の資料、約款、申請書類のように、図や表を含む社内の文書を生成AIで読みたい会社が増えている、と書きます。一方で、情報の扱いの決まりから、社外のクラウドのAIを使えない会社もあります。社内に置く機械で動かすには、計算用の半導体(GPU)や電力、答えが返るまでの時間が問題になります。

そこで同社は、社内の機械で動かせる3つ目のモデルとして、速さと軽さを優先したものを作りました。6月に出した2つのモデル(27B版と9B版)は、精度を優先する版と、軽い版です。

どう作ったか

  1. 一部だけ動く作りの公開モデルをもとにする: もとにしたのは、アリババの「Qwen3.6-35B-A3B」です。中に専門の部分をたくさん持ち、1トークン(文字のかたまり)を書くごとに一部だけを動かす作り(MoE)で、全体約350億のうち、動くのは約30億です。全部を毎回動かす同じ大きさのモデルより、計算が少なくて済みます。長い文書(最大256Kトークン)を一度に読めて、画像と動画も入れられます。
  2. 図表の問題で鍛える: 強化学習(答えに点を付けて、良い答えを増やす学習)で、図表を読む問題への点の付け方を細かくしました。学ぶ問題の難しさと順番も組み直しました。
  3. 長すぎる答えを減点する: 考えながら答えるモデルは、同じ内容を繰り返して書き続け、出力の上限まで止まらないことがあります。同社はこれを「ループ回答」と呼びます。過度に長い出力を減点する仕組みを学習に入れ、この失敗を減らしました。
  4. 数の桁を減らして軽くする: モデルの中の数値(重み)を4ビットの形式(NVFP4)で持たせ、必要な記憶の量を減らしました。モデルの中の場所によって、4ビットと8ビット(FP8)の形式を使い分けています。

軽くした版はエヌビディア(NVIDIA)の小型AIサーバー「DGX Spark」1台で動かしました。

何が変わったとするか

小型サーバー1台で、図表の問題100問を5回ずつ、計500回解かせました。同時に解かせたのは1件ずつです。元のモデルを同じ4ビットの形式に軽くしたものでは、ループ回答が14回出ました。リコーの版では0回でした。出力の量は平均で約25%減り、1問の平均応答は21.03秒から16.46秒になりました。1秒に書くトークンの数は元のモデルと同じで、短くなったのは、止まらない答えがなくなったためです。

軽くする前と後の速さも測っています。軽くする前の版は1秒に約27トークンを書き、1問に約46秒かかりました。軽くした版は約61トークンで約16秒です。次の数語を先回りして書く仕組み(MTP)を足すと、約81トークンで約12秒になりました。

図表入りの日本語文書の問題(リコーが作ったベンチマーク、1,361問。うち1,286問は公開済み)では、点数(満点1.0)が元のモデルの0.816から0.841に上がりました。採点は、オープンエーアイ(OpenAI)の別のAI「gpt-4.1」が担当し、5回の平均です。リリースは、クラウドの商用AI「GPT-5.6 Sol」(0.821)と同等以上だと書きます。ただし同じ表では、参考値のクロード・フェイブル5(Claude Fable 5)が0.904、同社の27B版が0.853で、どちらもこのモデルより高くなっています。ふだんの日本語の文章の試験の点は、元のモデルとほぼ同じでした。

業務の決まりに従って道具を使い、客と話しながら手続きを進める試験もしました。エスビー・インチュイションズ(SB Intuitions)が公開した日本語の試験の、通信会社の窓口の場面です。正答率は62.4%から77.7%に上がりました。

このモデルは11月から順次「RICOH オンプレLLMスターターキット」に載せ、リコージャパンから提供する予定です。価格は書かれていません。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 公表されている説明 ⚠️ こちらで確認できていないこと
図表入りの日本語文書の問題で、点数(満点1.0)が元のモデルの0.816から0.841に上がったリコーが作ったベンチマーク(1,361問。うち1,286問は公開済み)。採点は別のAI(gpt-4.1)で、5回の平均 ⚠️ 同じ問題を外の人が解かせた結果(モデルが未公開のため、まだできない)
⚠️ ベンチマークの外の、実際の社内文書での点数
クラウドの商用AI「GPT-5.6 Sol」(0.821)と同等以上同じ表に載る参考値では、クロード・フェイブル5が0.904、同社の27B版が0.853で、どちらもこのモデルより高い。リリースの本文はこの2つに触れていない ⚠️ APIで測った時期(2026年6〜9月)以降の各社の更新の影響
小型サーバー1台で、同じ文を繰り返して止まらない失敗が500回中14回から0回になり、1問の平均応答が21.03秒から16.46秒になった比べた相手は、元のモデルを同じ形式(NVFP4)に軽くしたもの。同時に1件ずつ解かせた条件 ⚠️ 何人かが同時に使うときの速さ
⚠️ 500回より多く回したときに失敗が出ないか
業務の決まりに従って道具を使い、客と話す試験で、正答率が62.4%から77.7%に上がったエスビー・インチュイションズが公開した日本語の試験の、通信会社の窓口の場面。客の役もgpt-4.1 ⚠️ ほかの場面(通信以外)での結果
11月から「RICOH オンプレLLMスターターキット」に順次載せるリコージャパンから提供する予定 ⚠️ 価格と、載せるサーバーの選び方の条件

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
数字と説明は、リコーのニュースリリースと技術ページ(2026年10月15日)による。

誰に関係するか

社外のクラウドに出せない図表入りの書類を抱え、生成AIを社内の機械で動かしたい会社に関係します。

たとえば、従業員100〜200人規模の建設コンサルタントが、自治体から預かった橋の点検の記録を読ませるとします。記録には損傷の場所を描いた図と、ひびの幅や長さの表があります。預かった書類は社外に出せないので、事務所の小型サーバーでAIに表の数字を拾わせ、橋ごとの一覧を作ります。入れる前に、過去の記録100件を5回ずつ解かせ、止まらずに書き続けた回答の数と、1件あたりの時間を、元のモデルと並べて数えます。拾った数字は、担当の技術者が元の図表と見比べてから一覧に載せます。

まとめ

リコーは、アリババの公開モデルを図表入りの日本語文書向けに鍛え、4ビットに軽くして、小型AIサーバー1台で動かしました。長すぎる答えを減点する学習で、同じ文を繰り返して止まらない失敗を500回中14回から0回にし、1問の平均応答を21.03秒から16.46秒にしました。図表の問題の点数は0.816から0.841に上がりました。ただし同じ表の参考値では、クロード・フェイブル5が上回っています。数字はすべて同社の測定で、モデルは11月から製品に載せて提供する予定です。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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