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ワシントン州立大学、金属3Dプリンターで次に試す条件をAIに選ばせ、NASA の銅合金を1000W未満の4つの出力で作れる条件を見つけた

2026.10.23
ワシントン州立大学、金属3Dプリンターで次に試す条件をAIに選ばせ、NASA の銅合金を1000W未満の4つの出力で作れる条件を見つけた

米国のワシントン州立大学の研究者は、金属3Dプリンターで次に試す条件をAIに選ばせ、NASA が開発した銅の合金「GRCop-42」を、1000W未満の4つの出力で造形できる条件を見つけました。論文によると、共同研究をしている材料の研究者は数か月で37通りを試し、1つも成功していませんでした。AIは、その37回の失敗の記録から学び始めました。試す回数を研究者が出力ごとに10回までと決めたところ、3か月のうちに、どの出力でもその回数の中で成功する条件が見つかりました。

何が起きたか

研究室の金属3Dプリンターは、金属の粉を吹きつけながらレーザーで溶かし、層を重ねて形を作る方式です。レーザーの出力は最大1000Wです。

GRCop-42 は熱に強く、ロケットエンジンの部品などに向く銅の合金です。銅はレーザーの光を吸いにくく、熱が逃げやすいため、論文によると、多くの人は2000〜4000Wの機械で造形しています。研究者はこの合金を1000W未満、できれば500〜700Wで造形できるかを確かめようとしました。

条件は5つのつまみの組み合わせです。粉を送る速さ、ガスの量、GRCop-42 の下に先に積むインコネル718(Inconel 718)の厚み、レーザーを走らせる速さ、1層の厚みで、出力ごとの組み合わせは1億通りを超えます。論文が引用している以前の研究の目安では、1回の造形に約7万5000〜15万円(500〜1000ドル。1ドル150円で換算)、できた物の検査に1回約7万5000円と1〜4週間かかります。

AIの使い方

研究者は試した条件と、成功か失敗かの記録から、「この条件なら成功しそうか」を推定するモデルを作りました。近い条件の結果を見て成功の見込みを出す方法です。最初の記録には、材料の研究者が試した37回の失敗を使いました。

そのうえで、次の手順をくり返しました。

  1. モデルが次に試す条件を2つ選びます
  2. 研究室でその条件で造形し、検査して成功か失敗かを決めます
  3. 結果を記録に足し、モデルを更新します

つまみの幅と刻みは、材料の研究者の経験で先に決めました。物理的にありえない組み合わせも外しています。

結果

🔬 レーザーの出力 試す回数の上限 見つかった成功の条件
950W 10回 1つ
700W 10回 1つ
600W 10回 3つ
500W 10回 1つ

出典:論文の表1。比べる相手は、材料の研究者が数か月に試した37通り(成功0)。

4つの出力のすべてで、上限の10回以内に成功する条件が見つかりました。期間は3か月です。成功した条件はどれも、レーザーを走らせる速さがとても速く、1層の厚みが薄めでした。研究者は、これがほかの材料でこの方式の機械を使うときの手がかりになるとしています。

成功の判定では、まず小さな四角い塊を作り、次に試験用の円柱を作りました。円柱の外側を削ると、中は詰まっていて欠陥がほとんどなく、インコネル718とのつなぎ目にも欠陥は見えなかった、と論文は書いています。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 公表されている説明 ⚠️ こちらで確認できていないこと
人は37通りで成功0、AIは出力ごとに10回以内で成功 同じ条件での比べか(AIは人の37回の失敗の記録から始めた。人の37回がどの出力だったかも書かれていない)
4つの出力すべてで成功の条件を見つけた 各出力で実際に何回目に見つかったか(内訳はない。上限は4つの出力で合わせて40回)
機械の時間や材料の費用が大きく減った 実際にかかった金額と時間(1回の費用は前の研究の目安で、この試験の額ではない)
ほかの合金にも使える 別の合金や別の機械での結果(今回は1つの合金・1台の機械)
研究者自身の論文 外の人による確かめ

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:Fadhel ほか、AAAI-26 の論文(2026年)

誰に関係するか

金属部品の溶接やレーザー加工、熱処理をしている町工場で、新しい材料や板厚のたびに、電流や速度の条件を試し打ちで決めている技術者にも使えます。まず、試し打ちの条件と、良品か不良かを表にためます。その表から良品になりそうな条件を推定するモデルを作り、次に試す条件を少しずつ選ばせます。つまみの幅と刻みは職人の経験で先に絞り、明らかにだめな組み合わせは外しておきます。試す回数の上限を先に決めておけば、その回数で見つかるかで続けるかを判断できます。

まとめ

AIが受け持ったのは、次に試す条件を2つずつ選ぶところで、造形と検査は研究室の人が行いました。結果は1つの合金・1台の機械のもので、AIと人が同じ条件で競ったわけではありません。

参考文献

  • Azza Fadhel、Nathaniel W. Zuckschwerdt、Aryan Deshwal、Susmita Bose、Amit Bandyopadhyay、Jana Doppa「Discovery of Feasible 3D Printing Configurations for Metal Alloys via AI-Driven Adaptive Experimental Design」Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence 40(47), 39939–、2026-03-14、https://ojs.aaai.org/index.php/AAAI/article/view/41428 (doi:10.1609/aaai.v40i47.41428)、確認日 2026-10-22

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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