マルト(Malt)は、フランスで生まれたフリーランスの紹介サイトです。同社は、案件に合うフリーランスを並べる仕組みのうち、人が一つずつ作った決まりで順位を調整していた部分を、過去の契約から学ぶモデルに替えました。あわせて、生成AIで作った「技能が合うかの点数」を、並べ替えの手がかりに加えています。同社の技術ブログ(2026年6月22日)によると、契約まで進んだ組は14%増えました。ただ、ブログには測り方がほとんど書かれていません。
この事例で分からないこと
マルトは2013年にできた会社で、フランス、ドイツ、スペインなど9つの国と地域で使われています。仕事を頼みたい会社が案件を出すと、100万人近いフリーランスの登録の中から、合いそうな人を順に並べて出します。
並べ方は3つの段に分かれています。まず、言葉や分野、場所で数千人まで絞ります。次に、その人たちを細かく並べ替えます。最後に、地域の法律の決まりなど、必ず守る条件に合わない人を外します。今回変えたのは、まん中の並べ替えです。
前の仕組みも言葉の意味の近さを使っていました。「フロントエンドの技術者」を探す案件に、「React の開発者」と書いた人を出すことはできました。それでも、言葉が近いだけでは、その仕事をこなせるかまでは分かりません。入門の講座を受けただけの人も、有名な道具を作っている人も、同じように「Python」と書けるからです。
場所や予算、空き具合は、手作りの決まりで調整していました。たとえば、国境の向こうに住む人の順位は、国内の人より客先に近くても、一律に下げていました。
同社はこの手作りの決まりをやめ、1つのモデルに替えました。モデルは過去のやり取りの記録から、その案件で契約まで進むかを学びます。学ばせるときは、どこまで進んだかで差を付けました。応募しなかった人より応募した人を上に、話し合っただけの人より契約した人を上に置きます。
手がかりは100を超えます。本人の情報には、経歴の書き込み具合、評価、問い合わせへの返信の割合などがあります。案件との組み合わせの情報は、距離、同じ言葉を使っているか、その会社と前に仕事をしたか、などです。モデルには木を何本も重ねて予測する方式の CatBoost を使いました。理由として、中身を説明しやすいこと、計算が軽いこと、データが少なめでも強いことを挙げています。
技能が合うかをもっと細かく測るために、同社は専用のモデルを作ることにしました。ただ、過去のやり取りの記録は、そのままでは手本になりにくいものでした。経歴が案件の求める技術とぴったり合っていても、会社が「技能が足りない」と断った例がありました。室内の設計をする人が、IT の設計者の分類に登録している例もありました。
そこで生成AIに、フリーランスがその案件をこなせるかを0〜1で採点させました。点数が0.6未満なら、こなせそうにないと見ます。生成AIは重く、並べ替えのたびに使うと費用と時間がかかります。そのため、生成AIの点数をまねる軽いモデルを作り、並べ替えの手がかりの1つにしました。
同社の研究者の論文によると、点数を付けた生成AIは Gemini 2.0 Flash です。使ったデータは、2023年1月から2024年4月までの案件です。軽いモデルは案件と経歴の組1000件を1分以内で採点し、比べた別の公開モデル(Qwen3 の並べ替え用、Gemma3)は7分と約13分かかりました。
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 新しい並べ替えと技能の点数を合わせて、契約まで進んだ組が14%増えた | 何と比べたか、期間、件数、時期。数の増え方か、率の伸びか |
| 偏りの確かめはした | どんな確かめをしたか |
| 技能の点数は、生成AIの点数をまねて作った | 人の判断や契約の結果と比べた正しさ(論文の物差しは生成AIの点数) |
| 2つの部品を一緒に入れた | 生成AIの部分だけで、どれだけ効いたか |
| 14%も論文の数字も、同社の人が測った | 外の人による確かめ |
凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:マルトの技術ブログ(2026年6月22日)、同社の研究者の論文(arXiv、2026年1月)
建設会社で、工事ごとに声をかける協力会社を選ぶ購買の担当にも使えます。過去の工事ごとに、協力会社が「見積もりを頼んだだけ」「見積もりが出た」「発注まで」のどこまで進んだかを記録しておきます。「県外の会社は一律に後回し」のような手作りの決まりは、その記録から学ぶ並べ方に替えられます。工事に合う実績があるかは、生成AIに工事の説明と会社の施工実績を0〜1で採点させます。その点数が当てになるかは、担当者の判断と食い違う例を見て確かめます。新しい並べ方を入れるときは、前の並べ方と同じ期間で比べ、発注まで進んだ数で見ます。
マルトは、フリーランスを案件に並べる手作りの決まりを、過去の契約から学ぶモデルに替え、生成AIで作った技能の点数を手がかりに加えました。契約まで進んだ組は14%増えましたが、何と比べたか、期間や件数、生成AIの部分がどれだけ効いたかは書かれていません。