米国のワシントン州立大学の研究者は、金属3Dプリンターで次に試す条件をAIに選ばせ、NASA が開発した銅の合金「GRCop-42」を、1000W未満の4つの出力で造形できる条件を見つけました。論文によると、共同研究をしている材料の研究者は数か月で37通りを試し、1つも成功していませんでした。AIは、その37回の失敗の記録から学び始めました。試す回数を研究者が出力ごとに10回までと決めたところ、3か月のうちに、どの出力でもその回数の中で成功する条件が見つかりました。
研究室の金属3Dプリンターは、金属の粉を吹きつけながらレーザーで溶かし、層を重ねて形を作る方式です。レーザーの出力は最大1000Wです。
GRCop-42 は熱に強く、ロケットエンジンの部品などに向く銅の合金です。銅はレーザーの光を吸いにくく、熱が逃げやすいため、論文によると、多くの人は2000〜4000Wの機械で造形しています。研究者はこの合金を1000W未満、できれば500〜700Wで造形できるかを確かめようとしました。
条件は5つのつまみの組み合わせです。粉を送る速さ、ガスの量、GRCop-42 の下に先に積むインコネル718(Inconel 718)の厚み、レーザーを走らせる速さ、1層の厚みで、出力ごとの組み合わせは1億通りを超えます。論文が引用している以前の研究の目安では、1回の造形に約7万5000〜15万円(500〜1000ドル。1ドル150円で換算)、できた物の検査に1回約7万5000円と1〜4週間かかります。
研究者は試した条件と、成功か失敗かの記録から、「この条件なら成功しそうか」を推定するモデルを作りました。近い条件の結果を見て成功の見込みを出す方法です。最初の記録には、材料の研究者が試した37回の失敗を使いました。
そのうえで、次の手順をくり返しました。
つまみの幅と刻みは、材料の研究者の経験で先に決めました。物理的にありえない組み合わせも外しています。
| 🔬 レーザーの出力 | 試す回数の上限 | 見つかった成功の条件 |
|---|---|---|
| 950W | 10回 | 1つ |
| 700W | 10回 | 1つ |
| 600W | 10回 | 3つ |
| 500W | 10回 | 1つ |
出典:論文の表1。比べる相手は、材料の研究者が数か月に試した37通り(成功0)。
4つの出力のすべてで、上限の10回以内に成功する条件が見つかりました。期間は3か月です。成功した条件はどれも、レーザーを走らせる速さがとても速く、1層の厚みが薄めでした。研究者は、これがほかの材料でこの方式の機械を使うときの手がかりになるとしています。
成功の判定では、まず小さな四角い塊を作り、次に試験用の円柱を作りました。円柱の外側を削ると、中は詰まっていて欠陥がほとんどなく、インコネル718とのつなぎ目にも欠陥は見えなかった、と論文は書いています。
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ こちらで確認できていないこと |
|---|---|
| 人は37通りで成功0、AIは出力ごとに10回以内で成功 | 同じ条件での比べか(AIは人の37回の失敗の記録から始めた。人の37回がどの出力だったかも書かれていない) |
| 4つの出力すべてで成功の条件を見つけた | 各出力で実際に何回目に見つかったか(内訳はない。上限は4つの出力で合わせて40回) |
| 機械の時間や材料の費用が大きく減った | 実際にかかった金額と時間(1回の費用は前の研究の目安で、この試験の額ではない) |
| ほかの合金にも使える | 別の合金や別の機械での結果(今回は1つの合金・1台の機械) |
| 研究者自身の論文 | 外の人による確かめ |
凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:Fadhel ほか、AAAI-26 の論文(2026年)
金属部品の溶接やレーザー加工、熱処理をしている町工場で、新しい材料や板厚のたびに、電流や速度の条件を試し打ちで決めている技術者にも使えます。まず、試し打ちの条件と、良品か不良かを表にためます。その表から良品になりそうな条件を推定するモデルを作り、次に試す条件を少しずつ選ばせます。つまみの幅と刻みは職人の経験で先に絞り、明らかにだめな組み合わせは外しておきます。試す回数の上限を先に決めておけば、その回数で見つかるかで続けるかを判断できます。
AIが受け持ったのは、次に試す条件を2つずつ選ぶところで、造形と検査は研究室の人が行いました。結果は1つの合金・1台の機械のもので、AIと人が同じ条件で競ったわけではありません。